令和8年熊本地震災害派遣(2)
先週は連載初回だったので、令和8年熊本地震の概要と被害状況をお伝えしました。今週は災害派遣などにおける自衛隊の待機態勢、災害派遣要請から派遣の流れをご紹介します。
7月28日16時27分に地震が発生。同日17時30分に熊本県知事から陸上自衛隊第8師団長(北熊本・熊本)に対し、情報収集、人命救助、物資輸送、生活支援等にかかる災害派遣要請があり、同時刻に受理されました。
自衛隊の災害派遣可否を判断する際の3要件は公共性、緊急性、非代替性です。これは「人命・財産を守るために必要か(公共性)」「今すぐ対応する必要があるか(緊急性)」「自衛隊でなければ対応できないか(非代替性)」です(鳥インフルエンザの殺処分、豪雪地帯での除雪などがこの3要件に該当しているのかは、個人的には疑問に思うケースもあります)。
災害が発生した際、自衛隊が派遣され、活動を行ってから撤収するまでには、いくつかの手続きやルートが存在します。
まず、自衛隊に災害派遣要請を行なえるのは、原則として、都道府県知事、海上保安庁長官、管区海上保安本部長、または空港事務所長です。これらの立場の人が、防衛大臣または大臣の指定する者に対して派遣要請を行います。
市町村長が災害派遣を依頼したい場合は、都道府県知事に対して要請を要求します。ただし、要請を要求できない場合などには、市町村長から大臣等へ直接通知が行われます。この市町村長が都道府県知事に要請を要求できないというのは、例えば通信の途絶などによってできない場合などです。
要請の手段としては、通常は文書を用いますが、緊急の場合は口頭、電信、または電話によって行ない、事後に文書を提出します。要請は最寄りの駐屯地や基地へ行ないます。
要請の際には、災害の状況および要請の事由、派遣を希望する期間、派遣を希望する区域と活動内容、その他参考事項を伝えます。
また、例外的な派遣として、自主派遣があります。
これは特に緊急性が高く、都道府県知事などの要請を待つ時間がない場合には、要請を経ずに大臣または大臣の指定する者から派遣命令が出され、自主派遣として部隊が派遣されるというものです。災害派遣要請が届くまでじりじりと待っているしかなく(苦肉の策として、「訓練」という名目で被災地に向かう部隊もありました)、結果的に「初動が遅い」と非難されたような時代は、もう過去の話です。
災害派遣要請または自主派遣の決定を受け、防衛大臣または大臣の指定する者から以下の命令が出されます。
部隊に対しては「派遣命令」が出され、部隊派遣が行われます。
また、必要に応じて、即応予備自衛官および予備自衛官に対しても「招集命令」が出され、災害等招集が行われます。
そして派遣された部隊、ならびに招集された即応予備自衛官および予備自衛官により、現場での災害派遣活動が実施されます。
災害派遣で難しいのは、実は「いつまで続けるか」です。
自衛隊としては、最初の人命救助、その後の被災地における支援活動が安定し、自治体や民間の団体などだけで回せるめどがついたら撤収したいところです。国防という大きな任務役割がありますし、派遣期間が長引くほど、すでに決まっている訓練計画にも影響が出ます。災害派遣に出ている隊員はもちろん、派遣中の隊員の分の業務を担う、駐屯地・基地にいる隊員の負担も少なくありません。
しかし、被災地の自治体としては、自衛隊は実に心強い存在です。民間の企業への依頼ではありませんから費用も発生せず、隊員たちの食事も寝場所もすべて自己完結。存在自体が防犯の役目も果たしているという側面もあり、1日も長くいて欲しいと思うのは無理もありません。
東日本大震災では半年以上にわたり災害派遣が続き、部隊や隊員の大きな負担となりました。長期にわたった理由は原発事故という想定外のアクシデントによるところが大きいのですが、防衛省・自衛隊にとって「派遣期間」の重要性を改めて熟考するきっかけとなりました。
ではどのように撤収するのかについては、また来週に。
(つづく)








