海自航空輸送部隊 第61航空隊(5)
61空は輸送業務のほかに、当然ながら訓練も行なっています。
訓練は基本的には、自衛隊の法令や計画に基づいて決まります。統合運用という観点から防災訓練も含めて必要とされており、それぞれの担当部署が計画を立てています。中央主導で自衛隊の訓練計画と自治体のニーズが合致して行なわれる訓練に加えて、地方総監部が主導するような地域ごとの訓練もあります。
橋口司令は訓練について次のように語りました。
「我々は“どこにでも着陸できる部隊”である必要があります。普段の輸送業務では海上自衛隊の航空基地への離発着が中心ですが、災害派遣などに備え、官民問わずさまざまな空港での離着陸・運航経験を積んでおく必要がありますので、生地訓練と呼ばれる訓練を全国各地で実施しています」
「私たちは、まずは輸送任務という自衛隊自身の輸送態勢をしっかり確立・維持することが大事です。これは国防の根幹に関わる部分ですから当然の責務です。そのうえで、副次的任務としての災害派遣についても、常に意識しながら取り組んでいます。そういった中で、自治体の皆さまと協力できる機会が防災訓練という形で訪れるというのは、私たちにとっても非常に貴重なことです」
訓練の一環として、2023年には北海道の女満別空港へ飛びました。これは運航経験を積むための訓練であると同時に、現地の赤十字病院と連携し、DMAT(災害派遣医療チーム)を乗せた訓練も行ないました。DMATのメンバーに実際に機内を見てもらい、「この広さなら対応できる」「この機材は乗せられる」といった確認をしてもらうことができ、相互理解が深まったそうです。
それまでの生地訓練では地域側が“協力者”という立場での参加でしたが、この女満別における生地訓練では初めて双方の訓練として成立したのでした。これは自衛隊と自治体双方にとって非常に有益なこととなりました。後日、女満別の病院長から橋口司令にわざわざお礼の電話があったそうで、自治体もいかにこの訓練で収穫が大きかったかがわかります。
「地域の皆さんがそれぞれに防災体制を企画し、段階的に訓練を進めておられる姿勢には本当に頭が下がる思いでした。ただ、全国的に有機的に連携するのは、やはり簡単ではありません。中央の企画だけで網羅するのは限界がありますし、タイミングの問題もあります。だからこそ私たちのような部隊が、必要なときに必要な場所にマッチングして動くという柔軟さがとても大事だと思っています」(橋口司令)
2024年には、鹿児島県が主催した防災訓練に参加しました。奄美大島で災害が起きたという想定の訓練で、鹿児島空港から奄美空港へDMATを輸送した。現地では海自の支援部隊も加わり、自治体、警察、消防との連携も図ることができました。
「奄美大島のような離島では、やはり現地に足を運んでこそわかることがたくさんあります。事前に『ひとり当たりこのくらいの荷物でお願いします』と案内していたのですが、現地では『このような医療機材は持ち込めますか?』という質問があったので『事前に調整すれば安定して運べます』と答えました。こうしたやりとりを通じて新たな訓練課題が見えてきたり、場合によっては装備の改善点も浮かび上がり、今後の支援や救護の態勢の強化につながっていくのです」(橋口司令)
奄美大島での訓練の翌日は種子島での着陸訓練も行なわれました。地元住民が機体を見学できる時間も設けたところ、大変好評だったとのこと。
このように、「奄美に行くなら種子島にも」といった「合わせ技」で効率よく多くの目的を達成するのは、限られた人員で多忙な任務を遂行するためには非常に重要だと橋口司令は言います。空自輸送部隊とも連携を密にし、互いのノウハウの情報を共有しているそうです。
(つづく)







