自衛官候補生による射撃場での死傷事件(5)

候補生は2023年6月15日に送検されてからは、ほとんど取り調べに応じず黙秘しています。

候補生はかねてから「将来は自衛隊に入る」と周囲に話し、高校時代は駐屯地を見学する機会があるたびに隊員に熱心に質問していたといいます。
念願叶って2023年4月に入隊、同期からオタクと言われるほど自衛隊の装備などについて周囲に話していました。自分の考えに合わないと反論する傾向もあったようですが、勤務態度については「問題なし」と評価されていたといいます。

過去に一度、自衛隊では同じような時間がありました。1984年の銃乱射事件です。
これは山口市の陸上自衛隊山口駐屯地射撃場で、実弾訓練中の2士がいきなり同僚隊員に64式自動小銃を乱射、4人に重軽傷(翌日1人死亡)を負わせたという事件です。
2士は銃を持ったままジープで逃走、山口県警が約5時間後に約2キロ離れた市内の中学校近くに潜んでいた隊員を発見、を銃刀法違反で現行犯逮捕しました。
その後の調べで、この隊員が過去に不始末で停職処分を受けて退職したことのある「再入隊組」であったことが判明します。この陸士は重度のうつで、心神喪失の状態にあったとして起訴されませんでした。

この18歳はこの先、法的にどうなるのでしょうか。
2022年4月に施行された改正少年法で、18~19歳は「特定少年」と位置づけられており、起訴された場合は報道機関の判断で実名報道が行なわれます(すでに一部週刊誌で実名報道されました)。
捜査や精神鑑定などを経た後は、まず家庭裁判所に送られます。そこで「刑事処分が相当」と判断された場合、「逆送」といって検察官に送り返され、検察が起訴すると大人と同じ裁判員裁判で裁かれることになります。殺人事件の場合は「逆走」が原則だといいます。

以下の文面は事件間もなく書いたものなので現在の状況とは若干ズレがありますが、そのまま掲載します。
心配なのは、現場にいて惨状を目の当たりにした自衛官候補生です。無事に修了式を迎え部隊配属されたのか、トラウマになっていないか。本人は大丈夫なつもりでPTSDになっている恐れもあります。特に同じグループにいたほかの3名の候補生のショックや恐怖を思うとやりきれません。防衛省・自衛隊にはその場にいた指導官たちも含めた手厚いメンタルヘルスケアをくれぐれも頼みたいと思います。
防衛省は警務隊の捜査と並行し、陸自の調査委員会による原因究明と再発防止策の取りまとめを行なうとしています。
亡くなった2人の自衛官に哀悼の意を表するとともに、射撃場での射撃手順の見直しを願うばかりです。