自衛官候補生による射撃場での死傷事件(6)

先週までは雑誌に掲載された時点での記事をご紹介しましたが、今
週はその後、本日までに事件にどのような進展があったのかの経過
をお知らせしておきます。
2023年9月20日、陸自は鑑定留置中の自衛官候補生の男を懲戒免職と
しました。本来、自衛官候補生としての当初の期は6月27日までで
したが、事件の調査に当たるため、陸自は任期を3カ月間延長して
いました。
殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男は、殺人容疑で再逮捕されるな
どした後、精神鑑定のため、7月から約4カ月間の鑑定留置に入り
ました。
翌日の21日には、陸自は「新隊員の射撃訓練では、小銃と弾薬を同
時に持っている時間を極力短くすること」などを内容とする通達を
8月10日に各部隊へ出したと明らかにしました。通達は8月下旬か
らの新隊員教育に備えたもので、新隊員に対して武器を持つ立場で
あることの重要性を教育し、指導役の隊員が射撃訓練までに新隊員
の心情をよく把握するよう求める内容なども盛り込まれました。

10月28日に地元の自治会関係者約20人に対して説明会を開き、11月
6日に事件の起きた岐阜市の日野基本射撃場で訓練が再開されました。
ところが訓練再開当日の朝、隊員が報道陣に対し中指を立てる仕草
を見せたことで再び訓練は中止に。第35普通科連隊に所属する20代
の男性隊員は「軽い気持ちで、冗談のつもりでやった」とのことで
すが、訓戒の処分を受けました。その後も同射撃場での訓練は再開
されていません。

11月22日、元自衛官候補生の男の鑑定留置が約2カ月間延長される
ことになりました。刑事責任能力の有無を調べるため7月から鑑定
留置され、鑑定留置の期限は当初、11月24日までの予定でしたが、
岐阜地検は期限の延長を岐阜簡易裁判所に請求、期限は2024年1月
18日までとなりました。

逮捕直後こそ「銃と弾薬を自分のものにしたかった。弾薬を奪うた
めに邪魔な人を撃った」「警察や自衛隊が追いかけてきたら撃つつ
もりだった」などと供述していた元自衛官候補生ですが、順と弾薬
を奪って射撃場の外に出てなにをしたかったのか、動機がはっきり
しないため、刑事責任能力を調べるための精神鑑定が約半年という
時間をかけて行なわれました。

今年1月18日。鑑定留置を終えた元自衛官候補生は鑑定結果を踏ま
え、勾留期限の23日に岐阜家庭裁判所に送致されました。
そして同日、岐阜地方検察庁は「約半年にわたり専門の医師が当時
の精神状態などを調べた結果、善悪の判断などに影響を及ぼす病気
や障害などはないとされ、刑事責任能力に問題はない」と判断。弾
薬を奪うために3人を死傷させたとして、殺人より罪の重い強盗殺人
などに罪名を変更しました。今後、家庭裁判所が刑事処分が相当と
判断すれば、当時の候補生は検察庁に逆走され、検察が起訴につい
て判断するものとみられます。起訴された場合は特定少年として実
名が公表される可能性があります。

強盗殺人の法定刑は死刑か無期懲役、いずれかという極めて重い罪
です。小銃を奪い3名を死傷した罪はそれだけ重いものです。今後
起訴され裁判となった場合、ぜひ自らの口で動機と真実を語って欲
しいと思います。
改めて、亡くなられたふたりの隊員のご冥福をお祈りします。

(自衛官候補生による射撃場での死傷事件 おわり)

(わたなべ・ようこ)