第2師団冬季戦技競技会(3)

人選は部隊ごとにそれぞれ作戦がありそうですが、3即機のスキー訓練隊長である川東修一2尉の場合は、「射撃については隊員の練度の差異はありませんでしたが、アキオ曳行となるとアキオを引く順番にもそれぞれ役割分担があり、その順番にあった走りができる者を考慮した結果、補欠を含めスキー走力を重視して人選しました」ということでした。

滑走順も抽選で決まります。
競技会初日の午前中は好天でしたが、午後から急激に冷え込みが厳しくなりました。一方、2日目は終日絶好のスキー日和となりました。
Aグループは朝8時半に前回優勝した25連隊(遠軽)がスタート、その後45分おきに第2特科連隊(上富良野)、3即機(名寄)、26連隊(留萌)、個人機動と続きました。

コース状況は気象気温により短時間で変化し、その時の天候次第で大きく左右されます。
川東2尉によれば、3即機の3番目、10時スタート時は気温マイナス11度、雪温はマイナス10度と、この時期の上富良野としては良好な状況という幸運にも恵まれました。雪温が高いとワックスを合わせるのが難しくなるのだそうです。また、2コ部隊が滑走した後なのでコースのレーンがほどよく固くなるとともに、レーンの角(山)も丸くなってスキーに抵抗を受けにくくなります。さらに、前に滑走した部隊の情報(コース状態、区間ラップ、射撃の命中率など)を逐次選手に伝達できるといった利点があります。
そうなると最初に滑走した25連隊は不利だったということになりますが、どんどん天候が悪化して吹雪になってしまうといった状況も考えられますから、滑走順だけで勝敗が決まるわけではないことは確かでしょう。
ちなみにワックスは、ベースになるワックスを4~5種類使い分けしているとか。しかも3即機の場合はワックス班を編成し、競技会5日ほど前からワックステストを行ない、出走する10時に合わせて日々の気温、雪温、天候などのデータを収集し、当日のコース状態において最も滑走性のよいワックスを決めたという徹底ぶりでした。おそらくほかの部隊でも同じようなことはしているのではと思われます。

滑走前には訓練検閲に先立って行われる隊容検査のような点呼・点検があり、出走する隊員が定められた服装をしているか確認したり、衛生隊員が健康状態を問診したりします。また、アキオも規定の40キロの重さがあるか計量します。
どの部隊もアキオは1グラムでも重くしたくないのでぎりぎりを攻める結果、ほんのわずか40キロに足りないアキオも出てきます。秤に乗せる際の左右のバランスを調整したり、改めて乗せ直したりしているのを、そのアキオを曳行する隊員たちが不安そうに見つめています。最終的にはペットボトルを1本置くことで無事クリアしました。