第6戦車大隊最後の訓練検閲(3)

2023年6月19日

ところで、戦闘の場で指揮官を務める幹部自衛官は、戦術の教育も受けます。しかしそれはあくまでも戦術の基礎となる部分であり、実際の戦い方は指揮官ごとに異なります。

戦術には各人のセンスや個性が表れるので、まさに千差万別。だから「そんな考え方で大丈夫なのだろうか」と周囲から不安に思われたとしても、それが作戦上成功し目標を達成できれば下馬評は一変、「いいセンス、いい判断だった」ということになります。

戦術が正当化され認められるのは、目標を達成したときしかありません。その戦闘の目的を達成するための方法をいかに案出できて、さらにその状況にあった最良のものを選べるかというのが指揮官の腕の見せどころなのです。

戦術には正解がないからこそ多様な発想ができます。そのためにはさまざまなことを学び、自らの糧としていく必要があります。

第44戦闘団のCP(指揮所)地域に足を運びました。

戦闘団とは、上級部隊から離れて独立的に行動する場合、特科部隊、機甲科部隊、施設科部隊などが普通科連隊のもとにチームとなることをいいます(ちなみに現在陸自で続々と新編されている即応機動連隊は、この戦闘団を連隊にして編成できます)。

CPには通信や特科部隊の火力を調整する所などが集まっています。演習場の制約などもあるのである程度固まっていますが、本来は広範囲の地域に点在させて一撃で全滅といったリスクを回避します。CPの近傍にある本部管理中隊の通信所も、正式には隔離されたところに設置されます。

このCPは天幕が建てられ擬装も施されていますが、どんどん状況が進展しているような場合は、高機動車などを活用した指揮所を作成しその中で戦闘団長が指揮をして、前進しつつ作戦地域に入っていきます。

実際、今回の検閲でも第44普通科連隊の前に第6戦車大隊が先行したので、第6戦車大隊のCPには天幕が設置されていませんでした。しかしその後状況が停滞したため、戦闘団長の指示により、CPとして天幕を張ったのです。

一方、状況によっては、「CPは3t半トラック2台の後ろをくっつけた形」「82式指揮通信車の中で」など、天幕を用いた構築にこだわることなく、行なう作戦の内容・戦況を推測して機動性を重視する場合もあります。

さて、ここまでの戦闘は、第6特科連隊の攻撃準備射撃により始まった攻撃に連携した第44戦闘団が敵に切迫。これを逐次撃破しつつ、戦車部隊による敵戦車の駆逐及び施設部隊による各種機動支援を行ない、その衝撃力を持続させ攻撃目標に前進しました。

そして各級指揮官の適時・的確な命令及び号令により火力は効果的に発揮され、部隊は現地現物を活用した機動により前進。それぞれの任務を完遂し、最終的には師団の攻撃目標を奪取に成功しました。