第6戦車大隊最後の訓練検閲(4)

2023年6月19日

陸上自衛隊は2018年3月に創設以来最大の改編を行ない、陸上総隊や水陸機動団を新設したほか、まずは第8師団(司令部・北熊本)と第14旅団(司令部・善通寺)を高い機動力や警戒監視能力を備えた機動運用を基本とする機動師団・旅団へと改編しました。現在は15師旅団の中で第2、6、11、14師旅団が機動師団、機動旅団となっています。

第6師団の場合は機動師団として第22普通科連隊を第22即応機動連隊に改編。それによって第6戦車大隊は廃止され、74式戦車に替わって装輪車の16式機動戦闘車隊(MCV)を装備する機動戦闘車隊へと移行されました。第6特科連隊は師団司令部の火力調整部、第22即機連の火力支援中隊、そして2020年に新編された東北方面特科連隊隷下の2個大隊へと改組されました。

このコラムでは何度も書いてきていることですが、即応機動連隊とは、機動力と戦闘力を高めるため、普通科連隊を改編して諸職種(普通科・特科・機甲科・高射特科など)をひとつのパッケージにまとめた、これまでの陸自にはなかった新しい概念の部隊です。

連隊は3個普通科中隊、1個機動戦闘車隊、120mm重迫撃砲などを装備する1個火力支援中隊などで構成されます。諸職種協同部隊になることで、普通科・特科・機甲科そろっての訓練がやりやすくなるというメリットもあります。

装輪の装甲車に戦車砲を搭載したMCVは高速道路走行や民間フェリーに搭載可能な機動力が強みで、路外機動や火力の性能、防護力は戦車より劣るものの、島しょ部などへの迅速かつ大規模展開能力を備えました。高速道路を時速100kmで走行でき、軽量化により空自輸送機C-2による空輸も可能、離島などの遠隔地にも迅速に展開が可能です。

車体の上に搭載された105mm砲は、74式戦車と砲弾を共有できる(つまり74式戦車が姿を消した後も、残った砲弾は無駄になりません)。新たに誕生する機動戦闘車隊には第6戦車大隊からスライドする隊員が多いため、74式戦車を扱っていた部隊が最新ハイテク車を運用することになります。

今回の訓練検閲は第6戦車大隊が最後の参加となりました。

このタイミングで、すでに第6戦車大隊の所在する大和駐屯地には教育訓練用のMCVが納入されていました。体になじんだアナログの74式戦車からハイテクのMCVへと練成を重ねていく隊員は大変ですが、最新装備を扱う高揚感を抱く者がいるのもまた事実でしょう。

現在の第6師団は今年で機動師団に改編され4年目を迎えます。機動力がなによりも求められる現在の陸上自衛隊に即した師団として、練度を高めていることが期待されます。(おわり)