MCV配備部隊&密着ルポ(2)


陸上自衛隊には普通科、機甲科、特科などの戦闘職種と需品科、衛生科などの後方支援職種合わせて16の職種があり、必要に応じて職種の集合体で戦闘団が編成されます。どの職種も単独で戦闘することは不可能だからです。
しかし、通常はそれぞれの部隊が異なる駐屯地に所在していることが多いため、編成するための調整にも集合にも時間がかかります。また、日頃から密接に訓練する関係というわけでもないので、いざというときの意思疎通も以心伝心というわけにはいきません。
そこで機動師団・機動旅団隷下の普通科連隊を「機動力のあるミニ戦闘団」に改編したのが即応機動連隊です。
高い機動展開能力と諸職種部隊による編成が特色で、その特色を具現化したMCVは即機連の象徴的な装備品といえます。

MCVは全長9m、全幅・全高3mというサイズは戦車と相違ありませんが、装輪車かつ戦車より軽量とあり、公道での高い走行性にすぐれ(最高速度時速100km。10式戦車の路上最大速度は時速70km)、輸送機での空輸も可能で、最新機器を多数採用し、高い射撃精度を誇ります。
主要武装は105mmライフル砲(砲弾は74式戦車と同じ主砲を使えます)、副武装は主砲と同軸に74式車載7.62mm機関銃、砲塔上面に12.7mm重機関銃を装備しています。

第3即応機動連隊初代連隊長だった山崎潤1佐は、普通科連隊を改編して即機連を新編する意義や利点をこう評していました。
「普通科連隊から即機連になると、圧倒的に機動力が増します。というのも、普通科だけでは足りない火力や対空防護能力などの機能を加えて各地に機動させようとしました場合、結構大きな部隊となることがスピード感の低下につながります。また、各部隊の意志疎通や通信、兵站などは普通科連隊が母体となってすべて面倒を見ますから、そのような作業も煩雑かつ一定の時間がかかる要因になります」
「それが即機連では、そもそも連隊という単体でありながら諸職種協同の1パッケージなので、スピード感が増すというわけです。師団としても、すぐに展開して即戦力発揮でき、しかもさまざまな職種が混ざっていて単体でも行動できるという、作戦の初期段階から使える即機連を持つ意義は大きいと思います」

いざというとき離島に迅速に駆けつける「即応」「即動」が求められるということは、戦車より機動力があり輸送しやすく、かつ戦車並みの火力があることが求められます。
島しょ防衛に戦車を投入することは「即応」「即動」という観点からだけでも困難です。ということはすべての条件を満たす新たな装甲戦闘車両をつくる必要があります。こうして生まれたのがMCVなのです。