今こそ知りたい陸自の後方支援(6)

第7後方支援連隊隷下の衛生隊は、取材時は地元中学校2校の職場体験への協力として、東千歳駐屯地で野外手術システムを展開、生徒たちの旺盛な好奇心に応えてさまざまな質問に丁寧に答えていました。
衛生隊長は7後支衛生隊初の女性自衛官である3佐で、医療系の道に進みたく、防大時代から衛生科職種を志望していたそうです。
「医師がいるかいないかで隊員の安心感は格段に違うので、医官も含めた訓練は今後さらに機会を増やしていきたいと考えています。そして有事になった場合、自衛隊の医官だけでなく、民間病院の医師との連携もこれから進めていくべき課題だと考えています。また、安保3文書では衛生機能の変革として、これまでの『健康管理重視の組織』から『有事において隊員の生命・身体を救う組織』への変革が掲げられ、戦傷医療能力の抜本的改革が明記されました。われわれ衛生科隊員も真に戦える衛生隊へと飛躍していきたいです」

補給隊の部品補給センターは一見、民間企業の物流倉庫のようにも見えますが扱う物品は実に多岐にわたり、装備品に使われる資材は部品補給小隊、それ以外の業務で使われるものは需品補給小隊と、任務・役割もわかれています。
小さな部品ひとつであれ補給隊の力なくして部隊が入手することはできません。あらゆる部隊にとって決して敵に回してはいけないのが補給隊なのです(そういう事態はありませんが)。
同行してくれていた隊員もこれほどじっくり部品補給センター内部を見る機会はなかなかないそうで、整然と、しかし大量の補給品があるべき場所に収納されている様子に感心していました。
なお、補給隊は部品補給のほか、糧食や燃料の補給、災害派遣でも活躍する入浴・洗濯などの需品サービスも担当しています。

すべての取材を終えて、改めて中島連隊長に話を聞きました。
「昔は『人事兵站異常なし』と言っているだけで済んでいたような時代もありました。実際、通常の決められた期間や演習場で訓練をしていても、兵站はそれほど切迫した必要性を感じる機会はそうないのです。言葉は悪いですが、後方支援の大切さは気づかれにくく、自衛隊の中でも日陰的な存在な部分がありました。しかし訓練でも長い期間になれば装備品が故障して整備が必要になるし、糧食も燃料もより補給が必要になります。さらに本当に戦闘になれば負傷者も生じますから、衛生部隊は多忙を極めるでしょう。部隊を取り巻く空気がちょっと変わったと感じたのは、ロシアによるウクライナ侵攻からです」
「輸送についてもスタートからゴールまで全部つながっていないとベストな機能が発揮できません。たとえば負傷者が出たらまず衛生隊が手当てして、必要に応じて最寄りの病院まで搬送します。これを衛生隊だけで完結できない場合は、民間と協働する必要があります。負傷者を搬送するルートや手段が途中で途切れてしまうことは、決してあってはなりません。後方支援というのは、自分の前方だけでなく背後まで見すえ、後支以外の部隊、民間企業、それらをすべて含めて考える必要があります。連隊長だから連隊規模で考えるではなく、後支の場合は少なくとも方面隊規模で考えなければいけないのです」
(つづく)