今こそ知りたい陸自の後方支援(1)

2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まったとき、その戦力差からロシアは早々に首都キーウを攻略するかと思われました。しかし戦車などの車両が前進できずに何10キロにもわたり間延びした状態で停滞し、そこをウクライナ軍のドローンで攻撃される光景は、湾岸戦争で初めて「リアル映像で戦闘を見る」体験をしたときと同じほどの衝撃を人々に与えたのではないでしょうか。
専門家による「これほど車列が延びた状態で兵站はどうするのか」という指摘どおり、ロシア軍は一時撤退を余儀なくされました。

振り返れば、太平洋戦争における日本軍の敗北の要因が兵站を軽んじすぎていたというのは周知の事実です。
では戦後発足した自衛隊の編成にその教訓が反映されたかといえば、残念ながらイエスとはいえません。とりわけ陸上自衛隊では「普特機(ふとっき)」と呼ばれる普通科、特科、機甲科の戦闘職種至上主義の意識は根強く、普特機を支える後方支援部隊は常に予算も後回しというのがこれまでの実情でした。
さまざまな部隊の訓練を取材してきた側からしても、たとえば衛生隊の装備や体制は「いざというとき、本当に隊員の命を救うという想定をしているのか」と疑問に思うほど脆弱に感じられました。
しかし、2022年12月に閣議決定した安保3文書では、現在のわが国を取り巻く安全保障環境を反映させ、兵站の重要性が明記されました。

先日、東千歳駐屯地に所在する陸上自衛隊第7師団隷下の第7後方支援連隊(以下、7後支)に取材する機会を得ました。後方支援連隊にはどのような部隊があり、どのような任務・役割を担っているのか、訓練や作業の様子を隊員のコメントと合わせてご紹介します。

陸自唯一の機甲師団である第7師団。その兵站・衛生支援を基本任務としているのが7後支です。
後方職種には武器科、需品科、輸送科、衛生科、施設科、通信科などがあり、「普特機」の普通科、特科(野戦特科と高射特科)、機甲科という第一線で戦う戦闘職種を主に補給、整備、輸送、衛生面から支援します。
7後支も第7師団の戦車連隊や普通科連隊を直接支援する部隊を擁しており、縁の下の力持ち的存在である7後支なくして機甲師団は成り立ちません。
7後支には基本任務のほか、付加任務として第7警備地区内の部外不発弾処理や通過部隊に対する整備支援、師団教習所の管理・運営、災害発生時などにおける初動部隊の派遣、兵站・衛生にかかる教育訓練などの担任が挙げられます。

編成は連隊本部及び本部付隊、第1整備大隊、第2整備大隊、補給隊、輸送隊、衛生隊。
第1整備大隊隷下には車両整備中隊、火器整備隊、施設整備隊、通信電子整備隊、工作回収隊などが、第2整備大隊には普通科直接支援中隊、第1~第3戦車直接支援中隊、特科直接支援中隊、高射直接支援中隊、偵察直接支援中隊などが、さらに補給隊隷下に需品補給小隊や部品補給小隊など、衛生隊隷下に治療隊や救急小隊があります。
次週から、各部隊がどのような任務を担っているかご紹介していきます。

(つづく)