今こそ知りたい陸自の後方支援(5)

南恵庭駐屯地に所在する第73戦車連隊を支援する第7後方支援連隊第2整備大隊第3戦車直接支援中隊では、小柄な女性隊員が「3t半」と呼ばれるトラックのタイヤ交換などを行なっていました。戦車部隊が所有している装備品は戦車だけではないので、このような車両も整備の対象です。
「体が小さくてもてこの原理を使ったり、狭い場所では率先して作業したりしています」と頼もしいコメント。
男性隊員の3曹によると「戦車では射撃予習というものを行なうのですが、ここで動かしすぎて本番前に電子系統が壊れてしまうことがあります。まさに射撃前の故障あるあるです。それももちろん早急に直さなければいけないので、競技会前となるとこちらも時間との戦いです」。

第7師団唯一の機械化連隊である第11普通科連隊を支援する普通科直接支援中隊では、89式装甲戦闘車、通称FVの整備が行なわれていました。溶接作業をしているのはWAC。
これほど多くの女性隊員を目にするのは、音楽隊の取材以外ではそうそうありません。聞けば7後支の女性隊員の比率は10%以上、部署によっては約20%にもなるそうで、行く先々でWACに遭遇するのも納得です。
ここで作業していたWACも「陸曹を目指す。後輩の女性もどんどん来て欲しい」と頼もしいコメントをくれました。
中島連隊長が「7後支は多職種の隊員の集まり」と話したように、それだけの職種・職域があれば、WACも自分にとって向いている職場を見つけやすいということでもあります。力仕事では物理的に男性にかなわなくても、狭い部分の整備ならむしろ手の小さなWACのほうが器用に作業できたりもします。先輩の女性自衛官が多いと、ワークライフバランスが参考になったり、結婚や出産、育休などの大きな出来事の際にも相談しやすいでしょう。育休後の復帰も、部隊がごく自然にあたたかく迎えるのが、7後支では普通の光景です。

輸送隊は各種教育訓練や方面定期便などにおける人員、装備などを輸送するほか、第7師団の自動車教習所の運営・管理を行なっています。

輸送科職種のなかには、将来における海上輸送部隊の要員として、水陸機動団後方支援大隊の隊員が護衛艦「いずも」に乗艦して各部署で研修を行なっているほか、江田島の海上自衛隊第1術科学校にも陸上自衛官が入校、輸送艦を運用するための教育を受けています。

ほか、2021年には約30年ぶりに陸自史上最大規模の陸上自衛隊演習が行なわれましたが、北海道や本州の各部隊が九州に機動展開するという、移動そのものが訓練でした。輸送科部隊は普特機のみならず、補給、衛生、整備といったほかの後方支援部隊にとっても欠かせない、まさに自衛隊という組織の根幹を支える存在であることを象徴したような演習でした。

取材時の輸送隊は、要整備の73APCを北千歳駐屯地から東千歳駐屯地へ運ぶ作業をしていました。普通なら7tトラックに自走で乗り込むのですが、故障でエンジンが動かないため、90式戦車回収車で吊り上げます。
隊員たちは慣れた様子で流れるようの作業をこなしていますが、装甲車を吊り上げるバランス、それをトラックに乗せる微調整、確実に着地させてからの徹底した固定など、一朝一夕にはできないことは容易に伝わってきます。

(つづく)