今こそ知りたい陸自の後方支援(4)

7後支の第2整備大隊の部隊をご紹介します。

第7後方支援連隊第2整備大隊は、第7師団を象徴する3個戦車連隊、そして戦車部隊と協同する89式装甲戦闘車、通称FVを擁する第11普通科連隊専用の支援中隊を擁しています。
第7師団隷下の第71、72、73戦車連隊はそれぞれ第1~第3戦車直接支援中隊、11連隊は普通科直接支援中隊が装備品の整備を担っています。
戦車部隊の直接支援中隊は、同じ90式、10式戦車を整備しているにも関わらず、中隊長の性格や方針が色濃く反映されてそれぞれ個性あふれる中隊になっているというのが面白いところです。また、7後支の多くの部隊は東千歳駐屯地に所在していますが、第2整備大隊の各直接支援中隊は支援する部隊と同じ駐屯地に配置されています。お互いが顔の見える距離、関係で整備できるのは、双方にとっていいことでしょう。

北海道大演習場では北部方面隊または第7師団主催で毎年戦車射撃競技会が開催されており、連隊、中隊、小隊ごとにガチンコの勝負が行なわれます。これまで一般公開してきた富士総合火力演習のように知名度は高くないものの、総火演のようにシナリオはなく、戦車射撃指揮と射撃技術を競うという戦車乗りとその部隊にとって、負けるわけにはいかない戦いです。
それを支援するのが第1~第3戦車直接支援中隊とあって、競技会前はいつもならそこまでは要求してこないというような細かな整備のリクエストもあがってくるそうです。特に射撃を実施する砲手からの要求は繊細で、それでもしっかり応えて万全の状態で競技会に臨んでもらうことも大切な任務です。そのため各戦車連隊と各戦車直接支援中隊は、日頃から顔を合わせたコミュニケーションを密に取ることを非常に大切にしています。

北千歳駐屯地に所在する第71戦車連隊を支援する第1戦車直接支援中隊長江川雄大3佐は「競技会前は練成訓練が増えるので、おのずと支援の回数も増えます。また71連隊は10式戦車の部隊なので90式戦車を有する部隊には負けられないという矜持もあり、そこをサポートしたいですね。システム面での整備の難易度も高いので、各隊員に求められる能力もおのずと高くなります」。
加我幸則先任上級曹長は「競技会の結果がいいに越したことはないですが、われわれとしては射撃中に故障がなく、無事に帰ってきてくれることがいちばんうれしいです」。

北恵庭駐屯地に所在する第2戦車直接支援中隊の小野寺範朗中隊長は「隊員には『ために』を要望しています。支援する第72戦車連隊のために、自分のために、家族のために。目的を持って日々の業務に取り組んで欲しいという思いから、このような要望事項になりました」。
先任上級曹長の高慶和也曹長は「戦車射撃競技会で同じ機材を使っての射撃で当たる当たらないは、最終的には砲手の技術になります。だからこそ整備部隊としては、故障して撃てなかったなどといったことがないように、完全な状態に仕上げることを目標にしています。競技会終了後、乗員のみなさんがわざわざお礼を言いに来てくれるときはうれしいですね」。
工場では砲塔部分の整備が行なわれていました。履帯のある車体は同じ中隊でも別の工場で整備するそうで、1両の戦車の整備には複数のMOS(自衛隊における特技、資格)所有者が必要であることがわかります。

(つづく)