陸自の演習場整備(9)

3即機と2偵は草刈り機等を除きおもに人海戦術で整備を進めますが、第2施設大隊は重機による整備として、グレーダーによる道路整備や専用機材によるウッドチップの加工、油圧ショベルにグラップルを装着し積載、卸下等を担当します。

道路の整地をするグレーダーは、課業開始から終了まで昼食の時間を除き常に動いている印象で、実際「1日7~8時間は動かしている」とのことでした。
整地中は時速10キロ程度でゆっくり進み、「座っていると視界が悪い」と、操縦手はずっと座席に座らず立ったまま操縦しています。
前輪が斜めに傾いているのは雨水が側溝に流れやすくなるよう道路を削って中心から左右に傾斜をつけているためで、削っている方向と反対に傾けることで直進できます。
グレーダーも散々見てきていますが、このように前輪を傾けて走行する姿は初めて目にしたので、個人的にはかなり盛り上がりました! ほか、破損した橋の修理など、重機と技術のある施設部隊でなければ担えない整備も担当しており、施設部隊の存在の大きさを改めて感じました。

存在の大きさといえば、整備部隊も演習場整備に不可欠な頼りになる部隊です。今回は3即機の直接支援中隊と2偵の直接支援小隊のほか、2師団隷下の第2整備大隊がサポート、車両や発電機等だけでなく草刈り機など演習場整備ならではの機材の整備も請け負いました。

演習場には北海道特有のクマザサという頑丈な笹が密生しており、足場の悪い斜面を上り下りする際にはクマザサをつかむことでかなり助けられます。しかしこれを除草するとなると、草刈り機のエンジンに負担がかかり故障の原因となるのです。かつては各中隊で修理しなければならず、それによって整備の計画が遅れるなどの支障が生じることもありましたが、こうして整備専門の部隊が支援してくれるようになってからは効率よく整備を進められるようになり、演習場整備を実施する部隊は助けられているそうです。
故障した機材によっては「明日の朝までに直して欲しい」といった要望もあり、整備部隊は演習場内に設営した天幕で夜通し作業することもあります(これは演習場に限らず駐屯地でも同様です)。

泥濘化した道路でスタックした車両をレッカーするのも整備部隊の担当です。ふくらはぎまで泥中に沈むような場所を四苦八苦しながら歩いているとき見かけたのは、2偵隊長を乗せた車両が身動きできずになっている姿でした。これはこの連載の第7回でもちょっと触れたエピソードですね。隊長は「これも訓練です」と笑い、高機動車で牽引しようかという筆者に同行してくれていた広報班の申し出に「レッカーに来てもらいます。お礼はビールで」とさらに笑っていました。

このほか、演習場の南野台という開けた場所は燃料補給ポイントとして3トン半燃料タンク車を設置、給油のために廠舎まで戻らなくても作業が円滑に進むようになっていました。混雑時は各種車両が行儀よく一列縦隊で並ぶ人気スポットです。

(つづく)