レゾリュート・ドラゴン22(3)

2023年6月19日

前回、大手メディアからの質問がオスプレイに集中していたことに触れました。
もしも航空機関連で、次のような質問が出ていたとしましょう。
「今回の訓練には自衛隊の対戦車ヘリ、アパッチ(AH-64D)やコブラ(AH-1S)も参加するようだが、アパッチは2018年2月に佐賀県で墜落事故を起こし隊員2名が殉職、民間の負傷者も出ている。そんな危険なヘリを訓練に参加させていいんですか」
「米海兵隊のヴァイパー(AH-1Z)まで参加するのはなぜですか。コブラだけじゃだめなんですか」
「そもそも戦闘機ヘリが訓練に参加する意味はあるんですか、危険じゃないんですか」
どの質問もかなり稚拙で無理矢理感はあるものの、少なくとも記者は訓練に参加する航空機について少しは調べたということになります。
特にアパッチの墜落事故は民間人に死者が出てもおかしくない事故でしたし、約5年前とさほど古い話でもありません。そこをつつきたいなら、いくらでも突っ込みようはあったと思います。ヴァイパーについてもコブラと同じAH-1ということで(実はぱっと見が似ている程度で中身はほとんど違うのですが)、「それなら参加するのは1種類でいいじゃん」という無知ゆえのこじつけを言えないこともありません。
質問の内容やレベルがどうであれ、少なくとも攻撃ヘリの存在を認識していることになります。
けれどテレビや新聞社は、オスプレイ以外の航空機の存在は気にしていないどころか気づいていないようでした。
繰り返しますが、上記の質問が出ていたとしても、勉強不足でお粗末な問いであることは間違いありません。それでも、もしもこんな質問をする記者がいたとしたら、オスプレイ以外の航空機の存在に気づき突っ込みどころを探す手間をかけたことになりますから、オスプレイに固執している記者たちよりはましなのかもと思ってしまいました。情けないレベルの話ですが……
訓練に話を戻します。
RD22の3日目、10月3日は上富良野駐屯地にて第3即応機動連隊(以下、3即機連)と米海兵隊の各種射撃を取材しました。
第3即応機動連隊は2022年3月の第2師団の即応機動師団改編に伴い、2師団唯一の即応機動連隊として第3普通科連隊から改編されました。
3連隊といえば全国に50以上ある普通科連隊の中で、陸上幕僚長を3名も輩出している唯一の部隊です。
冷戦時代はソ連軍に対する道北防衛の最前線部隊としても知られ、今なお戦技の強い「朔北部隊」として名高い部隊です。取材時、約半年前に部隊改編したばかりだというのに、この夏は3即機連として初めてHTC(北海道訓練センター)で実動対抗演習に攻撃側として参加、そのままほとんど休む間もなくRD22が始まったので、隊員たちは約1ヵ月、演習場内で過ごしていることになります。
81ミリ迫撃砲、中距離多目的誘導弾に続いて日米共同射撃、BOX射撃、米海兵隊戦闘射撃と、演習場内を移動しながらさまざまな射撃を見ました。
近接戦闘を想定したBOX射撃は、コの字を描く形で進みながら標的に向かって射撃するという訓練で、3即機連はとりわけ力を入れてきました。弾倉交換などあまりに素早すぎ(しかも静か!)、気をつけていないと見逃してしまいます。冬季夜間も含めた訓練で腕を上げた隊員たちの一挙一動を、海兵隊員たちが真剣なまなざしで見つめています。
(つづく)

(わたなべ・ようこ)

(令和五年(西暦2023年)2月9日配信)