レゾリュート・ドラゴン22(4)

2023年6月19日

一方、米海兵隊は圧倒的な弾数の多さで自衛隊を圧倒しました。
とにかく撃つ、撃ちまくります。足元一面に散らばる薬莢を踏みつけて、また撃ちます。
隣にいた自衛官は「俺の1年分は撃ってる」と苦笑していました。薬莢の数が1つ合わないだけで訓練中でも状況を中断し総出で捜索する自衛隊にとって(私もその現場に居合わせたことがあります)信じられない光景であり、同時に、薬莢を気にせず射撃できることへのうらやましさもあったことでしょう。
弾に限らずさまざまな物量の多さは自衛隊を驚かせました。到底消費しきれないほどの大量のミネラルウォーターを見ただけで、国力、兵力がわかるという事実は、取材陣はもちろん、自衛隊の隊員たちにとっても衝撃だったのではないでしょうか。
また、訓練とは直接関係ありませんが、米海兵隊の噛みタバコ利用者の多さには驚きました。最初、上官と会話しながら「ぺっ」と地面に唾を吐いている兵士を初めて見たときは驚愕して思わず二度見したのですが、これが当たり前の光景でした。自衛官も喫煙率は高い方だと思いますが紙タバコか電子タバコなので、これは文化の違いというべきでしょうか。噛みタバコについては、日本人のDNAというか倫理観として今後も相容れない気がしました。
3即機連隊長である山﨑潤1佐に共同訓練の感触を聞くと「即機連と海兵隊、いずれも『現場に真っ先に入らなければならない部隊』という共通点があるので親和性が高く、訓練がやりやすい」と現場の指揮官ならではの感想を聞かせてくれました。
10月5日、6日は然別演習場を取材しました。
3即機連が装備する16式機動戦闘車、通称MCVもその射撃を見るのも初めてな海兵隊員たちは、直前まで行なっていた射撃訓練の疲労をつゆとも見せず、射撃の決定的瞬間を撮ろうと前のめりにスマホを構えています。
「足元を見なければ戦車なのに装輪ですごい機動力」、そんな装備を持たない海兵隊員にとって、MCVは興味津々以外の何物でもありません。
MCVが装輪車ならではのスピード感をもって前進した後射撃、見事に的中させると、固唾を呑んで見守っていた海兵隊員たちは自衛官が驚くほどの歓声をあげました。彼らは自他ともに「見事な射撃・見事な命中」に対して素直に喜び、その技量への敬意を歓声にします。
RD22に限らず、米国のヤキマで自衛隊の戦車が難易度の高い射撃を命中させると、当の乗員たちではなく見学している米兵が喝采するそうです。
MCV射撃後は「近く行っていい?」「乗っていい?」と撮影会が始まりました。見知らぬ装備品に好奇心丸出しで楽しげな姿は、MCV中隊の隊員たちをさぞ喜ばせたことでしょう。齋藤進之佑MCV中隊長は「これだけ喜んでくれるとこちらまでうれしくなりますね」と笑顔を見せていました。
MCV見学前、米海兵隊はAT4(携行対戦車弾)や12.7ミリなどの射撃を実施しています。その様子は間近で撮影することを許されましたが、射撃の衝撃や塵等から目を守るためのアイウェアと耳栓の装着が必須とされました。そのチェックも厳しいのです。自衛隊単独の取材時も耳栓はよく言われるので常備しているのですが、アイウェアは初めてで手持ちがなく、3即機連の広報班が貸してくれたおかげで撮影することができました。移動前の休憩時間などの海兵隊員は、寝転がってスマホをいじくっているなど気ままな感じなのですが、状況が始まったときの「リアル」はとてつもないものがあります。
(つづく)

(わたなべ・ようこ)

(令和五年(西暦2023年)2月16日配信)