第2師団冬季戦技競技会(4)

自衛隊のスキーは隊員たちから「官品スキー」とも呼ばれ、独自の特性があります。
寒冷積雪地では斜面を上から下へ滑り降りるだけではなく、深い新雪を踏破し、あらゆる地形をスキーにより機動(歩く、走る)することが求められます。そのためつま先は固定されていますがかかとは浮き、滑る・歩くに対応できるようになっています。たとえば滑走面にはウロコ状のステップ加工が施され、斜面をまっすぐ上れるようになっています。重量はかなりあり、長さは195センチの1種類ですが、ストックは伸縮が可能です。

競技はスキーで滑走するだけならクロスカントリーですが、部隊機動では射撃もあるのでバイアスロンに近いでしょう。
隊員たちは約3.5キロの89式小銃を背負っていますが、ストックの動きを邪魔しないような背負い方にもコツがあります。
実はこの背負い方も部隊の経験値の差が出ていて、後ろ姿を見れば一目瞭然。見る人が見れば「あれだと滑るほど小銃がストックの邪魔になって腕がうまく振れなくなる」とわかるのですが、なんといってもガチの競技会、敵にアドバイスしてあげるようなぬるい隊員はいません。

前回は約5キロのコースでしたが、今回は約6・3キロと距離が延びました。スタートして約1.5キロ滑ったところで射撃、心拍数の上がった状態で25メートル・50メートル(至近距離射撃)、100メートル・200メートル(長射程射撃)の位置に置かれた的を狙います。的の風船が破裂したら命中です。
スタート地点には、遠軽、留萌、そして名寄と、地元からはるばる応援にやってきた人々のみならず、町長・市長までかけつけています。部隊持参の幟だけでなく、後援会や協力会などの人々が持参した立派な横断幕も掲げられています。さながら地域対抗の様相を見せるのも、第2師団冬季戦技競技会の大きな特色なのです。首長まで応援に駆け付けるって、すごいですよね。部隊長は「頑張ってください」ではなく「絶対に優勝してください!」と激励されるそうです。
北海道は全般に地元との関係が良好なところが多いですが、とりわけ道北は日頃から地元の部隊愛が熱いと感じます。

3即機連隊長の山崎潤1佐は、この競技会の特性を次のように話していました。
「まず、他師団、旅団などの冬季戦技競技会と比較しても寒さがとても厳しく、かつ雪の量が多いため、準備も含めてさまざまなことを考えながら取り組まなければならないことが挙げられます。次に、隊員一人ひとりが師団冬季戦技競技会に対し憧れ、尊敬、誇りといった強い思いを持っていることです。それは2師団全隊員がスキーをするため、この師団競技会のレベルがどれほど高いかを理解していることに起因していると思います。そして、特に3即機、25連隊、26連隊の地元である名寄市、遠軽町、留萌市がそれぞれの首長だけでなく、自衛隊協力会、後援会、婦人会、OB会などの応援と期待はものすごく、その熱量がわれわれにも伝わってくることです」

競技が始まりました。静寂に包まれていたスタート地点は一転し、盛大な声援が飛び交います。
分隊単位で出走する隊員たちはロープでつながり、全員の力を合わせてアキオを曳行します。隊員をどの順番で並ばせるかにも戦術がありそうです。