海自航空輸送部隊 第61航空隊(3)

61空司令の話は続きます。
「部隊の雰囲気についてですが、着任間もない頃はとても家族的で、隊員同士の結びつきが強いことに驚きました。性別や階級の異なる幹部と海曹の3人が、休暇中に一緒に海外旅行に行ったとも聞き、相互理解と信頼関係の大切さを改めて感じました。ベテランと若手が忌憚なく意見を交わし、厳しさの中にも笑いがある、明るく温かな部隊です。この環境には本当に助けられてきました」
人員や物資の輸送を安全に遂行することに専念しつつ、緊急事態に備えた準備は常に整えています。
「実際に有事が発生すれば、輸送需要は一気に高まります。その際、民間の輸送力だけでは到底対応しきれません。また、自衛隊機を含め航空輸送を行なう場合には『航空優勢が確保されている状況で活動する』ことが前提となります。もし敵の攻撃を受ける事態になれば、輸送機は回避行動が取りにくいため、統合運用の中で他部隊が防護する態勢が不可欠です。戦闘機が最前線で活躍するのは当然ですが、輸送支援もその活動を根底で支える重要な役割を担っています。その意味でも、統合運用態勢の強化は極めて重要です。現場レベルでは共同訓練などを通じて相互理解を深めており、どの自衛官もその必要性を強く意識しながら任務に取り組んでいます」

輸送業務に同行させてもらったフライトの搭乗員6名(操縦士2名、航法・通信員1名、機上整備員1名、ロードマスター2名)のうち、4名の隊員にも話を聞きました。
C-130RのクルーはほぼP-3CとYS-11Mからの転換組です。固有名詞はアルファベットで称します。

S3佐はP-3Cのパイロットとして経験を積み、海外での勤務などを経て2021年から61空で操縦士としてキャリアを重ねています。輸送任務をはじめ、航空情報、いわゆるノータムの整理や、将来機種変更するにあたっての調査研究などを担当しています。
「この部隊がパイロットとして面白いと思うのは、自衛隊の航空機でありながら、より民間の航空機に近い運用をしているという点です。民間の運用方法や最新の情報を集め、『なるほど、民間ではこうやっているのだな』と実践してみるのは非常に興味深く、61空ならではの面白さを感じます。一方、C-130Rは機体も装備も古く、最新の機材を搭載しようにも機体がそれに対応できないことがあるのは難しい部分だと感じます」
「61空で印象深い任務は、グアムに行ったことです。入隊して約30年、海外のチームや現地派遣に関わってきましたが、すべて地上における幕僚としての活動ばかり。自分で操縦して海外に行ったのはこれが初めてのことで、感慨深いものがありました」

航法・通信員のT3佐も海曹時代は航法・通信員として、幹部になってからは戦術航空士としてP-3Cで勤務した後、自らC-130Rでの勤務を希望し61空の一員となりました。現在は航法・通信員として通信とナビゲーション、レーダーの操作を担当しています。
「パイロットをはじめとする各クルーには専門の役割があり、そのサポートをすることが私の業務です。自分の仕事をしつつほかのクルーのサポートもできるというのが、航法・通信員の特徴です。P-3Cでは扱っていなかったレーダーに関われるのは新しいもの好きとしては楽しいですが、たとえば悪天候で『行けるか、行けないか』の判断をしなければならないときなどはプレッシャーを感じます。コロナ禍で『どうしても明日までにこの物資を届けたい』という要望があり、うちが飛ぶしかないとなったとき、『じゃあ行こうか』と言えたのは、この部隊ならではのいいところだと思いました」
「緊急かつイレギュラーな案件にしっかり対応して『ありがとう』と言われるのはうれしいことですが、それは誰かがつらい状況にいるということでもあるので、単純に喜べない気持ちもあります。感謝されることが目的ではなく、感謝される必要のない日々を目指すことを、常に胸に抱いています」