レゾリュート・ドラゴン22(6)

2023年6月19日

矢臼別演習場で10月3日に報道公開が予定されていた第12海兵連隊によるHIMARS射撃は10日に延期となっていたのですが、10日も手続き上の不備により弾が届かないという事態で延期に(たび重なる延期を伝える陸幕広報室の担当者の電話の声が疲労困憊していて気の毒でした……)。
高機動ロケット砲システムであるHIMARSは米国がウクライナにも供与しているためメディアの注目度も高く、朝6時に演習場廠舎集合というスケジュールにも関わらず(演習場には釧路駅から車で約1時間半の距離)多くの報道陣が集まりましたが、弾がないので射撃は行なわれず、展開訓練のみの実施となりました。
ただ、射撃だけが訓練の目的ではありません。もちろん射程が数10キロに及ぶため、国内で実弾射撃できる唯一の演習場における射撃の機会を逸するのは望ましいことではありませんが、EABO(遠征前進基地作戦:Expeditionary Advanced Based Operations)の構想に不可欠なHIMARSを沖縄から北海道へ空輸するのも、自走して移動するのも、この日行った展開の動きも大事な訓練である。いわゆる「転地訓練」は演習の大切な演目です。
なお、その後弾は届き、RD22最終日の14日に射撃を実施することができました。
10日は陸自の第1特科団第4特科群第131特科大隊によるMLRSの実弾射撃も計画されており、こちらは朝からの雨で視程が心配されましたが、無事に実施できました。
第2師団広報室担当者によると、矢臼別演習場は霧が発生しやすく射撃訓練の障害になりますが、雨だとむしろ霧が晴れるので射撃できる確率が高くなるそうです。
この日は約13キロ離れた標的に向け、ロケット弾計24発を発射しました。同じ型をイギリスがウクライナに提供しているため、こちらもHIMARS同様メディアの注目を浴びていました。
一方、上富良野演習場では9日から3即機連と米海兵隊第3大隊による島しょ防御訓練が行なわれていました。
BGTCC(2国間地上戦術調整所)において日米相互の情報共有により情報と火力を連携、共同戦闘により敵の侵攻を阻止するというもので、13日夕刻まで状況は続きました。
普段は状況を邪魔しないよう気をつけながら、部隊の広報担当者が撮影ポイントへ案内してくれるのですが、日米共同訓練では防御戦闘の様相も部隊配置も米海兵隊との連携要領なども公開不可でした。ただ、それがかえって訓練における島しょ防衛のシナリオの生々しさを感じさせました。わかっているのは、3即機連のMCVと米海兵隊のジャベリンをはじめ、それぞれが保有する火力を相互の連携により最大限に発揮し、任務を完遂したということです。
1日の訓練開始式の際は半袖でちょうどいい陽気だったのが、訓練終了時、上富良野演習場から望む十勝岳連峰は初雪で白く染まっていました。
第3即機連隊長の山﨑潤1佐にRD22を振り返ってもらいました。
「第3即応機動連隊もこのRD22へ参加できたことは本当に有意義であったと感じています。本訓練の随所で米海兵隊の『真剣さ』を感じられたことで、われわれも改めて気を引き締めて鍛錬しなければならないと再認識しました。日米同盟を担う最前線の現場で米海兵隊から『陸上自衛隊・第3即応機動連隊を信頼して、共に任務を果たそう』と認識してもらうには、現場の部隊が鍛錬を積み重ね、その強さを感じてもらえなければなりません。今回、共に訓練した米海兵大隊にはわれわれの強さを感じてもらえたものと確信しています」

(つづく)

(わたなべ・ようこ)

(令和五年(西暦2023年)3月2日配信)