自衛隊とその他のUAV(11)

消防庁のUAVの話の続きです。
そのほかのドローン導入例として、2020年4月、近年頻発する広域的自然水害に備えるため、東京消防庁に「即応対処部隊」が発隊しました。総勢42名からなる警防本部直轄部隊で、大規模かつ広域的な自然災害において通常の消防部隊では立ち入り困難な地域に特殊車両等で進入、全天候型ドローンを活用した被害状況の把握や迅速な救出救助活動を行なうとしています。昨年7月に熱海市で発生した土砂災害で初出動、2020年度中に導入予定とされていた全天候型ドローンかどうかは不明ですが、現場にはドローンも投入されました。
また、静岡県焼津市消防団本部には、ドローンが撮影した映像を映す大型モニターやドローン離着陸用のヘリポートを備えた消防指揮車が配備されました。ドローン仕様の指揮車は全国的に珍しいですが、焼津市消防団は静岡県内初の消防団ドローン隊「スカイシュート」を2020年1月から運用、保有する4機のドローンで人が立ち入れない災害現場などの情報収集に当たってきたという実績があります。
ほか、消防庁は石油コンビナートなどの大規模火災に対応する消防ロボットシステムを開発、2019年5月に千葉県市原市消防局に配備されました。スクラムフォースは飛行型偵察・監視ロボット、走行型偵察・監視ロボット、放水砲ロボット、ホース延長ロボット及び指令システムで構成され、すべてが1台の車両に積載されています。
飛行型偵察・監視ロボット「スカイ・アイ」は、産業用UAVのメーカーのAileLinXが開発。同軸二重反転型のドローンで、テールローターはありません。プロペラによる風は本体を冷やすように設計されています。輻射熱に強く、複雑な気流の中でも安定して飛行でき、自動飛行が可能だそう。常に地図上で指定された目標物を撮影し続けられるほか、上空から可視画像、熱画像、輻射熱量、可燃ガス濃度、風向・風速などの各種データを地上に伝送することができます。
最後にJAXAの無人機について。
2020年12月、「はやぶさ2号」からオーストラリアの砂漠地帯に投下されたカプセルの回収に、フジインバック社の中型UAV、V-6型機が参加。約90分の飛行で空撮を行ない、撮影した写真をコンピュータ解析して投下されたヒートシールドの発見に貢献しました。最後の最後でやっと日本製のUAVが登場しましたね!
なお、同社のB型機(現在のV型機)は、2011年3月の東日本大震災において福島第一原発の被害状況を空撮により観測しました。
また、世界初の南極地域におけるUAVの運用に成功したほか、2008年には長距離無人機(最長航続距離2500km)、2009年には高高度用無人機(高高度飛行5700m)の開発を達成しています。
以上、紹介したように、官公庁におけるドローンの導入は前向きに進められています。
しかし、どこも共通した喫緊の課題が操縦者の育成です。
現在、ドローンには公的な操縦免許がないため、たとえば消防職員の場合は各地の民間団体やスクールが行なっている講習で法令や技術を学び、同僚らに教えるなどの方法を取っています。一日も早く教育体系を整えることが求められます。
(自衛隊とその他のUAV  おわり)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)2月3日配信)