自衛隊とその他のUAV(10)

地方警察本部のドローン導入例のお話の続きからです。
和歌山県警串本署も民間企業とドローンの運用に関する協定を結んだところのひとつ。
南海トラフ地震などの災害に備え、災害発生時に同署から要請があれば企業は空撮による情報収集に協力するほか、署員に対してドローンの操縦方法を指導しています。さらに災害が発生した際はネットワークを活用し、被災地の撮影、被災者の捜索などで協力することになっています。
佐賀県警では、2020年7月に唐津湾で唐津市消防本部のドローン隊やNPOが合同で災害時の捜索救助訓練を、9月には鳥栖警察署、鳥栖・三養基地区消防本部、ドローン検定協会株式会社が参加してドローンを活用した水害時救助訓練を実施しました。
また、三重県ではドローンによる監視・測量システムを導入。ドローンで産業廃棄物の不適正現場を上空から監視するとともに、上空から撮影した写真をもとに3D化した画像から残存する廃棄物量を把握し、事業者への的確な指導に繋げています。令和元年度におけるドローンによる測量実施回数は34回にのぼりました。
続いて消防における無人機導入事情です。
消防分野におけるドローン活用することのメリットのひとつは、火災現場などでは赤外線カメラを搭載したドローンで隊員が目視できない箇所の確認ができることです。
そこで、現在はドローンで得た情報を基にホースの方向を指示するといった運用がなされています。
また、作業に危険性がともなう捜索救助や土砂災害現場といった場面でもドローンが有効です。
西日本各地に大きな被害をもたらした「平成30年7月豪雨」では、警察や消防と提携していた民間企業が救助現場へドローンを飛行させ、要救助者に対し救命胴衣を投下するという活躍もありました。
2019年の台風19号の際は、神奈川県内で発生した土砂災害現場で国土地理院の地図と照らし合わせての状況確認、捜索現場での上空監視による安全管理などで活用されました。さらに「令和2年7月豪雨(熊本豪雨)」でも被害状況の迅速な把握に威力を発揮したほか、濁流にのまれたとみられる行方不明者の捜索にドローンが使われました。
総務省消防庁は2019年3月末までに全20政令指定都市にDJI社のドローン、MATRISE200シリーズを無償で貸与。順次追加配備し、2019年度以降は政令指定都市を持たない各都道府県にも最低一基の配備を進めてきました。
ドローンを保有している消防本部の数は2017年度70(9.6%)、2018年度116(15.9%)、2019年度201(27.7%)と年々増加し、2020年の時点で43都道府県の消防本部が保有しています。
しかし、マニュアルの未整備や操縦者の不在などの理由で、実際に運用している本部は176にとどまっています。多くの消防本部がドローンの必要性を実感しつつも消防本部のドローン導入率は3割、さらに導入しながら運用できていないというのが現実です。
産業用ドローンのMATRISE200シリーズは、消火活動では目視と赤外線画像で危険な状況を全体的に把握でき、捜索救援活動では空撮ズームとサーモカメラが搭載によって離れた場所から迅速に行方不明者を発見、安全な救助経路を計画できます。
消防が採用したMATRICE200シリーズは産業用ドローンプラットフォームともいうべき存在ですが生産はすでに終了しており、現在はMATRICE300RTKがその後継となっています。
最大55分という長い飛行時間と大きなペイロードを実現し、ハイブリッドマルチセンサーカメラZenmuse H20シリーズと組み合わせることで、撮影作業を効率よく行なうことが可能となっています。防水防塵性能により過酷な環境下でも実力を発揮、最大40m先まで検知できる障害物センサーで飛行の安定感も増しています。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)1月27日配信)