自衛隊とその他のUAV(9)

今週は警察関連の無人機についてご紹介します。
2015年12月、警視庁警備部災害対策課に不審なドローンを大型ドローンで捕獲する無人航空機対処部隊(IDT:Interceptor Drones Team)が発足しました。同年4月に首相官邸屋上でドローンが見つかった事件をきっかけに、全国の警察で初めて不審機の撃退を目的として誕生した迎撃ドローン部隊です。
国会議事堂や首相官邸など重要施設の上空にドローンが接近した場合に出動するほか、伊勢志摩サミットや即位の礼でも警備を担当しました。
ヘキサローター(6枚ローター)型の遠隔操作型ドローンに縦3m、横2mの網をつり下げ、不審ドローンをからめ捕ります。搭載したデジタルカメラで撮影した映像を地上の大型モニターに中継することもでき、おそらく昨年開催された東京オリンピック・パラリンピック大会でも使用されたのではと思われます。
使用されているドローンはDJI社の多用途UAV、S900。自動式折りたたみ脚、折りたたみ式遠心プロペラによる高い携帯性、高出力高効率の放熱式モーター、軽量・強固・安定性を実現したオールカーボンファイバーボディーの採用、低振動で鮮明な撮影を実現したフレームデザインなど、必要とされる性能と機能の高性能化に加え、搬送までを考慮したデザインとなっています。
特徴としては、高精度な飛行制御システムによる安定したフライト、プログラムされた飛行条件による自動飛行(GPSを使用)が可能であること、自動回帰機能や自動軟着陸機能等の安全システムを搭載していることなどが挙げられます。
また、取り外し可能な上部センターボードや新たな配電システムによって安全性と信頼性が向上しました。総重量は3.3kgで、これにはS900メインフレーム、センターボード、アーム、モーター、プロペラ、着陸装置、その他の搭載小型部品が含まれています。
なお、2015年から警備ドローンの開発提供を行なってきたJDRONE社は(IDTが採用した捕獲ドローンもJDRONE社の提供)、2019年からベースの機体をS900からよりパワフルなJH11へと変更しました。
この機体は機動性および安定性に優れており、今後警視庁ならびに全国の警察がさらなる大型ドローンを導入する場合は、この新たな機体に警備や捕獲、撮影などの機能を付加したものになることが予想されます。
IDT以外でも、全国の警察では災害時の状況調査や被災者捜索、重要な行事を狙う不審ドローン対策にドローンを活用しています。
なかでもIDTに代表されるように、とりわけ先進的な取り組みで導入を図ってきたのが警視庁ですが、2020年6月、災害時などに出動する特殊車両を保有する警視庁特科車両隊所属の機動隊員3名がドローンの点検中に操作を誤り回転するプロペラに接触、手の指を切断するという事故が起きました。
ドローン導入による各種業務の効率化などその効果は大きいですが、どの部署も運用してまだ日が浅いだけに、安全の徹底や操作する隊員の育成は重大な課題といえるでしょう。
地方警察本部では民間企業などと連携したドローンの活用も進んでいます。
たとえば岡山県警では2018年の西日本豪雨をきっかけに、玉島警察署など5つの警察署が民間企業と協力することになりました。自然災害や大規模事故発生時、警察署からの要請を受けた企業がドローンで捜索、情報収集などに協力しています。
県警が所有するドローンが少数しかなくても、民間企業と連携することで補えるという意義は大きいですね。特に民間企業は複数機種のドローンを保有していることが多いため、場所や天候、目的などに応じて最適な機材を使いわけることができるという利点もあります。
来週はその他の地方警察本部のドローン導入例についてご紹介します。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)1月20日配信)