自衛隊とその他のUAV(8)

先週までは自衛隊で推進されている各種無人機の最新事情を紹介しました。今回は防衛関係ではありませんが、日本の官公庁におけるUAV運用について知っていただきたく、海上保安庁、警察、消防などの分野で導入されている無人機についても紹介したいと思います。
海上保安庁
海上保安庁は連続飛行時間が飛躍的に伸びる大型無人機の導入を検討しています。2020年10月~11月には海上自衛隊八戸航空基地においてジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ社(GA-ASI)の遠隔操縦無人機MQ-9B、「シーガーディアン」の実証実験を行ないました。
シーガーディアンは中高度における情報収集・警戒監視・偵察(ISR)の任務に特化した遠隔操縦無人機です。実験は広域海上監視を行なう海上保安庁の任務遂行に遠隔操縦無人機の導入が有効なのかを検証するもので、三陸沖洋上エリア、日本海エリア、そして1700キロ以上離れた硫黄島も含む小笠原洋上エリアで計13回、約150時間の飛行を実施。広域の洋上での救助や監視、取り締まりなどに有効かを試しました。
シーガーディアンは地上にいる操縦士が無人機のビデオやレーダーを使い、衛星経由で操縦します。無人機は飛行中に操縦者を交代できるほか、連続飛行時間が1日8時間に定められている有人機では実現が難しい長距離かつ長時間の監視・観測を可能にします(一度の飛行で日本の排他的経済水域の外側を一周できる性能を有しています)。
さらに全天候に対応、ほかの有人機や無人機との連携や音声による不審船への警告もでき、4万時間以上の運用に耐える設計によって運用コスト削減をもたらし、今後数十年に渡り海洋任務の主力となりうることが期待されます。
センサーシステムは避雷および除氷/防氷システム、検知・衝突回避、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)、高解像度EO/IR自動離着陸、マルチモード360度海洋表面探査レーダー(MPR)、フルスペクトル電子支援対策(ESM)、電子情報(ELINT)ならびに通信情報(COM-INT)装置、船舶自動識別装置(AIS)など。
これらの機器も地上のコントロール施設からの遠隔操縦により操作でき、衛星通信によるデータリンクなどを介してタイムリーに取得した情報を地上に送信し、海難事故の捜索や不審船の監視に際して迅速に対応することができます。
諸元は次のとおりです。
翼幅:24m
全長:11.7m
離陸重量:5760kg
飛行最高高度:4万フィート (海抜1万2000m)
最大航続時間:30時間以上
最大飛行速度:時速約400km(対気速度)
2021年6月には海上保安庁長官が定例記者会見で洋上監視機能の強化のため、大型無人航空機の導入に向けた必要経費を来年度予算の概算要求に計上する意向を明らかにしました。
そして令和4年度概算要求にはUAV 1機の導入経費として34億8000万円を計上しています。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)1月13日配信)