陸上自衛隊大改編(2)

今春行なわれた陸自組織改編のお話、第2回目です。
前回は部隊等の新編・改編の柱は「指揮統制能力の強化」、「作戦基本部隊の改編」、「水陸両用機能の整備」、「警戒監視能力等の強化」、「体制改革を支える教育訓練研究体制の充実」の5点であることまでご紹介しました。今回はその中の「指揮統制能力の強化」を取り上げます。
指揮統制能力強化とは、統合運用のもとで陸上自衛隊の各種部隊等の迅速・柔軟な全国的運用を可能とすることでもあります。そこでこれまでの5個方面隊の運用を束ねる統一司令部として、朝霞駐屯地に陸上総隊(180名)を新編しました。
陸自の改編における最大の「目玉」ともいえるのがこの陸上総隊の新編です。海自の自衛艦隊、空自の航空総隊と並び、陸自にも全国の部隊を一元指揮する部隊が誕生、ようやく「分断統治」が是正されることとなりました。
これまでの陸自の体制は5個の方面隊が並立し、各方面総監がそれぞれの方面隊を運用していました。
海自と空自の場合、有事の際は防衛大臣が統合幕僚長を通じて自衛艦隊司令官と航空総隊司令官に命じるだけで、それが全部隊への命令となりました。しかし陸自の場合、5つの方面隊ごとに命令を下さなければならず、その非効率な指揮系統が長年の懸案となっていました。
陸上総隊が新編されたことで、陸上総隊司令官が一体的に陸上自衛隊の部隊運用を担える体制となり、統合運用のもと、陸自の師団・旅団などの迅速・柔軟な全国的運用が可能となります。また、各方面隊が個別に実施している統幕、自衛艦隊司令部、航空総隊司令部および在日米軍との調整を陸上総隊に一本化できるので、迅速かつ円滑な調整も可能となります。
陸上総隊は方面隊を隷下に置く高級司令部ではありませんが、大規模災害や有事の際などは全国の陸自部隊を一元的に指揮・運用する役割を担います。
陸上総隊の新編により中央即応集団(CRF)は廃止され、これまでの隷下部隊は陸上総隊直轄となりました。ただし対特殊武器衛生隊は東部方面隊へ、国際活動教育隊は廃止され教育機能のみ統合幕僚学校へ移管されました。また、陸上総隊の直轄部隊として、陸自幹部学校と研究本部の統合による教育訓練研究本部が新編されました。防衛大臣直轄だった通信団は改編のうえ、システム通信団として陸上総隊へ移行。さらに西部方面普通科連隊は拡充改編の上、陸上総隊に新編された水陸機動団に移管。今後は島しょ部に対する攻撃や大規模災害など、統合運用による機動的な対応が期待されます。
なお、第1空挺団や水陸機動団、中央特殊武器防護隊といった即応性の高い部隊が直轄部隊として加わるため、陸上総隊司令部にもそれなりの機能が必要になります。運用ばかり重視していても各部隊の強みを生かすことは難しいというわけです。具体的には兵站を扱う後方運用部、いわゆる第4部の機能強化が求められます。
(わたなべ・ようこ)
(平成30年(西暦2018年)9月6日配信)