陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(8)

高射学校の教官にも話を聞きました。
学生たちの指導に当たってきたのがS1尉です。
第7特科連隊で13年87AWに携わり、高射学校では約2年、第1教育部で87AWの指導教官を務めてきました。

「今回入校していたのは、87AWのドライバーを経験してから陸曹試験に合格、高射学校に入校という流れの学生が中心です。そのため多くが大型特殊免許も持っていますが、大特を持っていないと入校できないわけではありませんし、ドライバーの経験がない、あるいは87AW以外の部隊から転属して来るという学生もいます。ただいずれも共通しているのは、元気がいいことですね。87AWを学ぶ学生というのは、高射職種の中でも総じて元気がいいんです。しかも今回の学生は非常に勉強熱心で、ほかの教官が『休日に自習室で勉強してるぞ!』とわざわざ私に報告に来たほどです(笑)」

87AWを扱う向き、不向きのタイプはあるのでしょうか。

「私が感じているのは、まず高射部隊としては特科部隊や普通科部隊と一緒に行動する場面も多いので、他職種ともうまくやっていける協調性が必要だということです。職種の垣根を越えられる隊員はいいですね。さらに87AWについては、限られた時間で正しい状況判断ができる能力があると望ましいでしょう」

教官としての醍醐味は?

「なんといっても学生の成長を目の当たりにできることです。教官になって1年目は自分も必死であまり余裕がなかったのですが、2年目になると入校した学生たちが自分の教えたことを身につけいく姿をじっくり見られるようになりました。そうすると日々成長していく様子がよくわかって、『教官をやれてよかったな』と実感しました。また、ここで教えて卒

業した学生が、今度は支援する側としてやって来てくれるケースもあり、さらに成長して頑張っている姿を見られるのは実にうれしいです」
指導する際に心がけていることは「3つの気持ちを育てること」だと言います。

「ひとつは自主積極性。ひな鳥が口を開けて餌を待っているような姿勢では、学べることは限られています。一歩踏み出して教官に自ら聞こうとするほど得るものは多くなります。ふたつめは探求心。具体的には、高射機関砲は射撃精度をミリミリ追求していくところがあるので、『なぜだろう』『知りたい』という疑問を持ちそれを解くという気持ちです。そして3つめは、学校教育に協力してくれる部隊や隊員への感謝の気持ち。これら3点を育てられるような教育を心がけています」
「私自身も教えながら学び得ることが多く、常に新鮮な気持ちです。『あの訓練や教育はさらによくできるのでは』という気づきがある限り、教官を続けていければと思っています」

次回は87AW&高射学校最終回です。最後は高射学校長へのインタビューです。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)11月26日配信)