日本周辺国の軍事力状況(2)
GDPが日本の約3分の1、150兆円程度しかないロシアにあれほどの発言力があるのは、腕力(武力)と武器を作る能力を交渉力として、今でも他国に圧力をかけられるからです。しかも自分たち独自のルールを平気で押し付けてきます。国連も関係ないという不遜な態度でありながら、常任理事国という立場を利用して拒否権をちらつかせながら西側を抑え込もうとする狡猾さも持ち合わせています。
軍事力は交渉力の後ろ盾です。それがあるからこそ自国が有利になるように交渉が進められます。ロシアに限らず、大国は交渉のカードのひとつとして当然のように軍事力を利用しているのです。
日本人には理解できない脅迫がまかりとおる。核兵器保有も「抑止力として平和を維持している」と言いつつ、一方では「いつでも核を撃ち込めるよ」という脅しにほかありません。しかし、日本以外の大国はこれを交渉力として使うことを当然視しているという現実は、知っておくべきです。GDP世界第3位の日本が、他国に対してまったく交渉力がないという現実を知り、いつまでも日本国内だけの小さな議論をしていると大国に飲み込まれてしまうという危機感を持つべきでしょう。
次は韓国の軍事力について見てみます。
2019年10月、韓国海軍参謀総長が国政監査の場で原子力潜水艦保有の準備を進めていると述べたことに対し、米海軍関係者が「韓国が同盟国だとしても(原潜)技術は渡さないだろう」と語った、とのニュースがありました。実は冷戦直後にも、これに似た事案がありました。
冷戦当時、韓国海軍は潜水艦を持っていませんでした。また、北朝鮮がスカッドミサイルを持っているのに対し、韓国には北朝鮮に撃ち込むミサイルがありませんでした。そのため、冷戦終結後に韓国軍が真っ先に欲しかった武器は、潜水艦とミサイルでした。
しかしそのいずれに対しても、米軍は「それはうちでやるから持たなくていい」と言って保持を認めませんでした。それだけ韓国を信用していなかったといえます。
頭にきた韓国は、クロス外交を行ないました。つまり、米韓同盟がありながらロシアに行き、「潜水艦を売ってくれ」と言ったのです。しかしロシアにも断られ、最終的にドイツから潜水艦を購入しました。
ドイツは武器商人ですから「武器は売るけれど使い方は教えない」と突き放したので、潜水艦の作戦運用がわからない韓国海軍は海上自衛隊に泣きついてきました。哨戒機P-3Cを購入したときも同様でした。
今回の「原潜保有の準備中」という発言は、海軍ならば原潜という軍艦は単純に欲しいものなのです。韓国海軍に限らず、どの軍隊も最新型で高性能な装備品は欲しいものです。私だって防大卒業時は、原潜の艦長になるつもりでしたから(笑)。
現在の韓国の軍事力ですが、陸海空の割合が4:1:1と偏っているのが特徴です。これは韓国軍が陸続きの北朝鮮と戦うことを想定して構成されているからです。韓国の陸上戦力は陸軍と海兵隊と合わせて約52万人、予備役を招集すると220万人もの勢力になる強力な陸軍国家です。自衛隊は陸自が約14万人、陸海空合わせても23万人足らず。韓国陸軍がどれほどの規模か、比較すると非常によくわかります。
しかし、韓国軍は陸に偏りすぎて海・空が二の次になっているという受け取り方もできます。4つ星(大将)の数も4:1:1なので、韓国では軍隊イコール陸軍です。火器管制レーダー照射事件で、真実を追究しようとした海軍が結局なにもできずなにも言えなかったのは格下の扱いをされていたためで、国防省の言うことを聞かざるをえなかったからだと私は思います。実際、現役時代に韓国陸軍の将校と会うと、同じ階級でも上から目線の人がいましたから。
(つづく)