地本の業務、募集と援護(2)

学校は募集課にとってまさに人材の宝庫。
特に大学は全国比約18%、学生数は約67万人で全国比25.7%と、実に日本の大学生の約4人に1人以上が都内にいる計算になります(ただしコロナ禍でオンライン授業を導入した大学も多く、現在はかならずしも学生が都内在住とは限りません)。
大学生は喉から手が出るほど欲しい幹部候補なのですが、当の学生たちは有名企業や官公庁を志望することも多く、自衛隊を受験しても併願が少なくないのが現状です。
一方、都内の高校は全国比8.8%、生徒数は31万人で全国比約10%、非常に進学率が高いのが特徴です。大学・短大への進学率は66.6%(全国は55.8%)、就職率は6.2%(全国は17.4%)という数値が、東京の特性を何よりもよく表していますね。
このほか、短大、専門学校、進学予備校、就職予備校など、多様な通学形態が混在しているのが首都東京ならではの特性といえます。
このように、東京の募集環境は「量」の適齢者数、「質の」大学生数、いずれも日本一であり、東京での募集の良否(成果)は、自衛隊に与える影響がきわめて大きくなります。また、将来の幹部候補となる大学生の獲得は、東京地本募集課に課せられた使命でもあります。
ちなみに、ベテランの募集担隊員は、学生が入隊するか否か、その学生を見ると直感でわかるそうです。さすが長年の経験で培われた、募集担当ならではの観察眼ですね。
続いて今回の連載でご紹介するもうひとつの業務、「援護」です。
自衛官は部隊の精強性を維持するという国の防衛施策から、若年定年制および任期制という特殊な制度を取っています。
自衛官は一般の公務員より若くして退職することになるわけで、当然退職後の生活が心配になりますよね。50代半ばで退職するとき、子どもが大学受験を控えた高校3年生と、これからまだまだ学費がかかる中学1年生、といったケースはまったく珍しいことではありません。
そこで、勤務する自衛官が退職後の生活に不安を抱くことなく日々の任務にまい進できるよう、防衛省は退職予定自衛官職援護施策を行なっています。
退職予定隊員に対するサポートは退職2年前から始まります。
まずは就職援護教育と就職相談(2年前面談)の実施。その後、隊員は調査票を提出し、具体的な再就職先の希望を援護課に伝えます。
退職9~11カ月前には就職説明会と個別面談が行なわれます。ここで、就職の際に最優先するのは給料なのか業種・職種なのか、あるいは勤務地や通勤時間なのか、その辺をしっかり確認します。
そして隊員の希望に合った求人があれば求人票を提示。本人が受諾したら企業との面接や身体検査を経て採用、不採用の場合は新たな求人票を提示します。
就職先は金融・保険、不動産、警備などのサービス業が目立ちます。
なお、防衛省には職業紹介(あっせん)の権限はありません。職業紹介については、職業紹介権を持つ自衛隊援護協会という組織が、防衛省に替わって行なうという形を取っています。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)3月3日配信)