第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(14)

先週に続き、第3即応機動連隊に改編される(2022年2月時点)第3普通科連隊の歴史を振り返ります。前回は25大綱ならびに平成31~35年度中期防における陸自部隊の改編のお話の途中だったので、今回はその続きからです。
火砲についても北海道以外に所在する作戦基本部隊が装備するものは、新編する各方面隊直轄の特科部隊への集約に向けた事業を着実に進めるとしました。陸自の保有する航空機についても、戦闘ヘリは各方面隊直轄の戦闘ヘリコプター部隊を縮小、効果的かつ効率的に運用できるよう配備の見直し等を検討する一方、オスプレイ(V-22)の速やかな配備に向けて関係地方公共団体等の協力を得るための取り組みが推進されています。
余談ですが、改編されずに現在の運用を継続する師・旅団もあります。
首都防衛を担う第1師団(練馬)、大都市を擁する第10師団(名古屋)、第3師団(伊丹)、第4師団(福岡)のほか、第9師団(青森)や日本海に面する第13旅団(広島)、南西防衛の最前線である第15旅団(沖縄)は地域配備部隊として現状の編成のままとしました。
また、陸自唯一の機甲師団である第7師団(東千歳)も90式、10式戦車で3つの連隊を編成できるただひとつの師団として現状のまま運用します。
そして、機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団・機動旅団)には、航空機などでの輸送に適したMCVを装備し、各種事態に即応する即応機動連隊を引き続き新編することとしました。これが機動師・旅団隷下の普通科連隊を改編したものです。
8師団では第42即応機動連隊連隊(北熊本)、第14旅団では第15即応機動連隊(善通寺)、第6師団では第22即応機動連隊(宮城)、第11旅団では第10即応機動連隊(滝川)となり、これらの部隊にMCVが配備されました。
第2師団の普通科連隊の中で、即応機動連隊に改編されるのが3連隊です。伝統ある3連隊のかつてない規模での改編という大役を担って2020年夏に着任した山﨑潤連隊長のもと、これまで着実に準備を進めてきました。
昨年9月には最初のMCVを迎え入魂式を実施、新編されるMCV中隊の前身であるMCV中隊準備隊の隊員たちの士気もおのずと上がりました。
即機連の部隊編制は、連隊本部(輸送科の幹部が含まれます)、本部管理中隊(連隊本部班、補給、通信、衛生、情報、施設作業、対戦車、高射<近SAM>の各小隊)、1~3普通科中隊(中隊本部、1~3小隊と迫撃砲小隊、WAPCを装備)、火力支援中隊(これまで普通科職種が扱ってきた120mm迫撃砲を野戦特科職種が担当)、そしてMCVを装備する機動戦闘車隊となっています。ただし北方部隊は本州や四国地方と異なり戦車部隊が配備されているため2個中隊の機動戦闘車隊ではなく、1個中隊の機動戦闘車中隊として編制されます。
参考までに、現在の普通科連隊である3連隊の編制は、連隊本部、本部管理中隊(本部班、情報、施設作業、通信、衛生、補給、対戦車の各小隊)、1~4普通科中隊(1中隊はWAPC、2~4中隊は高機動車を装備)、重迫撃砲中隊です。
山﨑連隊長は3連隊が即機連に改編されるにあたって他部隊よりも恵まれていると言い、その理由として「ほかの即機連はMCVの10式戦車と同レベルの射撃統制装置とネットワークシステムを使ったことがないが、2師団では10式戦車のネットワークに慣れている隊員が多い。UAVのスカイレンジャーもほかの部隊では新規で扱う装備品だがうちは部隊実験で経験済み、使える隊員がすでにそろっている。新装備品の慣熟という点ではほかの即機連よりもなじみが早い」、そして「長年『技術屋』でやってきたベテラン隊員がいきなり新しいシステムに慣れるのは大変だが、最新装備を持っている2師団隷下の部隊では、そもそも苦手意識を持つ隊員は年齢を問わず圧倒的に少ない。母体が先進師団の2師団であるということは強み」ことを挙げました。
また、普通科連隊を改編して即機連を新編する意義や利点については「即機連は連隊という単体でありながら諸職種協同の1パッケージなので、圧倒的に機動力が増す(普通科連隊の場合、普通科だけでは足りない火力や対空防護能力などの機能を加えて各地に機動させようすると大所帯になり、スピード感の低下につながる)。師団としても、すぐに展開して即戦力発揮でき、しかもさまざまな職種が混ざっていて単体でも行動できるという、作戦の初期段階から使える即機連を持つ意義は大きい」。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)6月30日配信)