GSOMIAの裏側と韓国人の米軍依存(3)

大騒ぎしていたのは朝日、毎日新聞と野党です。「安倍政権の政権運営がまずかったから、大事なミサイル防衛にも影響するようなGSOMIAを破棄されるじゃないか」と、安倍政権を叩く理由に使い始めました。そう言っている人たちこそ先日までミサイル防衛に反対していたのに、「なにを今さら」という感じです。テレビも「GSOMIAがなくなると日本も大変だ」と言う人しか呼ばれなくなりました。私からしてみれば「知らない人はしゃべるな」と言いたかったですね。
改めて言っておきますが、日韓GSOMIAの有無は日本の弾道ミサイル防衛になんの影響もありません。日本が韓国から得る情報は発射の兆候に関するヒューミント(人的情報)などに限られており、しかも同様の情報はアメリカも把握しているため、GSOMIAがなくても日本のデメリットはほとんどないのです。

失効まであと数時間というカウントダウンが始まっている段階で、韓国は翻意しました。この大どんでん返しを導いたのはアメリカの上院が行なった決議だったと思います。
アメリカ国務省が主導する形で上院は「日韓GSOMIA破棄を中止させる決議案」を出し、超党派で可決されました。中でも「日韓GSOMIAの破棄は『在韓米軍』を危険にさらす行為である」という内容が効きました。
それまで文大統領は米国防長官などが訪韓してもまったく聞く耳を持たず、「日韓」のGSOMIAは、「米韓」同盟とは無関係と認識していました。実際もその通りなのですし、11月21日に韓国で開催された NSC(国家安全保障会議)でも、あくまで「韓日」の話であり、「アメリカは関係ないだろう」という姿勢でした。韓国の国防大臣は韓国軍が被るリスクがどれほど大きいかわかっていたので、文大統領に何度も継続を訴えましたが、無視され続けていました。

北朝鮮は韓国攻撃用の短距離ミサイルの発射実験を繰り返していますが、そのミサイルの終末軌道や着弾情報は、地球の形状から水平線以降の飛行実態がわからないことから、韓国軍は自衛隊からの情報をもらう必要があるのです。特に北朝鮮が飛行実験している新型短距離ミサイルは、着弾直前に複雑な軌道で飛ぶロシア製「イスカンデル」をモデルにしているとされ、韓国にとってはこの着弾情報こそきわめて重要な情報です。それにも関わらず日韓GSOMIAを破棄すれば、韓国はその貴重な情報へのアクセスを断つことになるのです。
有事の際、北朝鮮がミサイルを撃ち込む場所は韓国だという認識が、文大統領はあまりに希薄でした。もともと北と一緒になりたい人ですから「北朝鮮が韓国にミサイルを撃ち込むなどありえない。だから日韓GSOMIAはいらない」と本気で思っていたようです。
ところがこの上院の決議案の内容を知り、初めてアメリカから「日韓GSOMIA破棄は在韓米軍を危険にさらす」とはっきり言われたことで、ようやく「これはまずい」と気づいたのでしょう。慌てて22日にもNSCを開催するという異例の対応を取り、日韓GSOMIAの継続を決めました。おそらくこの上院の決議がなければ、予定通り破棄されていたでしょう。まさにひとり相撲だったのです。(つづく)