第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(16)

2022年2月、北海道上富良野演習場にて、第2師団隷下第3普通科連隊の令和3年度第2次MCV射撃訓練が行なわれました。昨年秋の第1次MCV射撃訓練に引き続き、MCV中隊準備隊(以下、準備隊)が段階的に練成射撃を実施して射撃練度の向上を図るとともに、新たに納入された車両の初度射撃を実施するのが目的です。
射撃指揮官は準備隊長の齋藤進之佑3佐。おおまかな全般日程は初日が初度射撃、2日目が小隊戦闘射撃、3日目が連装銃停止・行進射撃などで予定されています。
隊員たちは月初めの練成訓練に続いて第2師団訓練検閲に対抗部隊として参加、その後この射撃訓練と、2月はずっと上富良野演習場にこもったままです。疲労も蓄積しているうえにコロナ感染予防対策にも気を張らなければならないとあり(ひとりの感染者によって複数の濃厚接触者が出れば、部隊が訓練に参加できなくなる恐れがあります)、現場はピリピリ、あるいは倦怠感が漂っているかと思いきや、射撃初日早朝の射場にはいつも通り、粛々と各自の役目を果たす隊員たちの姿がありました。
齋藤準備隊長に、まず対抗部隊として参加していた訓練検閲について話を聞きました。
「戦車部隊の場合、知らない普通科連隊にいきなり付けられて知らない人と話をして、スムーズな意思疎通ができるようになったと思ったことには訓練終了、ということが多々ありました。しかしうちは普通科部隊と普段から一緒にいますし、なかでも2中隊とはずっと一緒に訓練していたのでコミュニケーションがとりやすく、結果的に対抗部隊として大いに力を発揮できました。また、MCVは戦車よりも速度が出ますし普通科の車両と同じ装輪道で移動できるので(※戦車が演習場内で走行できる道路は装軌道のみ)、より普通科と協同しやすいという側面があります。そこで今回はまず普通科が攻め、敵が下がりそうになったところをMCVが撃つという戦い方をして成果を上げることができました。冬なのでそれほど自由に動き回れる形ではありませんでしたが、夜間の普通科部隊との協同連携も偵察調整の段階からしっかり訓練ができました」
雪と装輪車の相性はよろしくありません。まずは除雪、そのうえでチェーンを巻いた状態でないと、機動力を発揮どころか走行もままなりません。このチェーン装着の訓練も行なっているそうですが結構コツが必要で、「最初はゆるく締めてちょっと押し、それからどんどん締めていく」ができないと、なかなか合わないのだとか。部隊の所在する名寄駐屯地も今年はとりわけ豪雪に見舞われているので、なにをするにしても「まずは雪かきから」の毎日だというのは、雪国ならではの苦労でしょう。
また、MCV乗員の中で雪にいちばん影響されるのは装填手だといいます。チェーンで常に足元がガタガタするし、車両が横滑りすると立っているのが難しいほど。その状態で弾出しして込められないのなら、いっそ停車して撃ったほうがいいという話になります。
昨年秋に初めて実弾射撃訓練が行なわれた直後には、齋藤準備隊長からは「隊員たちは日々練度が向上、特に乗員の連携という面で成果が大きく射撃の精度も非常によかった」というコメントがありました。その秋の射撃の成果を詳しく分析したところ、やはり想像以上に命中弾が得られており、射撃までの早さもそれなりにできていたため、今回の射撃では4両並んで射撃する小隊戦闘射撃を実施してみることになりました。
「冬季のため高速で走りながら射撃するのはなかなか難しいかもしれませんが、小隊間の連携をどうするという点も追求したいと思っています。初度射撃や小隊戦闘射撃によって、戦力化の完成に近づけていきたいと考えています」
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)7月14日配信)