第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(9)

2021年9月に第3普通科連隊で16式機動戦闘車、通称MCVの入魂式が行なわれたことは先週ご紹介しました。その後、10月には3連隊の各部隊は上富良野演習場で実射訓練を実施。MCV中隊準備隊も初めての射撃訓練に臨みました。
11日に演習場入りして射場を構成、この日は雨のぱらつく天気で明日からの射撃への影響が心配されましたが、翌日からは風もない好天が続き、ほどよく湿った地面のおかげで爆煙も上がらず、初実射にはこれ以上ないというほどの最高のコンディションとなりました。
今回、MCV中隊準備隊が行なう射撃は初度射撃から始め、徐々に難易度を上げていきます。
準備隊長の齋藤進之佑3佐は今回の訓練について「初度射撃で初速を測定、さらに停止射から段階的に戦闘射撃まで練成します。今日は射撃した後に異常がないかしっかり確認し、そして許容できる範囲の初速で収まっていれば、明日以降の難易度が上がる射撃に取り組めます。だから今は『今日はなにもないといいな』という思いです」と話した。穏やかな口ぶりですが「緊張しています」。
初度射撃では、2両のMCVがまず点検射的に向けてTP(演習弾)を車外撃破により射撃します。最初の1発目は、射撃用意を終えた乗員たちは全員下車し、発射ケーブル器を用いて射撃します。
安全係と乗員が下車、緊張感が高まる中、リモート操作で演習弾が発射されました。車両にあからさまな異常は見られず、弾はしっかり的に命中しています。下車していた乗員たちが乗り込んで砲塔内を確認後、今後はHEAT(成形炸薬弾)を車内から射撃。1発ごとに後座長の点検、オイル漏れの点検を実施しました。
無事に初度射撃を終えると、齋藤準備隊長は「初度射撃がいちばん怖かったのでほっとしました」と笑顔を見せました。
山﨑潤第3普通科連隊長もMCV初の射撃を現場で見守りました。
「実は1発目ってうまくやるのが結構難しいんです。初めてだけにどんなトラブルが生じるか、頭ではわかっていても想定外の不具合が生じることもありますから。無事に射撃ができて安心しました。準備隊の隊員たちの士気は高く、見ていて頼もしく思います」
続いて行なわれたのは縮射です。縮射とは砲身の外部または内部に口径の小さい砲を装着して行なう射撃をいいます。
縮射ではまず0点規正(射撃を行なって特定の距離における平均弾着点と照準点が一致するように照準具を調整すること)と操砲で射撃を行ないました。
0点規正では2両同時に射撃して修正を実施。確実な座席調整や視度調整、一定のリズムでの撃発、正確な規正の実施などが指導されました。操砲では予行、実射の順で2両同時に実施。迅速な操砲や迅速かつ正確な照準・撃発などが指導された後、続いて直接命中法の射撃も実施されました。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)5月19日配信)