第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(10)

昨年秋、3連隊のMCV中隊準備隊についにMCVがやってきて入魂式が行なわれ、その後初めての実射訓練が行なわれている様子をお伝えしていたお話の続きからです。
MCVの初度射撃、縮射が行なわれた翌日は7・62㎜機関銃の射撃からスタート。
まず点目標に対し同時に多数弾を集中する点検射を実施後、連装銃停止射撃で近距離、遠距離の目標に対して連射を行ないました。
そして再び主武装の105㎜ライフル砲の射撃、今度は戦車砲停止射撃です。
0点規正射撃ではHEATを同1照準で射撃後、規正を実施してじ後射撃します。
戦車砲停止射撃では実射前に非実射予行を実施後、近目標標的、遠目標標的に射撃します。初弾で命中弾を得られなかった場合、車長は修正号令をかけ、2発目を射撃します。
迅速に目標を捕捉できたか、操砲は円滑だったか、最初の照準状態へ迅速に復帰できたか、車長の修正指示による砲手との意思疎通などが指導のポイントとなります。
齋藤準備隊長によれば、前日の射撃で得られた諸元を分析して今日の射撃に臨んだところ、的の中心に命中する弾が多く、狙い通りに撃てたそうです。
この後は装薬の温度が上がってくるので、それを加味して少し引いて射つといった着意点があります。
「初めての射撃、さらに装填手は初の実弾の装填という隊員が多くて心配だったのですが、ここまで順調に撃てているので自信がついてきたようです。声もどんどん出るようになっていますね(齋藤準備隊長は隊員たちに「車内では絶叫しろ」と指導していました)」。
4日目は難易度がより上がり、戦車砲躍進射撃に挑みました。
躍進射は停止直後、速やかに射撃するというもの。停止してから改めてじっくり弾着点を確認するといった時間はないので、乗員たちにはさらに高い技術が求められることになります。
MCVは状況開始線進入後に射撃用意を実施。準備完了後、時速30㎞で躍進を開始します。
目標の付与後、車長の号令により目標に対して射撃。戦車砲躍進射撃でポイントになるのは軽快機敏な射撃指揮、そして目標捕捉や射弾の観察の要領などです。
そしてさらに難易度はアップし、今度は戦車砲行進射撃、つまり止まらずに射撃します。もちろんこれまでの射撃同様、隊員にとってもMCVという装備品にとっても初めての射撃です。
要領は躍進射撃と同じですが弾薬はTPに変更、時速20キロで行進しつつ、目標が付与されると車長の号令に基づき行進射撃を実施します。操縦手は行進射撃間に一定の速度維持が、装填手には行進間堅確な安全姿勢ができているかなどが求められます。
とても数日前に初めての射撃をしたとは思えないほど高い精度で標的に命中させ、のびのびと機動力を発揮するMCVは、はたから見ていても頼もしく感じます。
今回、上富良野演習場に来ているのはMCV中隊準備隊だけではありません。
対人狙撃銃や手りゅう弾の投擲、中隊練成なども行なわれていましたが掲載誌面の都合上すべてを記載することはできなかったので、次週はその中のいくつかをピックアップしてご紹介します。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)5月2日配信)