自衛隊とその他のUAV(6)

グローバルホークの話の続きです。
日本は2018年にグローバルホークのブロック30を3機導入(地上管制装置2基を含む)する契約を締結しました。そのわずか2年後に「グローバルホークの維持費高騰を理由に、調達中止も視野に再検討を行なっている」というニュースが流れました。
しかし2021年3月には三沢基地にグローバルホークのための臨時偵察航空隊が新編されました。
その後のニュースとしては、2021年4月にグローバルホークを開発したノースロップ・グラマンが、空自向けグローバルホークの初飛行に成功。
さらに同年6月には日本向けの2機目のグローバルホークの飛行も成功させました。いずれの機体にも被視認性を下げるロービジ塗装の日の丸が施されていました。
こうなると、さすがに今から「調達はキャンセル」はないと思われ、予定通り導入、三沢基地に配備されるのでしょう。
しかし今年7月、米空軍は2022会計年度の予算案で、20機保有するブロック30の全機を退役させる方針を示しました。2021年度に同じ方針を示した際は議会に拒否され見送られましたが、今度こそ現実となれば、ブロック30は日本と韓国の7機のみとなってしまいます。
防衛省は今後20年間、毎年120億円超の予算をかけて運用する計画ですが、さらなるコスト増が懸念されます。
そして予算以上の懸念事項といえるのが、米空軍での退役の理由が「競争の激しい緊迫した状況で運用できる能力がない」と、機体の旧式化にあることです。空軍幹部は公聴会で「われわれが直面している中国の脅威に対応できる設計になっていない」と証言しています。
日本でも、対空兵器、電磁波を使った妨害の能力を高めている中国に対し、ブロック30は他国から妨害を受けるような状況での運用が想定されておらず、「台湾海峡の有事でも使えない」と指摘する声があります。しかも非武装ですから、攻撃されればなすすべもなく撃墜されてしまうでしょう。
米国が退役させるグローバルホークのブロック30を、来年度以降に運用を始める日本。その役目をどこまで果たせるのか、単なる「金喰い虫」になってしまうのか、今後の動向にも注目です。
さて、空自のUAVについて、もうひとつご紹介したいことがあります。
防衛省は2021年8月、F2戦闘機の後継となる次期戦闘機を支援する無人機を開発する方針を固めました。2022年度予算概算要求に関連経費を盛り込み、人工知能(AI)による無人機の自律飛行技術の実現を検討、次期戦闘機と同様に2035年ごろの運用開始を目指します。
支援のための運用方法としては、次期戦闘機と離れた空域を飛行しながら敵戦闘機・ミサイルの早期探知、ミサイル発射、電子攻撃などを行なうほか、敵ミサイルの「おとり」となることなどが想定されます。撃墜されても人的損傷がないので、危険な空域を飛ばすこともできます。
パイロットと連携してミッションを遂行するUAV、1日も早く実現されることを願います。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)12月23日配信)