自衛太鼓@音楽まつり(4)

さあ、いよいよ音楽まつりのスタートです。
オープニングセレモニーで登場する第302保安警務中隊の「完璧な動き」に会場が感嘆の声でどよめくのは、もはや音楽まつりの風物詩。
この年のゲスト、在日米陸軍軍楽隊と大韓民国空軍軍楽隊は、それぞれのお国柄がよく表れた演奏で客席を盛り上げました。防衛大学校儀仗隊のファンシードリルは、自衛太鼓に並ぶ人気プログラムです。
陸・海・空各自衛隊セントラルバンドの演奏が終わると、いよいよお待ちかね、自衛太鼓の登場です。
人気のない暗いステージに響く無数の足音。太鼓を担いだ隊員たちが所定の場所に向かっているのです。
隙間なく人と太鼓で埋まる空間。ぱっと明かりが着いた瞬間、客席の期待はMAXに高まります。音を出す前から迫力が伝わってくるのです。
はじめに山城曹長が作曲した「風林火山」を全員で演奏します。
太鼓の音が重なるほどその響きは重みと深みを増し、一糸乱れぬばちさばきが会場に凛とした空気を醸し出します。
合間を置かず、チームごとの単独演奏がメドレーのように続きます。
20秒に凝縮された各チームの熱い思いが伝わるのでしょう、観客の目は例外なくステージに釘付けです。そして再び合同演奏。
会場は太鼓の音で満たされ、その音色は空気を揺らし、震わせ、観客の体に直接響きます。
指揮者がいないのに一切乱れることのないリズム、クライマックスに向けてどんどん上がるボリューム。そして客席のボルテージも最高潮に達したとき、最後の一音が響き渡ります。
一瞬の静寂も置かず会場を包み込むのは、太鼓の音に負けず劣らず盛大な歓声と拍手喝采です。
話すことを忘れていた観客たちも、ここでようやく隣の人と興奮を共有し、感動を分かち合うのです。
退場しはじめている隊員たちには拍手しか聞こえないかもしれませんが、客席のあちこちから「いいぞー!」「すごいぞー!」というかけ声が飛び交っています。
今年は演奏後、すぐにグランドフィナーレの準備に取りかからなければいけなかったので、隊員たちは例年に増して大変だったはずです。それでもあの万雷の拍手を浴び、苦労も報われたのではないでしょうか。
2日間の日程を終え、山城曹長もようやく肩の荷が下りました。
「初めてのトリでしたがやり遂げることができてほっとしました。最後の回の公演が終わった後、感極まって泣きながら太鼓を撤収している隊員も結構いたんです。彼らもずっと頑張ってきて、ようやく安ど感や達成感がこみ上げたんでしょう。今回の自衛太鼓も成功でした」
そんな山城曹長の頭の中には、すでに来年はどんなステージにしようかというイメージが膨らみ始めているそうです。
音楽まつりの象徴ともいえる自衛太鼓、来年はどんなチームが参加し、どんな演奏を披露してくれるのでしょう。今回の感動が覚めやまぬうちから楽しみです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)8月10日配信)