第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(11)

今週はMCV中隊以外の部隊の訓練の様子をご紹介します。
本部管理中隊作業施設小隊は各種爆破訓練を実施しました。
そのうちのひとつ、指向性爆破薬容器は、円筒形指向性爆破容器が3種類、直線刑指向性爆破容器が2種類、Ⅴ形成形爆破線(Ⅴコード)が用意されていました。
円筒形は真下に穴を開ける、直線形やVコードは真っ2つに割る、切るといった用途に使われます。爆破が広がってしまうTNTに対して、一定の方向にのみ爆発力を発揮するのが指向性爆破薬の特色です。
安全教育を実施後、爆破薬設置から起爆までの一連の動作の予行を行なってから点火準備をします。隊員は退避壕に退避し、退避が完了後、警告音(サイレン)を発して人員点呼を行ないます。
電気雷管による爆破の際、爆破指揮官は全般の安全を確認した後、爆破手が点火。
爆破終了後、爆破指揮官および安全係幹部とともに爆点に前進させ完全に爆破していることを確認します。扱っているのが爆破物だけに、上富良野演習場内で訓練している3連隊の中でも突出して安全管理が徹底しています。
ちなみに不発だった場合だが、退避時間経過後の対処が不能だった場合、不発弾処理班が対応するそうです。
普通科中隊では今年度5回目となるARM´S集合訓練が行なわれていました。この訓練には山﨑連隊長の強い思い入れがあります。
「すべては銃への意識を高めるためです。銃口管理、安全管理、そういった当たり前のことをこれまで以上にしっかりできるようにすべく、今年度から夜間射撃を始めました。夜間にできることは昼間もできますから。ただ、夜間射撃は昼間以上に危険ですから、その訓練に至るまでにクリアしなければならないことがいろいろあります。ですからそこの練度判定を作り直し、検定の基準も自分たちで作りました」
中級練度判定では3名(うちひとりが組長)が組長の指揮のもと、前方に人がいるときの銃操作、組長の指揮能力、そして各地形に合わせた状況判断能力を訓練します。
弾込めについては各組計画で実施し、常に火力を先制し続けながら敵に向かって前進していきます。
敵と我の勢力は同じという想定で、状況開始したら組長の指示のもと攻撃、危なくなったら(敵は待ち受けの防御という設定なので、同数では不利)離脱して同じ場所まで戻るのが一連の流れになります。
隊員が弾倉交換する様子を見ていると、無駄な動きがなく大きな音も立たず、あっという間に終えてしまいました。銃口管理もしっかりできています。おそらく目を閉じていても同じようにできるのだろうと思わせる、流れるような動きでした。
翌日の組射撃・至近距離射撃はボックス射撃と呼ばれるもので、隊員は時計回り、または反時計回りに歩きつつ、笛の合図に合わせていちばん左の点検射、残り3つの敵(的)に対して射撃します。
歩きながら撃つ、弾倉交換するというのはシンプルですが技術がいるもので、この訓練に参加するには必要な検定に合格している必要があります。そしてこれをまったく同じ訓練を夜間にも行なうのです。
冷戦時代に朔北部隊としてソ連に最初に対峙する部隊として最強の名をほしいままにした3連隊が、今もなおほかの部隊からも「強い」と言われる、その理由はこういうところにあるのでしょう。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)6月9日配信)