防衛大学校(5)

今週、来週の2週にわたって防大の年間行事についてご紹介します。
防大生は実に多忙です。起床から就寝まで毎日が分刻みのスケジュール、やっと休日だと思えば校友会の合宿やら競技会に備えた練習やらで、のんびり休む暇もありません。
この究極の団体生活、つらいことばかりなのか、あるいは熱く燃えるイベントもあるのでしょうか?
<春>
4月
●着校日(1年)
いよいよ新入生が防大での新生活をスタートさせる日。しかし昨日まで暮らしていた日常とあまりに異なる世界に、戸惑いと緊張はつのるばかり。初日からすでにいっぱいいっぱいの1年をサポートしてくれるのが、2年の「対番」です。散髪屋にも連れて行かれ、ロン毛も茶髪もすべて「黒髪の端正な髪型」へ。
入校式までの数日間で激烈なカルチャーショックを受け、「やっぱり防大に入るの辞めようか…」と思い悩む1年を説得するのは、4年の部屋長の役目。かなりの説得力らしいです。
※対番 1年に防大で生活していく上でのあらゆるすべてを教える役(アイロンがけや洗濯など)。1年と対番とは兄弟のごとく深い絆で結ばれ、その付き合いは一生続きます
※部屋長 対番同様、1年にとって数少ない味方の上級生。部屋から一歩外に出れば、他の部屋の上級生から嵐のような指導が……
●入校式(1年)
宣誓書を書き、今日から正式に防大1年生。代々受け継がれている慣習で、洗面用具など必要最低限の生活用品は対番が買ってあげます。いよいよ本格的に団体生活がスタート、もうお客さんではありません。
●生活に慣れる(1年)
★清掃
1年は公共場所(廊下、洗濯室など)の清掃担当。清掃場所は定期的に変わるので、清掃の順序や雑巾のかけ方など、驚くほど細かく記入された申し送りノートを作り、次の人が円滑に清掃できるようにしています。清掃は当然ながら上級生が指導。
★身だしなみ
制服にはプレス(アイロンがけ)をし、常に身だしなみには気をつけるのが防大生。自衛隊同様、身なりの乱れには非常に厳しくうるさいのです。週に1回、4年による容儀点検が行なわれます。制服にしわがないか、ハンカチは持っているか、靴はピカピカに磨かれているか、などなど。すべてが完璧になるまで、何度でも何度でも再点検を受けます。
●校友会見学(1年)
学生全員が運動部に加入することになっており、勧誘する側もさまざまな知恵を絞って1人でも多くの1年を入部させようとします。1年生が部屋に戻ったところ、自分の机の上にアメフトのボールとアメフト雑誌が積まれていた、という話も。触ったら最後らしいです。
※校友会 いわゆるクラブ活動
●最初の外出点検(1年)
入校してから初めて外出する際には、上級生による容儀点検が実施されます。そのチェックの細かさは姑などの比ではありません。身分証は持っているか、身分証の脱落防止の処置がなされているか、制服はきちんとプレスされているか、帽子の校章などはピカピカか、靴はきれいに磨かれているか、靴下は適切な色か……朝8時くらいから実施されて不備事項があれば再点検、場合によってはなんと昼までかかります。しかも、ひとりでもOKにならないと、ほかの1年も外出を許可されません。上級生は1分でも長く足止めしようとするという、いわばお約束の恒例行事です。けれど外出許可が出れば4年が引率し、おいしいものを食べさせてくれるのです。当然4年生のおごり(ちなみに給与は全学年同じ)。
※防大の外出制度 外出できるのは全学年とも土・日・祝日のみ。1年はどこに行くのも制服着用。2年以降は、防大から1歩出れば私服OK。制服でいる間は行動にさまざまな制限があります。たとえばマンガの立ち読みや缶ジュースの立ち飲みの禁止、電車では座ってはいけない、チラシやティッシュをもらってはいけない、歩きながら携帯電話を使ってはいけない、ポケットに手を入れて歩いてはいけない、ゲームセンターに入ってはいけない、彼女と手をつないで歩いてはダメ、などなど。外泊は1年では不可、2年は年間11回、3年は16回、4年は21回まで可となっていいます
●カッター競技会(2年)
中隊の名誉を賭けて戦う競技会で、1年から2年に進級する際の通過儀礼。この時期の2年は、カッターの訓練だけでなく対番として1年の指導もしなければならず、心身ともに非常に苦しい時期。その分仲間との団結は強まり、助け合うこと、励まし合うことの大切さを、身をもって学びます。この競技会が終わるとようやく上級生から2年として認められ、ひとつの試練をクリアしたことになます。
※カッター 複数の人員がオールでこぐボート。救命、訓練、上陸などに用います
次週は夏~冬の年間行事をご紹介します。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)9月21日配信)