「ひゅうが」型護衛艦運用史(4)

「ひゅうが」は今年9月23~24日に仙台港で一般公開&特別公開を実施後、25日には早々に出航。そして今月9~10日に米韓海軍と韓国南部、済州島南東の公海上で、北朝鮮による核兵器など大量破壊兵器
の海上輸送を阻止することを想定した共同訓練や海賊対処訓練を行ないました。

日米韓の海上阻止訓練は2016年以来、約7年ぶりのことで、今年6月の防衛相会談や8月の首脳会談で共同訓練の定例化に合意、今回の訓練が実現しました。
米海軍からは原子力空母ロナルド・レーガンも参加、8日にはレーガン艦内で3カ国の海上指揮官会議も開催されています。

ここからは「いせ」の運用史をご紹介します。
「いせ」は「ひゅうが」型護衛艦の2番艦として2011年3月16日日に就航し、第4護衛隊群第4護衛隊に編入、呉に配備されました。

最初に従事した大きな災害派遣は「サンカイ(現地語で友達の意)作戦」です。
2013年11月に発生した台風30号により壊滅的な被害を受けた被災地救援のため、国際緊急援助隊としては過去最大規模の1180人を動員して「フィリピン国際緊急援助統合任務部隊」を編成。22日に「いせ」、輸送艦「おおすみ」、補給艦「とわだ」がレイテ島近海に到着し、すぐさま救援活動に入りました。
「いせ」と「おおすみ」に艦載した陸自のCH-473機とUH-13機は救援物資や人員などを輸送、12月20日に帰国しました。

2014年6月には「リムパック2014」に初参加。
同訓練には初参加の中国とブルネイをはじめ過去最大の22カ国が集結し、自衛隊からは「いせ」以外に陸自の西方普通科連隊が米海兵隊との水陸両用訓練に初参加しました。
「いせ」は米太平洋艦隊司令部の所在するパールハーバーを拠点に訓練を実施。イージス艦「きりしま」との乗員合わせて約45人は、海賊対処任務などで不審船舶などに遭遇した場合に実施される立ち入り検査(VBSS)訓練も受けました。
その後、「いせ」は多国間のHA/DR訓練に合流。「ハリケーン襲来で深刻な被害を受けた仮想国から災害派遣要請を受けた」という想定で、前半は机上演習、後半はヘリを使った救難物資や患者輸送、指揮所活動、艦上での医療活動などの実動演習が行なった後、8月21日に帰港しました。

2016年4月12日にはインドネシア海軍国際観艦式に参加。その後16日までパダン周辺海空域で実施されるインドネシア海軍主催多国間共同訓練「コモド2016」に参加、さらに17~19日はパダンからボルネオ島西部海空域において日米豪共同海外巡航訓練を実施しました。26日に米軍が拠点とするフィリピンのスービック港に寄港後は、29日までフィリピン軍と通信訓練を実施し、さらに5月12日まではADMMプラス海洋安全保障EWG(専門家会合)の共同議長国であるブルネイにおいて開催された共同演習に参加し、その際にはブルネイ国王による「いせ」視察も行なわれました。
ちなみにADMMプラスとはASEAN国防相会議+わが国を含むASEAN域外国8か国(豪、中国、印、日本、NZ、韓国、露、米国)の意です。
この怒涛の海外での訓練の最中、日本では熊本地震が発生。自国の災害派遣に駆け付けられないジレンマがあったことは想像に難くありませんし、地元が熊本の隊員もおそらくいたことでしょう。それでも目まぐるしく変わる相手国との共同訓練に集中する当時の隊員の心中を思うと胸が痛みます。