第25戦闘団冬季訓練検閲(4)

CP(指揮所)を訪問中、ちょうど戦闘機1機飛来の
アナウンスが入りました。
「赤警報発令!」
先ほど見たケミカル弾による航空攻撃を行う戦闘機役
のOH-6Dが飛来したようです。
赤警報は発令されるとそれから5分以内に敵機が来る
という対空警報で、発動されると車両の走行も人間の
移動も禁じられます。
周辺の車両がクラクションを3回鳴らし、赤警報が発令
されたことを周囲に知らせています。隊員達が姿を隠す
ためCPに入ってきたので、CPの人口密度が一時的に
高くなりました。
CPはまだ構築段階にあるため、仮CPも設置されています。
仮CPでは、白いバラクーダで偽装された空間に戦闘団
長や最先任の机が置かれ、その奥にはずらりとモニタが
並んでいます。電話機の代わりに何台も置かれているの
はパソコンです。
普通、CPには作戦図や状況図、その他さまざまな情報が
載った紙が壁一面にところ狭しと貼られていますが、2師団
の場合、それらの情報はすべて情報通信ネットワークで構
築されているため、情報を壁に貼り共有するという光景は、
ここには存在しません。
また、これまでの検閲では、すべての情報を音声のみで
やりとりしていました。その音声情報をもとに地図で検討
するという方法では、当然ながらタイムラグも発生します。
それがC4ISR装備で先進化されたこの部隊では、音声の
数十倍の情報量をもって彼我の態勢を掌握できるようにな
りました。これは迅速かつ継続的な認識の共有が可能と
なり、各部隊が作戦指揮官と同じ認識を持って戦えるとい
うことでもあります。
今では敵や地雷原を発見してその位置を伝えれば、
ReCS(基幹連隊指揮統制システム) によりCPの画面に
すぐさまそれが反映され、戦闘団全員で情報を共有でき
ます。しかもその情報はFCCS(火力戦闘指揮統制シス
テム)、ADCCS(対空戦闘指揮統制システム)といった火
力とも連接できるので、敵情報が上がったら最適な火力を
迅速にそこへ向けることが可能です。
このように2師団全体がネットワーク環境でつながっている
ため、C4ISR装備が導入されてから戦闘効率は飛躍的に
向上しました。とりわけ情報を得てから決心して部隊が行
動するまでの時間が大幅に短縮されることとなりました。
さて、ケミカル弾による航空攻撃が行わるということで赤警
報が発令されていましたが、その後0830に砲弾落下、化学
兵器が使用されたという情報が仮CPに伝わりました。
「旭野地区で化学攻撃を受けた」という報告を受け、戦闘
団長は化学兵器がどこまで拡散するか風向きから判断し、
マスクと防護衣を装備するよう指示、阻止命令を下達します。
次回は演習場内に展開している部隊や装備品についてご紹介します。
(わたなべ・ようこ)
(平成26年(西暦2014年) 12月4日配信)