海上自衛隊東京音楽隊(1)

今週から「丸」4月号に掲載された海上自衛隊東京音楽隊の記事に加筆してお送りします。この記事は2016年4月に入隊した新人音楽隊員3名をクローズアップしつつ、東京音楽隊を紹介したものとなっています。
東京音楽隊に配属されて間もない3人の新人音楽隊員は、音楽隊員になりたいという強い意志を抱き、高い倍率をその演奏技術で勝ち抜き、見事に狭き門を突破したルーキーたちです。
入隊後は射撃やほふく前進も経験したつらい教育隊期間を経て、ついに彼らの実力をフルに発揮できる場所にたどり着きました。しかもそこは海上自衛隊の音楽隊の中でも特別な存在であるセントラルバンド、東京音楽隊です。
日本武道館で行われた自衛隊音楽まつりという大舞台を終えて一息つく間もなく待ち構えていたのは、1年の集大成ともいえる定例演奏会。そんな時期に3人に密着取材、東京音楽隊での日々に迫った記事です。
まずは東京音楽隊のご紹介です。
海上自衛隊には横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊という5つの地方隊ごとに、それぞれの地方総監の直轄部隊として音楽隊が置かれています。そして防衛大臣直轄部隊のセントラルバンドが上用賀基地に所在する東京音楽隊です。
東京音楽隊は海上保安庁音楽隊を前身とし、1952年に海上警備隊音楽隊として発足。何度かの名称変更を経て、1956年に現在の名称となりました。陸、空のセントラルバンドに先駆けてヴォーカリストとピアニストを初めて採用、芸大出身のピアニスト、太田紗和子2等海曹と日芸出身のヴォーカリスト、三宅由佳莉3等海曹の活躍でも知られています。
海上自衛隊を代表する防衛大臣直轄の音楽隊として「隊員の士気高揚のための演奏」、「儀式、式典における演奏」、「広報演奏」を任務とし、日本国内にとどまらず、幅広い演奏活動を行なっています。
これまでに今上天皇陛下即位の礼、皇太子殿下ご成婚パレードをはじめ、オリンピック、世界陸上競技会、万国博覧会等の国家的な行事に参加。海外ではロシア海軍300周年記念行事(1996年)、大韓民国国際観艦式世界音楽祭(1998年)、ノルウェー・ミリタリー・タトゥー2014、バーゼル・タトゥー2016(スイス)等に招待され参加。さらに海上自衛隊が毎年実施している遠洋練習航海に隊員を派出、世界各地で音楽を通じての国際親善に貢献しています。
国内では定期・定例演奏会をはじめ、全国各地でのコンサート、世界吹奏楽大会、日本吹奏楽指導者クリニック、21世紀の吹奏楽“響宴”等への出演に加え、CD録音にも積極的に取り組んでいます。
2013年にリリースされた『祈り~未来への歌声』は第55回日本レコード大賞企画賞、第28回日本ゴールドディスク大賞クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー、第6回CDショップ大賞クラシック賞を受賞しました。
なお、東京音楽隊は術科学校に相当する部隊でもあるため教育科があり、上用賀基地には東京音楽隊所属の隊員だけでなく、全国の音楽隊からやってきた入校中の隊員もいます。
自衛隊の音楽隊員になるためには、通常の自衛官採用試験だけでなく、楽器の実技試験にも合格する必要があります。
音楽を職業とできること、特別国家公務員としての安定した収入、ほかの団体では経験できないようなシーンでも演奏できるなど、演奏者にとって自衛隊の音楽隊は大きな魅力です。
実際、競争率は高く、現在はほとんどが音大出身者から採用されています。その狭き門を潜り抜け、東京音楽隊には2016年度、3人の新隊員が配属されました。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)5月11日配信)