【本の紹介】『能登半島沖不審船対処の記録 P-3C哨戒機機長が見た真実と残された課題』木村康張(著)
こんにちは、エンリケです。
平成11年(1999年)3月、戦後日本初の「海上警備
行動」が発令されました。
「能登半島沖不審船事件」
今日ご紹介する本は、
この件に関する、当時のわが国の危機管理行動の一
部始終を時系列で整理したデータブック、といって
差し支えない資料性の高い本です。
兆候探知から発見、海上保安庁、海上自衛隊の対処
と海上警備行動発令から終結まで……現場にいた著
者が、すべてを明らかにした内容です。
20年以上経たいま、海上自衛隊P-3C哨戒機機長とし
て事態に対処した著者が克明な記録に基づいてまと
めた迫真のドキュメントであり、内容に信頼がおけ
るのはもちろん、抑制の取れた留保性の高い記述内
容が、資料としての価値を一層高めています。
読者想定は自衛官および意思決定者、研究者であろ
うと推察されますが、われわれ一般読者にも「きち
んとした歴史認識」を得る素材としてたぐいまれな
価値を持つ内容と感じます。
海上保安庁、海上自衛隊、そして永田町・霞ヶ関・・・。
あの時、何が出来て、何が出来なかったのでしょう
か。
そして現場には、
それぞれの立場で与えられた「使命」を果たそうと
した男たちがいました。
<中央では国土交通大臣、防衛大臣や総理大臣は 「どこまで海上保安庁(警察)で対処し、如何なる 時点から自衛隊に行動命令を発令するか」という苦 悩の「決断」を迫られ、現場に所在する平時に権限 が付与されていない自衛隊の部隊指揮官は、目前で 行われる不法行為に対して何らの対処行動をとるこ とはできず、事態の緊迫化によっては苦悩して 「不法行為を抑制し、中止させるための手段を自ら がとるか否か」という独断専行の「決断」を迫られ ることとなる。>(P231)
<すべての配置における個々の責任の重さは、能登
半島沖不審船事案当時と変わらず、むしろ重くなっ
ているのではないであろうか。
二十年以上前に日本が経験した「中央」と「現場」
の苦悩は、未だ課題として残されている。>(P232)
このことばは、「自衛隊可哀そう」という感情レベ
ルで受け止めるものでは一ミリもありません。
むしろ、自衛隊や政治はきわめて窮屈な制約の中、
事態対処にあたって最高度の力を発揮していました。
問題は、この事案を通じても、必要な変化を必要な
だけ実行させていない日本の世論であり、それを醸
成する「空気」ではないでしょうか?
ここまで異常な制約下にあっても、最前線のわが自
衛隊、中央の政治は苦悩と苦闘のはざまで引き裂か
れそうにながら最高度の対処、決断を発揮していた。
そのことが、この本を読めばよく分かります。
初の海上警備行動発令を通じて
「我が国の危機管理体制」
の何が変わり何が変わっていないのか?
をこの本で明確に把握するきっかけにしてほしい。
戦後日本国民のほとんどすべてが
軍事ファンも国防を叫ぶ人たちも含め、
わが安保、わが国防、わが危機管理に
いったいなにが欠けているのか?
について、ピントのずれた勘違いをしている気がし
てなりません。
本著に書かれている内容は「過去の話」ではありま
せん。あの時の教訓からいまあなたは何を学ぶでし
ょうか?
『能登半島沖不審船対処の記録
P-3C哨戒機機長が見た真実と残された課題』
著者:木村康張
出版年月日:2021/12/10
判型・ページ数 :四六版248ページ
https://amzn.to/3p3i7Yz
◆目次
プロローグ
1.日本人拉致と不審船
2.緊迫する朝鮮半島情勢
第1章 兆候……発見
1.消えた工作母船と不審電波
2.不審船を探せ!
3.偽りの船名
4.不審船は北朝鮮工作船?
第2章 追 跡
1.巡視船、四六年ぶりの警告射撃
2.海上保安庁のみでは対応できない!
3.早くしないと逃げられてしまう……
4.目標が停止しました
第3章 海上警備行動の発令
1.行くときには俺が行く!
2.不審船に命中させてはならない
第4章 航空部隊による警告爆撃
1.一五〇㎏対潜爆弾を抱いて
2.不審船の注意を本機に引き付ける!
3.不審船捕獲の「漁網作戦」
4.北朝鮮戦闘機の飛来
第5章 海上警備行動の終結
1.虚脱と緊張の狭間で
2.終焉へ
3.凪いだ海
第6章 残された課題
1.議論は国会の場へ
2.解決された課題と残された課題
3.再び現れた北朝鮮工作船
エピローグ
1.緊張の海
2.軍事機能の認められない警察機関と警察権の
認められない自衛隊
3.多様化する任務と広域化する活動海域
今日ご紹介したのは
『能登半島沖不審船対処の記録
P-3C哨戒機機長が見た真実と残された課題』
著者:木村康張
出版年月日:2021/12/10
判型・ページ数 :四六版248ページ
https://amzn.to/3p3i7Yz
でした。
エンリケ
追伸
前家族会会長の飯塚繁雄さんの訃報に接しました。
この場を借りて改めて哀悼の誠を捧げます。
『能登半島沖不審船対処の記録
P-3C哨戒機機長が見た真実と残された課題』
著者:木村康張
出版年月日:2021/12/10
判型・ページ数 :四六版248ページ
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