上田篤盛さんの書籍一覧
上田篤盛さんについてあらためてご紹介します。
上田篤盛(うえだ・あつもり)
1960年広島県生まれ。株式会社ラック「ナショナルセキュリティ研究所」シニアコンサルタント。元防衛省情報分析官。
防衛大学校(国際関係論)卒業後、1984年に陸上自衛隊に入隊。87年に陸上自衛隊調査学校の語学課程に入校以降、情報関係職に従事。92年から95年にかけて在バングラデシュ日本国大使館において警備官として勤務し、危機管理、邦人安全対策などを担当。
帰国後、調査学校教官をへて戦略情報課程および総合情報課程を履修。その後、防衛省情報分析官および陸上自衛隊情報教官などとして勤務。2015年定年退官。現在、軍事アナリストとして活躍。
著書に『中国軍事用語事典(共著)』(蒼蒼社)、『戦略的インテリジェンス入門』『中国が仕掛けるインテリジェンス戦争』『中国戦略“悪”の教科書』『情報戦と女性スパイ』『情報分析官が見た陸軍中野学校』『インテリジェンス用語事典(共著)』(いずれも並木書房)』、『未来予測入門』(講談社)、『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル』(ワニブックス)など多数。
経歴を見てお分かりの通り、上田さんはプロの情報専門家(インテリジェンスオフィサー)です。
上田さん最大の特徴は、一般大衆や初心者向けにインテリジェンス啓蒙を行っている点です。
けっか、市井に暮らす一般人でも本格的な情報分析スキルや情報史、本格的な情勢分析を忌憚なく味わえ、自らを高める機会を得ることができています。上田さんのおかげといって差し支えないかもしれません。
私の持論ですが、発展する業界には、プロがアマを馬鹿にしない、アマがプロを軽視しない特徴がある気がしています。
インテリジェンスや軍事の世界は、他の業界と違ってこういう特徴がまだきちんと残っている実感です。その証左のひとつが上田さんという存在です。
そんな上田さんはこれまでどのような書を世に問われてきたのでしょうか?
単著デビュー以降を辿ってみようと思います。
●戦略的インテリジェンス入門─分析手法の手引き(2016/1)
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上田さんのインテリジェンス本処女作です。各方面でインテリジェンスの手引書として使われている定評ある基本書。
日本の周辺環境が厳しさを増すなか、国防の万全を期すためにはインテリジェンスの強化が欠かせない。そのためには情報分析官の能力向上が不可欠である。30年以上にわたり防衛省および陸上自衛隊で情報分析官などとして第一線で勤務した著者が、インテリジェンスの分析手法を具体的な事例をあげながらわかりやすく紹介。インテリジェンスの作成から諜報、カウンターインテリジェンス、秘密工作、諸外国の情報機関等々、情報分析の基礎知識を網羅。専門家だけでなく一般読者にとっても「インテリジェンス・リテラシー」向上の書として最適!
●中国が仕掛けるインテリジェンス戦争─国家戦略に基づく分析(2016/4)
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中国は伝統的に「戦わずして勝つ」ことを最善としている。直接的な対決を避け、インテリジェンスによって優位な態勢を築くというものである。中国情報機関は国際世論を巧みに誘導し、日本を含む敵対国家の反戦気運を醸成し、重要人物を意のままに操るなどの秘密工作を行なっている。日本が中国によるインテリジェンス戦争に飲み込まれないためには、中国悪玉論を振り回すだけでは解決しない。中国が仕掛けるインテリジェンス戦争を正々堂々と受け止める覚悟が必要である。情報分析のプロが中国の対日インテリジェンス戦の実像を戦略的思考により読み説く!
●中国戦略“悪”の教科書─兵法三十六計で読み解く対日工作(2016/10)
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2013年1月、中国軍艦が海自護衛艦に射撃用レーダーを照射した。日本側の抗議に対して、中国の報道官は「照射したのは監視用レーダーで、日本側の『無中生有』だ」と開き直った。「無中生有」とは「無から有を生じる」「でっち上げ」の意味で、これは『兵法三十六計』の第七計にあたる。このように中国は今も日常的に「兵法」を用いている。欧米の情報機関も「中国指導者が兵法を現代の戦略・作戦に採り入れている」として研究しているほどだ。中国の攻勢から日本を守るには、中国の伝統的な思考形態となっている兵法を理解することが欠かせない。防衛省情報分析官として長く中国軍事を研究した著者が『兵法三十六計』の現代的意味をインテリジェンスの視点から読み解く。中国の戦略が手に取るようにわかり、次の狙いがみえてくる!
●情報戦と女性スパイーインテリジェンス秘史(2018/4)
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インテリジェンスの戦いには平時も有事もなく、水面下では血で血を洗うスパイ合戦がいまも繰り広げられている。2018年3月にはイギリス南西部に住むロシアの元スパイと娘が何者かに毒殺されかけた。情報戦は男性だけの世界ではない。女性でなくてはやれないこと、女性であることを利用すれば有利なこともある。時には要人暗殺に従事した女性スパイもいる。
ナチス・ゲシュタポによる厳しい拷問で口を割る男性スパイが続出するなか、最後まで秘密を守り、殉職した女性スパイも大勢いた。さらに米国では初のCIA女性長官が誕生した。第1次世界大戦から冷戦期に至る重大スパイ事件と、それに関わった女性スパイたちの活躍に迫る。
スパイ人名録、情報機関の実態、スパイ用語、スパイ教訓集、情報戦史年表なども網羅したスパイ事典!
●武器になる情報分析力(2019/6)
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一般報道などを通じて得た情報を、いかに分析し、いかにインテリジェンスづくりにつなげるか?の手順をていねいに紹介した、まさに「プロの手ほどきになる情報分析マニュアル」といえる書。
巷にあふれる「インテリジェンス本」は、著者のインテリジェンススキルから得た成果を公開しているものがほとんどだがこの本は、「インテリジェンスを紡ぎ出すために不可欠な情報分析の手法を、あなたが身につけ、成果を出すこと」を目的としたマニュアルとなっている。
実践にあたって躓きがちなポイントをクリアするコツ、他では決してお目にかかれない「現実に行われた情報分析セミナーの仮想体験」も味わえる、一味違うマニュアルといってよい。ほかの本とどこが違うかと聞かれたら、この点を挙げるだろう。
有機的(現実感ある話なので内容を吸収しやすい)かつわかりやすい。だから身に付く、という読後感。まさに「情報分析能力というインテリジェンス・リテラシー」を、あなたの中に築き上げるために作られた書といえる。
●未来予測入門(2019/6)
https://amzn.to/3e86Svt
講談社現代新書に収録された上田さんの記念碑的作品。神をも恐れぬ所業と言って差し支えない「未来予測」。その実務に散り組んできたプロ中のプロが明らかにする「未来分析の手法」とは? 処女作以来、一貫して情報分析スキルの啓蒙にまい進してきた著者のエキスが一冊に詰まった感を覚える。具体的で使える内容ばかり。何より、ポケットサイズの新書でこれだけの内容が手に入ることに衝撃を覚える。上田ファンなら欠かせない作品。
●情報分析官が見た陸軍中野学校(2021/5)
https://amzn.to/3MawmEU
1.秘密戦とは何か?
1.陸軍中野学校で行われた教育とはどういうものだったか?
1.陸軍中野学校出身者は何をしたのか?
1.中野学校とは何だったのか?
の4つの柱からなる「陸軍中野学校が正確にわかる本」。
最大の価値は、これまで伝えられてきた陸軍中野学校への誤解を解き、その実像と評価に触れられる点。この本を読めば、陸軍中野学校に対する誤ったイメージ、ずれた感覚が修正され、今のわが国、わが情報戦に活かせる中野の資産は何か?に目を向けられ、意義ある実践につなげられることだろう。
●インテリジェンス用語事典(2022/1)
https://amzn.to/3SSKhSs
この本は、上田さんの単著ではないが、メルマガではおなじみの方々と一緒に編著者となった日本情報史上からみても画期的な作品。その意味から紹介することにした。
インテリジェンスの世界にはすでに「意義と価値ある基本書」は存在するが権威と価値がある用語集はなかった。すなわち「インテリジェンスを語る「ことば」はなかった」といって過言ではない状況にあった。そんなときできたのがこの事典。
ニード・トゥ・ノウからニード・トゥ・シェアに移っているインテリジェンスの世界。そんななか専門家たちが結集して4年にわたる月日を費やし紡ぎあげたのがインテリジェンスの基礎知識を網羅した「用語事典」。監修者は川上高司先生。執筆者は樋口敬祐さん(元情報本部情報分析官)、上田さん、ハイブリッド戦争研究で高名な志田淳二郎先生の3名。
今後の「わが情報」に本著がもたらす価値は計り知れない。インテリジェンスを考え理解し把握する「ことば」の知的土台をこの事典で培え、鍛えることができるからだ。この事典がわがインテリジェンスの飛躍的一歩になることは間違いないだろう。
大学受験科目の1つに「情報」が入る今後、この事典は受験生たちが手に取り目を通すレファ本になることも間違いない。その意味からも画期的。
歴史に残ろ記念碑的傑作と断言して差し支えない。
●超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル-仕事で使える5つの極秘技術(2022/9)
https://amzn.to/3rSkput
これまでの上田さんの本の中で、「いちばんビジネス書」と言って差し支えない。プロのインテリジェンススキルがここまでブレイクダウンされた!と感動すら覚える一冊。
中途半端な評論家やトップ営業マンの教えより、プロのインテリジェンスオフィサーが実地体験から得た「血が滴るように生々しいインテリジェンス現場の知恵」を学び身につけて、目の前の現実に活かして手応えある生涯を送り、自らを各分野のインテリジェンス発信源にする。それができるのがこの本。
「情報員が持つ使えるスキル」を網羅した内容は、軽重瑣末を識別する力が何より大切、努力や頑張りは何も生みださない、と考えている私にとり、手ごたえある形で現実と接することができる精神的な拠点であり、他に得難いきわめて心強い内容をもつ本。
専門分野のスキルを、普遍的に社会で使えるスキルに翻訳することは専門分野への好意と理解を深め、一般人と専門人の距離を縮める。軍事防衛分野でのこういう取り組みを、これからもっと広く深く展開してほしい。上田さんの変わらぬ取組みと版元さんのご努力に深く敬意を表する。
●武器になる状況判断力─米軍式意思決定法とOODA(ウーダ)を併用する(2022/10)
https://amzn.to/3rHDcIQ
「状況判断」と「意思決定」はほぼ同義。米軍式意思決定手法をいかに現実に落とし込み活用するか?のコツとヒントに満ち溢れた一冊。
本著には、他では得られないオリジナルな価値が3つあります。
1.「第4章 状況判断力を高めるマネジメント」
<個人が「状況判断でなぜ逡巡するのか。なぜ決断ができないか」は、「判断すべきことや決断すべきこと」を理解できていないからだ。すなわち、「何が重要であるか、何が緊急であるか」がわかっていないのである>(P110)
ということばで表現される「目的と目標の死活的重要性」は、軍や国家のみならず個人でも同じです。
この章のテーマは「目的と目標」ですが、これ以上ないほど明快な解説があふれています。
意思決定や情報分析、情報収集は何のためにやるのか?インテリジェンスを何のために生成するのか?を確立させることが何より大事ということです。
この章で、旧軍のはなしや企業組織やリーダーの意思決定の在りよう、戦史を具体的に考察しているのは、一般人も国家指導者も軍人も情報官も、「目的と目標」の取り違えや見誤りが最大の失敗要因であ
り、区々たる知識や実践の積み重ねよりも、大根幹となる「目的と目標」の把握が何より大事、ということを骨髄に沁みとおるまでわがものにしておかねばならない、と伝えたいからでしょう。
2.「コラム」
この本にはつぎのとおり10個のコラムが章と章の間に挟まれています。
コラム(1)スターリンを動かしたゾルゲの情勢判断 16
コラム(2)徳川家康による相対的戦闘力の算定 39
コラム(3)計画に適合するよう状況を作れ──パットン将軍 52
コラム(4)ロスチャイルドが示した「情報は力な」97
コラム(5)織田信長の状況判断と行動の一体化 102
コラム(6)豊臣秀吉の天下統一は正しい目的と目標の設定にあった 113
コラム(7)ミッドウェー作戦の〝失敗の本質〟118
コラム(8)陸軍省戦争経済研究班(秋丸機関)のバイアスと忖度 156
コラム(9)堀少佐は妥当性の尺度で米軍の行動を正しく予測した 163
コラム(10)総力戦研究所の対抗シミュレーションは日本の敗戦を予測した 170
一コラムは数ページの長さですが、ツボを押さえた簡潔さだけでなくく、これまで見落としていた重要な歴史情報をさらっと伝えてくれたりもしています。
私はこの本で初めて知り、あらためてあの人の偉大さを新たに覚えたことがあります。ぜひ探してみてください。
3.「コツ」
もしかしたらこれが一番大きな価値かもしれません。
この種の意思決定システム解説書は、過去に何度もいろいろな方が出されています。あなたもそう思っているかもしれません。
なぜそれらの書を自らの人生、仕事、組織にうまく活かせられなかったのか?
理由は簡単です。「上手に現実に活かすコツ」がわからなかったからです。
しかしご安心ください。この本には米軍式意思決定法を国家戦略意思決定やビジネス、個人の人生にうまく生かすコツ、勘所を軍事、戦史、ビジネス、国家戦略に関する各種話題を縦横に駆使して伝えてくれます。
意思決定法の解説の章(第2章)以外はすべて、わかりやすくて軍事ファン、インテリジェンスファンにはよだれが出るような内容の注釈で満載です。
むかしある方からこんな教えをいただきました。
<抽象的な軍事ドクトリンを腑に落ちるまで理解するには、具体的な戦例等とセットでないと、行間を読むことはできなかろうと思います。 行間を具体例で解説し、血を通わせる必要があります。>
本著はまさにこのことばを応用した具現化と言えます。
それともう一つ気づいたことがあります。
米軍式意思決定法の核心を深く理解するための注釈を読む中で見えてくるのは、このシステムの核心を活用することでわが人生、我が家、わが社、我が国の明るい未来につながる「人間、組織、国家再生のロードマップ」だということです。
番外.おまけとして最後に置かれている「実践編」
ウクライナ侵攻にともなう「わがサハリンプロジェクト」の動向をンテリジェンス的に分析した内容です。
インテリジェンス訓練問題の模範解答として稀少な存在と言えます。この種の問題をたくさんまとめて「インテリジェンス特選問題集」のようなものができればいいな、と強く感じました。。
いかがでしょうか?