【本の紹介】『ミニミ軽機関銃─最強の分隊支援火器』クリス・マクナブ著 床井雅美監訳 加藤 喬訳

おはようございます、エンリケです。

本著は、軍事・戦史研究分野で定評ある米・オス
プレイ社が発行している「ウェポン」シリーズの一
冊で、著者のクリス・マクナブさんは、戦史と軍事
技術分野でたくさんの出版物を出している方です。

このたび監訳者に床井雅美さん、訳者に加藤喬さん
を迎えて邦訳されました。

この本を読むと、イラクやアフガニスタンでの実戦
体験と戦場写真を通じ、ミニミ/M249分隊支援火器
がいかに戦場で活躍したかが明らかになります。

それだけではありません。
設計開発の歴史を辿るなかで、40年以上にわたって
世界の軍隊で使用されてきた「理由」に迫ることも
できるのです!

コンパクトなM246分隊支援火器の歴史付きトリセツ
という印象を持ちました。

著者はもちろん、内容を的確に把握して国語に翻訳
できる監訳者と訳者が揃っているので、安心して使
えるミニミの知識が日本語で手に入ります!

『ミニミ軽機関銃─最強の分隊支援火器』
クリス・マクナブ著
床井雅美監訳
加藤 喬訳
https://amzn.to/3DTWA8N
四六判192ページ(オールカラー)
定価1800円+税
発行日 :2020.7
発行:並木書房

◆ミニミ軽機関銃とは?

1974年、有名なベルギーの武器製造会社FNは、革
新的な新型軽機関銃「ミニミ」を発表しました。

以来、ミニミは自衛隊も含め、世界75か国以上で採
用されている。5.56mm高速弾を使用するミニミの発
射速度は最大1150発/分に達し、分隊レベルの火力
支援に最適な小火器です。

◆なぜミニミか?

米軍がミニミを採用した大きな理由として、朝鮮戦
争後に分隊支援火器「BAR」を廃止したことでベトナ
ム戦争でベトコン保有のRPD分隊支援機関銃やRPK分
隊支援火器に苦しめられた経験があります。

この本が書かれた時点で、ミニミ分隊支援火器はす
でに40年の歴史をもっています。

◆批判と配備代えの流れ

この分隊支援火器は、最前線でつねに厳しい試練に
さらされ大きな実績を上げてきた兵器ですが、5.56
mm弾の威力不足、整備の複雑さなどで批判も多く問
題があったことも事実ですが、評価が大きく損なわ
れることはありませんでした。

ただ最近の戦術的思考の変化に伴い、制圧射撃から
精密射撃へと大きく方向性を変えた米海兵隊が、ミ
ニミに代え、精密射撃のM27IARの配備を始めま
した。

今後10年間で各国軍隊のミニミ/M249分隊支援火器
に対する対応が変化する可能性が出てきています。
我が国を含めてです。

◆兵器特性や性能を考えるうえで重要な発想

こういう流れの中、著者は、

<部隊の火力構成のカギは、異なる機能と性能を有
する兵器を組み合わせることにある。各兵器の限界
を考慮し、組み合わせで互いの短所を補うのだ>

<過去の戦訓が必ずしも未来の戦いの指針になると
は限らない。>

<不変なのは、敵兵力を制圧消耗させる全自動火器
が歩兵には必要だという事実だけだ。この一点で、
ミニミ/M249分隊支援火器に優る兵器はない。>

と述べています。


『ミニミ軽機関銃─最強の分隊支援火器』
クリス・マクナブ著
床井雅美監訳
加藤 喬訳
https://amzn.to/3DTWA8N
四六判192ページ(オールカラー)
定価1800円+税
発行日 :2020.7
発行:並木書房

それでは、
ミニミ軽機関銃のすべてがわかるコンパクトマニュアル
の内容を見ていきましょう。

監訳者・床井雅美さんの言葉からどうぞ。

◆監訳者のことば(一部)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 アメリカ軍がミニミを採用する大きなきっかけと
なったのはベトナム戦争だった。
  第2次世界大戦後(正確には朝鮮戦争後)アメ
リカ軍は、本書にも出てくる分隊支援火器のBAR
を廃止したため、ベトナム戦争で分隊支援火器をほ
とんど持たないまま戦闘に臨み、歩兵の近接戦闘支
援のためには重くかさばるM60汎用機関銃が使用
された。これに対し南ベトナム解放民族戦線(ベト
コン)側は、ソビエトに準じた兵器体系をとり、多
くのRPD分隊支援機関銃や75発容量のドラムマ
ガジンと長い銃身を備えたAKアサルトライフルの
派生型のRPK分隊支援火器を投入した。
  徒歩によるジャングルや山岳地域での戦闘では、
重くかさばるM60は決定的に不利で、アメリカ軍は
苦戦した。この経験がのちにミニミ分隊支援火器を
採用する大きな理由になったのである。
  本書で著者は「部隊の火力構成のカギは、異な
る機能と性能を有する兵器を組み合わせることにあ
る。各兵器の限界を考慮し、組み合わせで互いの短
所を補うのだ」と述べている。これは兵器の特性や
性能を考察し、評価するうえで忘れてはならない思
想である。
  読者もミニミ軽機関銃をこの具体例として、こ
のような視点の重要性を理解、再確認されるにちが
いない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◇目次

はじめに 

第1章 最強の分隊支援火器 

ミニミ開発の発端/初期型ミニミのメカニズム/革
新的な複式給弾システム/過酷な比較試験

第2章 ミニミ軽機関銃のメカニズム 

ミニミの取り扱い手順/標準モデルと空挺モデル/
5.56mmと7.62mm口径のミニミMk3シ
リーズ/M249SAW(分隊支援火器)/M24
9特殊作戦用火器(SPW)/ミニミ軽機関銃の派
生型

第3章 ミニミ分隊支援火器の役割 

戦術面での多様な役割/射手には筋力と持久力が求
められる/M249射手1人で歩兵の5倍の弾薬量
/射撃を安定させるバイポッド/車両の武装用とし
ても広く使われる/究極の遠隔操作式マウント/新
世代の光学照準器/進化する光学照準器/M249
分隊支援火器の射撃姿勢/M249分隊支援火器の
精密射撃

第4章 M249分隊支援火器の整備と保守

M249分隊支援火器の整備手順/M249分隊支
援火器の簡易分解と潤滑油/小さな部品が多く簡易
分解が難しいという不満/布製100発容量パック
が好まれる理由/M249分隊支援火器の緊急対処
法/「M249は一度も故障しなかった」

第5章 戦場のミニミ分隊支援火器 

M249分隊支援火器による制圧援護射撃/戦場で
実証されたミニミ分隊支援火器の真価/韓国製K3
軽機関銃/M249分隊支援火器の存在意義/銃撃
戦の勝利に不可欠な軽機関銃/過熱した銃身を交換
して射撃再開

第6章 5.56mm弾をめぐる論争 

M27歩兵自動小銃を選んだアメリカ海兵隊/遠距
離戦では明らかに不利な5.56mm×45弾薬/
5.56mm弾薬の殺傷力不足/部隊の火力構成─
兵器を組み合わせて短所を補う/5.56mm弾薬
批判への反論/5.56mm弾の利点を活かしたM
249分隊支援火器

第7章 ミニミの時代はこれからも続く

M249分隊支援火器からM27歩兵自動小銃へ/
批判されるM249分隊支援火器/精密射撃も可能
なM27の優位性/M27IARでは制圧射撃任務
はできない/ミニミ分隊支援火器排除の動きに疑問
の声/ミニミ/M249分隊支援火器に優る兵器は
ない

[コラム]
M249SAW(分隊支援火器)の諸元 
M249分隊支援火器の射撃特性 
M249分隊支援火器の射撃の基本(アメリカ陸軍
装備品取扱いマニュアルFM23-14)
アメリカ陸軍のM249分隊支援火器に関する保守
整備要領標準 
ブラジル軍特殊部隊とミニミ(2005年)
アフガンに展開するイギリス海兵隊第42コマンド
部隊(2011年)
イラクにおけるアメリカ海兵隊(2003年)

参考文献 
監訳者のことば 
訳者あとがき 

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◆著者・監訳者・訳者略歴

クリス・マクナブ(Chris McNab)
戦史と軍事テクノロジー分野で著作活動を行ってお
り出版点数は40冊を超える。オスプレイのウェポ
ンシリーズでも活躍しており、『ドイツ軍自動ライ
フル1941-45』、『MG34とMG42機関銃』および『バ
ーレット・ライフル』など多数。

床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に
事務所を持ち、軍用兵器の取材を長年つづける。と
くに小型火器の研究には定評があり、世界的権威と
して知られる。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ
書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル
図鑑』『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン
図鑑』(徳間文庫)、『メカブックス・現代ピスト
ル』『メカブックス・ピストル弾薬事典』『最新軍
用銃事典』(並木書房)など多数。

加藤 喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校ほかで学ぶ。
88年空挺学校を卒業。91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作
戦に参加。米国防総省外国語学校日本語学部准教授
(2014年7月退官)。著訳書に『LT』(TBSブリタ
ニカ)、『名誉除隊』『アメリカンポリス400の真
実!』『ガントリビア99』『M16ライフル』『MP5
サブマシンガン』『MP38/40機関銃(近刊)』(並
木書房)など多数。

いかがでしょうか?

訳者の加藤さんは「訳者あとがき」で、

<本書の翻訳を進めるうち、ミニミ軽機関銃(米軍
制式名称:M249SAW(Squad Autmatic Weqpon)こそ、
強大な火力支援が可能で、かつ1人で持ち運べる理想
的な分隊支援火器だということがわかってきた。>

と、ご自身の軍歴を振り返っての言葉を残されてます。

あわせて加藤さんの、

<著者のマクナブの見識と公平な考察を通し、読者
は「M249分隊支援火器の時代が続くのか、あるいは
M27歩兵自動小銃への転換が各国軍隊にも波及して
いくのか」の判断を自ら下すことができると思う>

との言葉もここでお伝えしておきます。

こんかいご紹介したのは

『ミニミ軽機関銃─最強の分隊支援火器』
クリス・マクナブ著
床井雅美監訳
加藤 喬訳
https://amzn.to/3DTWA8N
四六判192ページ(オールカラー)
定価1800円+税
発行日 :2020.7
発行:並木書房

でした。

次回もお楽しみに!

エンリケ

追伸

本著では、ミニミ軽機関銃について

米軍にかかわる記述では「M249分隊支援火器」
米軍以外に関する記述では「ミニミ分隊支援火器」
米軍と外国軍が同時に描写されているときは
「ミニミ/M249分隊支援火器」

という風に言葉を使いわけています。

「M249分隊支援火器(SAW:Squad Autmatic Weqpon)」
という言葉は、ミニミ軽機関銃の米軍制式名称です。

そのため
本文中に「ミニミ」という言葉はあまり出てきませ
ん。「M249分隊支援火器」という言葉がよく出てき
ます。


『ミニミ軽機関銃─最強の分隊支援火器』
クリス・マクナブ著
床井雅美監訳
加藤 喬訳
https://amzn.to/3DTWA8N
四六判192ページ(オールカラー)
定価1800円+税
発行日 :2020.7
発行:並木書房