【本の紹介】『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』上田篤盛 著|戦争はミサイルが飛ぶ前から始まっている

台湾有事は「ミサイルが飛んできた日」に始まるのか?
この本を読むと、「台湾有事の見え方」が少し変わるかもしれません。
台湾有事と聞くと、中国軍の台湾侵攻や、自衛隊・米軍の動きを思い浮かべませんか?
ところが、本書が描くのはその「前」です。
通信、物流、サイバー攻撃、技術流出、情報戦――。
銃声が聞こえない段階から、企業はすでに「戦場」に立たされているかもしれない。
元防衛省情報分析官・上田篤盛さんが、2030年の台湾有事をストーリー形式で描いた未来シナリオです。
私がとくに気になったのは、
**「情報はある。しかし組織が決断できない」**
という問題でした。
これは台湾有事だけの話ではありません。
国家にも、企業にも、そして私たち自身にも突きつけられる、
**「手遅れになる前に決められるか?」**
という問いを投げかけてくる一冊です。
—
『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』書籍情報
『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』
上田篤盛 著
発行:原書房
発行日:2026年8月17日
判型・ページ数:四六判・256ページ
定価:2,640円
[Amazonで『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』を見る](https://amzn.to/4q8PerS)
—
こんにちは、エンリケです。
「台湾有事」と聞くと、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?
中国軍の台湾上陸。
台湾海峡を埋める艦艇。
飛び交うミサイル。
米軍の介入。
そして、南西諸島へ展開する自衛隊。
たぶん、多くの方がそんな光景を思い浮かべるのではないでしょうか。
でも。
今回ご紹介する本を見ていて、私は少し違うことを考えました。
**台湾有事は、本当にミサイルが飛んできた日に始まるのでしょうか?**
もしかすると、そのずっと前から始まっているのかもしれません。
今回ご紹介するのが、
**『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』**
です。
著者は、元防衛省情報分析官の上田篤盛さんです。
—
## 著者・上田篤盛さんとは
上田篤盛(うえだ・あつもり)さんは、1960年広島県生まれの軍事アナリストです。
防衛大学校で国際関係論を学び、卒業後は陸上自衛隊の情報職、在バングラデシュ日本大使館勤務、調査学校教官、防衛省での情報分析官業務などを歴任。
現在は、中国の軍事・情報・戦略に関する分析に加え、経済安全保障、情報戦、企業リスクなどについても幅広く活動されています。
著書には、
『中国戦略“悪”の教科書』
『戦略的インテリジェンス入門』
『カウンターインテリジェンス―防諜論』
『超一流諜報員の頭の回転が早くなるダークスキル』
『謀略とインテリジェンス―認知戦に無防備な日本』
などがあります。
「情報をどう集めるか」だけでなく、
**集めた情報をどう分析し、どう判断につなげるか**
を考えてきた人です。
その上田さんが今回描いたのが、
「台湾有事そのもの」ではなく、
**台湾有事へ向かっていく過程**
なのです。
—
本書の目次
本書は次のような構成になっています。
### はじめに
### プロローグ ―― 情報が途絶えた朝
第1章 世界が揺れた日 ―― 未来エレクトロニクスの転機
第2章 危機の予兆 ―― 静かに始まる運用データの争奪
第3章 「シリコンの盾」が揺らぐ
第4章 盗まれる設計、狙われる技術者
第5章 見えない戦場 ―― 企業だけが危機を知っていた
第6章 台湾有事の実像 ―― 演習から読み解く“企業の死角”
第7章 侵攻準備開始 ―― “無音の開戦”の前夜
第8章 保護の限界 ―― 国家より先に企業が動く
第9章 兆候の臨界 ―― 現場が察した“違和感の正体”
第10章 動かぬ国家 ―― 永田町の逡巡
第11章 判断の空白 ―― 民間が直面した“止まった日本”
第12章 融和の影 ―― 希望的観測に忍び寄る現実リスク
第13章 開戦前夜
### エピローグ 奇襲 ―― それは軍事演習ではなかった
### おわりに ―― 未来は「予知」できないが「備える」ことはできる
目次を眺めているだけでも、かなりイヤな感じがしてきます(笑)。
でも、そこが本書のポイントなのでしょう。
—
「台湾有事と企業危機管理の本」だと思っていました
正直、最初にタイトルを見たときは、
「台湾有事と企業危機管理を結びつけた本かな」
くらいに思っていました。
半導体。
サプライチェーン。
サイバー攻撃。
経済安全保障。
おそらく、そのあたりを解説する本なのだろう、と。
もちろん、それらも重要なテーマとして登場します。
でも、本書の面白さはもう少し手前にあります。
つまり、
**「有事が始まったと、われわれはいつ気づくのか?」**
という問題です。
ここに私は引っかかりました。
—
2030年の台湾有事を描く「未来シナリオ」
本書の舞台は2030年です。
日本の老舗半導体メーカー「未来エレクトロニクス社」という架空企業を中心に、台湾有事へ向かっていく過程が描かれます。
ただし、完全な空想ではありません。
2026年5月までの国際情勢や産業構造を踏まえて構成された未来シナリオです。
そして物語は、派手な軍事衝突から始まりません。
戦車も出てこない。
戦闘機も飛んでこない。
ミサイルも飛んでこない。
最初に起きるのは、
**ささいな「システムの不具合」**
です。
これ、イヤな感じがするんですよね。
いや、本としては面白いんです(笑)。
でも、危機の始まり方としては実にイヤらしい。
なぜなら、
**私たちが日常的によく見る光景だからです。**
会社のシステムがおかしい。
通信状態が不安定になる。
データに妙な動きがある。
物流に遅れが出る。
技術者への不自然な接触がある。
情報が一部、届かなくなる。
しかし、その一つひとつを見れば、
「まあ、そんなこともあるでしょう」
で済ませられる。
ここが怖いんです。
—
歴史は「結果を知ってから」読んでいる
私たちは歴史を、結果を知った状態で読みます。
たとえば真珠湾攻撃。
1941年12月8日。
後から見れば、
「あの日、戦争が始まった」
と簡単に言えます。
でも、その時代を生きている人は未来を知りません。
今日起きた出来事が歴史的転換点なのか。
単なる一時的な異常なのか。
その瞬間にはわからない。
ここに、意思決定とインテリジェンスの難しさがあります。
台湾有事も同じでしょう。
中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を始めた。
さて。
これは演習ですか?
それとも侵攻準備ですか?
サイバー攻撃が急増した。
中国政府の指示でしょうか?
犯罪集団でしょうか?
別の国家や勢力でしょうか?
それとも単なる偶然でしょうか?
台湾海峡の物流に異変が出た。
一時的な混乱でしょうか?
経済的圧力でしょうか?
欺瞞工作でしょうか?
それとも封鎖の前段階でしょうか?
技術者が狙われる。
データが盗まれる。
怪しい情報がSNS上に流れる。
通信に異常が起きる。
一つひとつなら、
「戦争」とまでは呼べません。
でも。
**それらが同時に起き始めたら?**
ここから本書が、ぐっと怖くなってきます。
—
本当に怖いのは「判断が先送りされること」
私がとくに手を止めたのは、本書が描く
**「判断が先送りされる怖さ」**
です。
企業が直面するのは、戦車やミサイルだけではありません。
情報が届かない。
判断できない。
責任者が決めない。
「まだ大丈夫だろう」と思う。
そして、時間だけが過ぎていく。
これ、軍事組織だけの話ではありませんよね。
会社でもあります。
役所でもあります。
大きな組織なら、どこでも起こり得ます。
現場の人間が、
「何かおかしい」
と感じる。
担当部署も、
「通常とは違います」
と報告する。
しかし、確証がない。
そこで上層部は、
「もう少し情報を集めよう」
と言う。
その判断自体は間違っていません。
むしろ合理的です。
ところが。
相手がこちらの意思決定速度まで計算して動いていたら、どうでしょう?
こちらが、
「まだ断定できない」
と言っている間に、相手は次の段階へ進む。
こちらが、
「関係省庁と調整します」
と言っている間に、さらに事態が進む。
こちらが、
「政府の方針を確認してから」
と言っている間に、
もう選択肢がなくなっている。
つまり、
**意思決定の遅さそのものが脆弱性になる。**
本書の価値のひとつは、ここをはっきり見せてくれるところにあると思います。
—
「動かぬ国家」と「止まった日本」
目次にも気になる言葉があります。
「見えない戦場」
「無音の開戦」
「兆候の臨界」
「保護の限界」
そして、
**「動かぬ国家――永田町の逡巡」**
さらに、
**「判断の空白――民間が直面した“止まった日本”」**
です。
なかなか刺激的な章題でしょう(笑)。
でも、笑って済ませられる話ではありません。
民主国家には手続きがあります。
法律があります。
権限があります。
省庁間調整があります。
政治判断があります。
しかも台湾有事の場合、日本と台湾には正式な同盟関係がありません。
平時から有事へ移っていく途中で、
**「政府として、どこまで動けるのか」**
という難しい問題が出てきます。
ところが企業が直面する現実は待ってくれません。
工場は動いています。
社員がいます。
海外拠点があります。
取引先があります。
物流があります。
資金繰りがあります。
企業経営者は、
政府が正式に
「これは有事です」
と言ってくれるまで待っていればよいのでしょうか?
そこに、
**国家安全保障と企業経営の「時間差」**
が生まれます。
—
半導体という「現代の石油」
本書の中心に置かれているのが半導体です。
半導体はよく、
**「現代の石油」**
と表現されます。
スマートフォン。
パソコン。
自動車。
通信。
金融。
医療機器。
AI。
データセンター。
そして当然ながら、兵器。
現代社会は半導体なしでは動きません。
20世紀の戦争を考えるとき、石油を抜きに戦略を語れなかったように、
21世紀の安全保障では、
**半導体を抜きにして戦略を語れない。**
そう考えると、台湾の意味も変わってきます。
台湾を単なる地理上の要衝として見るのではない。
第一列島線という軍事地理だけで見るのでもない。
そこへ、
半導体。
AI。
通信。
サプライチェーン。
金融。
技術者。
知的財産。
海上輸送。
サイバー空間。
これらを重ね合わせる。
すると台湾海峡は、
**軍事だけでは説明できない巨大な戦略空間**
になってきます。
—
21世紀の戦争は「総力戦」の姿を変えた
かつて軍事を考えるなら、
陸。
海。
空。
が中心でした。
いまは違います。
宇宙。
サイバー。
電磁波。
情報。
認知。
経済。
金融。
技術。
サプライチェーン。
あらゆるものが戦略領域になっています。
まさに、現代版の総力戦です。
そうなると当然、
**戦争と平和の境界も曖昧になります。**
戦車が国境を越えた瞬間を、
「開戦」
と呼べた時代とは違います。
相手国企業から技術者が引き抜かれる。
重要技術が企業買収によって流出する。
SNS上で認知戦が行われる。
サイバー空間から企業ネットワークへ侵入する。
物流網に圧力をかける。
経済的威圧を加える。
どれも単独では、
「戦争」
とは呼びにくい。
だからこそ、対応しにくい。
ここがグレーゾーンの厄介なところなのでしょう。
—
敵だけを分析していてはいけない
本書を読んで感じるのは、
**相手側だけを分析していても、有事は読めない**
ということです。
「中国は何をするのか?」
もちろん重要です。
中国軍はどう動くのか。
中国共産党指導部は何を考えているのか。
どんな兆候が現れるのか。
しかし、それだけでは足りません。
同時に、
**「われわれ自身は、どう反応するのか?」**
も分析しなければならない。
ここが面白いんです。
相手が攻撃してくる。
こちらが対応する。
普通はそう考えます。
でも、こちら側にも組織があります。
制度があります。
人間関係があります。
責任問題があります。
法律があります。
予算があります。
希望的観測があります。
そして、
「まさか、そこまではやらないだろう」
という心理があります。
敵だけを分析してはいけない。
**自分たち自身の弱点も分析対象にする。**
これは軍事でも企業経営でも同じでしょう。
—
危機管理の敵「希望的観測」
私は、
「融和の影――希望的観測に忍び寄る現実リスク」
という章題も気になりました。
人間は、自分が望んでいる未来を、
「起こる可能性が高い未来」
だと思いたがります。
戦争なんて起きてほしくない。
だから、
「中国も経済的損失が大きいから戦争なんてしないだろう」
と考える。
台湾海峡が封鎖されたら中国も困る。
だからやらない。
米国が介入するからやらない。
世界経済が大混乱するからやらない。
合理的に考えれば、そうかもしれません。
しかし歴史を見れば、
**「そんなことをしたら自分も損をする」**
という行動を国家が取った例はいくらでもあります。
国家は経済合理性だけでは動きません。
威信。
国内政治。
歴史認識。
民族感情。
指導者個人の判断。
軍事的タイミング。
いろいろな要素が絡みます。
だから、
**「合理的に考えれば起こらない」**
という言葉は、危機管理ではかなり危険なのだと思います。
—
シナリオ・プランニングは「未来予知」ではない
そこで出てくるのが、本書の重要な考え方、
**シナリオ・プランニング**
です。
これは未来を当てる手法ではありません。
本書が2030年を舞台にしているからといって、
「2030年に台湾有事が起きる」
と予言しているわけではない。
そうではなく、
ある未来を仮定し、
そこまでの道筋を先に歩いてみる。
いわば、
**頭の中で行う図上演習**
です。
軍隊は昔から図上演習を行ってきました。
敵がこう動いたら、どうする。
こちらがこう動けば、相手はどう反応する。
補給は持つのか。
通信が途切れたらどうする。
司令官が倒れたら誰が指揮する。
実際に戦争が始まってから考えていたのでは遅いからです。
企業も同じでしょう。
台湾の工場が止まったらどうする。
物流が止まったらどうする。
サーバーが落ちたらどうする。
社員を退避させるのか。
いつ退避を決めるのか。
誰が決めるのか。
政府がまだ動いていない段階でも動くのか。
こういうことを、
**平時に考えておく。**
本書が面白いのは、これを「物語」にしたところです。
—
なぜ「物語」で描くのか?
危機管理なら、リスク一覧表を作ることはできます。
サイバー攻撃。
物流停止。
半導体不足。
株価暴落。
社員退避。
工場停止。
Excelでも作れます。
でも、一覧表では見えないものがあります。
それが、
**時間です。**
危機には順番があります。
Aが起きる。
その結果、Bが起きる。
そこで判断が遅れてCが起きる。
さらにDが起きる。
そして、ようやく上層部が、
「これはまずい」
と気づく。
しかし、その時点では選択肢が減っている。
この「流れ」を見るには、物語形式は強いんですね。
しかも物語には人間が出てきます。
判断する人。
迷う人。
反対する人。
楽観する人。
警告する人。
責任を取りたくない人。
情報を持っているのに伝えられない人。
ここまで入って初めて、危機が立体的に見えてきます。
安全保障は、兵器と数字だけでできているわけではありません。
最後に決めるのは人間です。
だからこそ、
**「人間はなぜ判断を誤るのか」**
まで考えなければ、本当の危機管理にはならないのでしょう。
—
本書で注目した5つのポイント
少し長くなりましたので(笑)、本書で私がとくに注目した点を整理しておきます。
* **台湾有事は「開戦の日」だけを見ていてはいけない。**
サイバー、物流、技術流出、情報戦、経済圧力など、その前段階を見る必要があります。
* **最初の戦場が企業になる可能性がある。**
国家が正式に有事と認定する前から、企業のデータ、技術者、サプライチェーンは狙われます。
* **危機管理では「何をするか」だけでなく「いつ決めるか」が重要。**
正しい判断でも、遅ければ意味を失います。
* **インテリジェンスとは未来予知ではない。**
断片的な兆候を組み合わせ、「何が起きつつあるのか」を考え、判断を助けるものです。
* **最大の敵は希望的観測かもしれない。**
「まさか」「まだ大丈夫」「そこまではやらない」が、対応を遅らせます。
こうして見ると、
この本は「台湾だけ」の本ではありません。
—
「有事を当てる本」ではなく「有事に強い頭をつくる本」
私はむしろ、
**「有事を当てる本」ではなく、「有事に強い頭をつくる本」**
として読むのが面白いと思います。
2030年に本当に台湾有事が起きるか。
わかりません。
2027年かもしれない。
もっと先かもしれない。
そもそも軍事侵攻という形を取らないかもしれません。
海上封鎖かもしれない。
限定的な軍事行動かもしれない。
経済的威圧かもしれない。
サイバー攻撃と認知戦を組み合わせた長期的圧力かもしれない。
だから未来をひとつに決めない。
いくつもの可能性を想定しておく。
そして、
**「この兆候が出たら、このシナリオの可能性が高まった」**
と考える。
こういう頭の使い方こそ、インテリジェンスではないでしょうか。
—
「いつもと違う」を拾えるか
私は第9章、
**「兆候の臨界――現場が察した“違和感の正体”」**
というタイトルも好きです。
インテリジェンスというと、秘密情報をたくさん持っている人が強いように思えます。
もちろん情報は大切です。
でも、情報量が多ければ未来が見えるわけではありません。
重要なのは、大量の情報のなかから、
**「いつもと違うもの」を拾えるか**
です。
軍事演習が増えた。
まあ、よくある。
サイバー攻撃が増えた。
これも珍しくない。
物流にも異常が出た。
たまたまだろう。
技術者にも接触があった。
これも偶然かもしれない。
でも。
**全部が同時に起きていたら?**
そこで、
「ちょっと待てよ」
と思えるかどうか。
この感覚は、軍事情報を読むときにも重要だと思います。
—
軍事史を読む意味もここにある
そして、だからこそ、
軍事史を読む意味もあるんですよね。
昔こんな戦争がありました。
昔こんな作戦がありました。
それだけでは、もったいない。
なぜ判断が遅れたのか。
なぜ相手の意図を読み違えたのか。
なぜ警告が無視されたのか。
なぜ希望的観測が勝ったのか。
なぜ現場の情報が上層部に届かなかったのか。
そこを見る。
すると、
過去の戦争が、現在の企業経営や危機管理につながってきます。
後から見れば、
「兆候はあった」
と言える。
でも重要なのは、
**その時点でどう評価できたか**
です。
これはいつの時代も変わりません。
—
台湾有事は「ニュースの向こう側」ではない
「台湾有事なんて、政府と自衛隊が考えることでしょう」
と思っている方もいるかもしれません。
でも、本書を読むと少し見方が変わると思います。
企業が止まれば、私たちの生活も止まります。
通信。
電力。
金融。
物流。
自動車。
医療。
ネットサービス。
どれも複雑なサプライチェーンの上に成り立っています。
そのどこか一か所が切れただけで、思わぬ場所まで影響が広がります。
現代社会は便利になりました。
同時に、
**巨大な相互依存システム**
にもなりました。
だから、
軍事的な「戦場」と私たちの日常生活との距離は、
昔より近くなっているのかもしれません。
—
あなたなら、どの段階で動きますか?
ここで、あなたにも少し考えていただきたいんです。
もし明日の朝、
会社のシステムに妙な不具合が起きた。
台湾周辺では中国軍の大規模演習が始まっている。
SNSでは怪しい情報が飛び交っている。
物流会社から、
「一部航路に遅延が出ています」
と連絡が来た。
株式市場も少しおかしい。
でも政府はまだ何も発表していない。
テレビでは、
「通常の軍事演習とみられます」
と報じている。
さて。
**あなたなら、どの時点で「これはいつもと違う」と判断しますか?**
そして、あなたが責任者なら、
いつ人を動かしますか?
いつ取引先に連絡しますか?
いつ代替調達へ切り替えますか?
いつ社員を退避させますか?
「政府が正式発表してから」
でしょうか?
そのとき、
まだ航空便は飛んでいるでしょうか。
ここまで考えると、
台湾有事が急に「ニュースの向こう側」の話ではなくなってきます。
—
台湾有事を知る本であり、「兆候を見る目」を鍛える本
著者の上田さんは、長年、情報分析の世界に身を置いてきた人物です。
だからでしょう。
本書は、中国軍の艦艇数やミサイル数を並べて終わりません。
情報をどう読むか。
兆候をどう評価するか。
組織はどう判断するか。
そして、
**判断が遅れたときに何が起きるのか。**
ここに焦点が当てられています。
「軍事情報」の読者のみなさんには、ぜひこの視点で読んでいただきたいと思います。
台湾有事が本当に起きるかどうか。
私にはわかりません。
誰にも断言できないでしょう。
でも、
だから考えなくていい、
とはなりません。
むしろ逆です。
わからないから考える。
いくつもの可能性を想定する。
最悪の未来も、一度見ておく。
そして、
何が起きたら危険なのかを考えておく。
これが、
**「備える」**
ということではないでしょうか。
私は本書を、
台湾有事そのものを知り、備える本であると同時に、
**「兆候を見る目を鍛える本」**
として読むと面白いと思います。
さらに、
**「人間は、なぜ決断できなくなるのか」**
を考える本として読む。
そうすると、
安全保障の本が、
組織論になり、
経営論になり、
インテリジェンス論になり、
最後には人間論になってきます。
こういう本、
私は好きですね。
—
まとめ――戦争は、銃声より前に始まっている
戦争は、
ミサイルが飛んできた瞬間に始まるとは限りません。
システムの小さな異常。
物流の遅れ。
奇妙なアクセス。
技術者への接触。
軍事演習。
市場の変化。
情報の混乱。
そして、
**「まだ大丈夫だろう」**
という人間の心理。
それらが静かにつながったとき、
私たちが気づかないまま、
すでに次の段階へ足を踏み入れている可能性があります。
未来を当てる必要はありません。
でも、
**未来を考える訓練はできます。**
『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』は、そのための一冊として読むと、かなり面白いと思います。
安全保障に関心のある方。
経済安全保障に関心のある方。
インテリジェンスを学んでいる方。
企業の危機管理に携わる方。
そして、
ニュースの向こう側にある「兆候」を読みたい方。
ぜひ一度、この2030年の「悪い未来」を歩いてみてください。
悪い未来を見ることは、悲観することではありません。
**悪い未来を避けるために、今なにができるかを考えることです。**
情報を見る目。
違和感を拾う感覚。
そして、自分の頭で判断する力。
こんな時代だからこそ、
本書を通じて、一緒に磨いていきましょう。
—
## 『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』
上田篤盛 著
発行:原書房
発行日:2026年8月17日
判型・ページ数:四六判・256ページ
定価:2,640円
[Amazonで『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』を見る](https://amzn.to/4q8PerS)
(エンリケ)
—
追伸
**あなたなら、「まだ大丈夫」と言われている段階で動けますか?**
そして、
**「まだ大丈夫」を、どこまで信じますか?**
[『台湾有事 日本企業が「戦場」になる』をAmazonで確認する](https://amzn.to/4q8PerS)
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