『人はなぜ平和を祈りながら戦うのか?』――「戦争をなくしたい」と願う人ほど、読むべき一冊

2026年5月19日

こんにちは、エンリケです。

「戦争は悪だ」

多くの人が、そう考えていると思います。
では、なぜ人類は何千年も戦争を繰り返してきたのでしょうか。

「平和を願っているはずの人間」が、
なぜ時として武器を取り、
正義を掲げ、
敵を憎み、
殺し合いに向かっていくのか。

この問いに、感情論ではなく、
宗教・哲学・歴史・心理・戦場の現実から真正面に向き合った本があります。

それが、
『人はなぜ平和を祈りながら戦うのか?』です。

著者は、宗教哲学を専門とする
石川明人さんと、
星川啓慈さん。

本書は単なる「反戦本」ではありません。

むしろ逆です。

「戦争は絶対悪だ」と叫ぶだけでは、
人間を理解したことにはならない――。

そんな厳しくも誠実な姿勢が、全編を貫いています。

## 「宗教が戦争を起こす」は、本当に正しいのか?

現代では、

* 宗教は危険
* 信仰は争いを生む
* 戦争の原因は宗教

というイメージが広く語られます。

ですが本書は、その単純化を強く戒めます。

宗教が戦争を“利用”されることはある。
しかし、「宗教=戦争原因」と短絡してしまうと、
人間そのものの問題が見えなくなる。

ここが非常に重要です。

国家。
民族。
思想。
恐怖。
共同体。
正義感。
復讐心。

戦争を動かすものは、実に複雑です。

そして本書は、
その複雑さから逃げません。

## 「人は人を殺したがらない」――それでも戦争は続く

本書で特に印象深いのが、

> 人は本来、人を殺したがらない

という議論です。

これは軍事研究や心理学でも繰り返し論じられてきたテーマです。

しかし同時に、

> 人は状況次第で、驚くほど残酷にもなれる

という現実もまた存在します。

つまり人間は、

* 優しさ
* 暴力性
* 理性
* 狂気
* 平和への願い
* 戦いへの衝動

その両方を内側に抱えている。

本書を読んでいると、
「戦争とは人間の外側にある異常事態ではなく、人間そのものの問題なのだ」と痛感させられます。

## 「善」と「悪」だけでは語れない世界

本書は、テロについても非常に重要な視点を提示しています。

現代日本では、

「テロ=絶対悪」

という理解が一般的です。

もちろん、無差別殺傷は許されるものではありません。

ですが本書は、そこで思考停止してはいけないと訴えます。

なぜ人はテロへ向かうのか。
なぜ「正義」の名で暴力が肯定されるのか。
なぜ憎悪は連鎖するのか。

そこを理解しなければ、
問題の本質には永遠に届かない。

この姿勢は、今の時代だからこそ重要だと思います。

SNSでは「善悪」で一瞬にして断罪が行われます。

ですが現実世界は、もっと曖昧で、もっと矛盾しています。

本書は、その“人間の不完全さ”から目をそらしません。

## 戦争を学ぶことは、人間を学ぶこと

本書を読むと、
戦争研究とは「兵器の研究」だけではないことがわかります。

戦争とは、

* 人間心理
* 集団心理
* 宗教
* 倫理
* 国家
* 恐怖
* 希望
* 正義
* 矛盾

そうしたものが極限状態で噴き出す現象です。

だからこそ、
戦争を学ぶことは、
人間そのものを学ぶことにつながる。

これは非常に重いテーマです。

ですが本書は、専門書でありながら各章が短く整理されており、非常に読みやすい。

気になったテーマから読める構成なので、

* 安全保障に興味がある人
* 宗教問題を学びたい人
* 情報戦や国際情勢を深く理解したい人
* 「平和とは何か」を考えたい人
* 軍事を感情論ではなく学問として捉えたい人

には特におすすめできます。

## 今の時代にこそ読む意味がある

世界は再び「力の時代」に戻りつつあります。

戦争は遠い国の話ではなくなりました。

だからこそ、

* 人はなぜ戦うのか
* なぜ憎しみは生まれるのか
* 平和とは何なのか
* 国家とは何か
* 宗教とは何か

を、感情ではなく、構造として理解する必要があります。

本書は、そのための極めて優れた“思考の道具”になります。

「戦争反対」と叫ぶ前に。
「正義」を語る前に。
ぜひ一度、読んでみてください。

きっと、人間を見る目が変わります。

## 書籍情報

📘『人はなぜ平和を祈りながら戦うのか? ― 私たちの戦争と宗教』
* 著者:石川明人/星川啓慈
* 出版社:並木書房
* 発売:2014年4月
* 238ページ

(エンリケ)

追伸

戦争を学ぶというと、
兵器や戦術ばかりを想像する人がいます。

ですが本当に恐ろしいのは、
「自分は正しい」と信じた人間が、疑いを失った瞬間です。

本書は、その危うさを静かに教えてくれます。

だからこそ私は、
軍事を学ぶ人ほど「人間」を学ばなければならないと思っています。

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