MCV配備部隊&密着ルポ(8)

2022年2月、厳冬の上富良野演習場でのMCV射撃訓練2日目も天候に恵まれ、絶好の射撃日和となりました。
朝の気温もマイナス7度と、昨日よりぐっと暖かくなっています(この気温を暖かいと感じるようになる人間の順応性って本当にすごいと思います)。この日は今回の射撃訓練のメインともいえる、小隊戦闘射撃が行なわれます。105mm砲躍進射撃、105mm砲行進射撃、連装銃行進射撃を一連の状況で実施する小隊戦闘射撃は、準備隊にとって初めての訓練内容です。4両のMCVがA~Dレーンに並びました。

まず第1状況として、MCV4両がそろって前進後、ふいに現出する目標に対する105mm砲停止射撃(HEAT)が行なわれました。第2状況では、ふいに現出するに目標に対する105mm砲行進射撃(TP)が行なわれました。
車両を停止させることなく射撃するので、第1状況よりも難易度が上がっています。また、この射撃の最大の目的はあくまでも「4両が並んで行進射撃する練度を上げる」ことであり、「うちの分隊がいちばん早く射撃し、命中させる」ことではないので、足並みをそろえるという点も大事になります。この辺は車長の腕の見せどころかもしれません。
そして第3状況としてさらに前進後、ホップアップにより現出する目標に対して7.62mm車載機関銃による迅速な射撃を実施。これにて状況終了となりました。

2022年3月17日。第3普通科連隊は第3即応機動連隊に改編、全国で5番目の即応機動連隊となりました。
編成完結式の観閲行進では、MCVも初めて車列に並びました。白い偽装を施したMCVは一糸乱れぬ行進で、3即機連の「顔」として堂々とした姿を参列者に披露しました。

同年10月には国内における日米共同実動訓練としては最大規模の「レゾリュート・ドラゴン22(以下RD22)」が北海道の演習場で実施され、3即機連も参加。然別演習場におけるMCVの射撃訓練の際は、MCVもその射撃を見るのも初めてな海兵隊員たちが、直前まで行なっていた射撃訓練の疲労をつゆとも見せず、射撃の決定的瞬間を撮ろうと前のめりにスマホを構えました。
そしてMCVが装輪車ならではのスピード感をもって前進した後射撃、見事に的中させると、固唾を呑んで見守っていた海兵隊員たちは自衛官が驚くほどの歓声をあげました。MCV射撃後は「近く行っていい?」「乗っていい?」と日米入り乱れての撮影会がスタート。厳しい訓練が続くなか現場ならではの「日米交流」で、束の間のほのぼのしたひとときでした。
現在も全国各地の演習場で、各部隊のMCVは機動力を発揮した訓練を重ねています。

(おわり)