自衛官候補生による射撃場での死傷事件(2)

2023年6月14日。
第35普通科連隊の自衛官候補生たちは日野基本射撃場に向かい、0800前に射撃訓練の準備を開始、0900頃に射撃訓練が始まりました。

射撃場には射撃をする「射座」のほか、次に射撃をする者が立つ「待機線」、待機線に入る前に服装や銃の点検を行なう「準備線」があります。
射座では射手に対してひとりの指導役の射撃係と、同じ自衛官候補生が薬莢回収係として備えます。つまり候補生ひとりに対してふたりが付くことになります。
このほかにも、この日は射座周辺で約10名が安全管理にあたっていました。

訓練は自衛官候補生を4名のグループに分けて行なわれ、逮捕された候補生は銃の点検などを行なう「準備線」ではもっとも右側に並び、前のグループの射撃が終わるのを待っていました。
そして教官から指示を受け、「準備線」の右側後方にある、菊松1曹と原3曹が実弾の管理や受け渡しをする「弾薬係」を務めている弾薬置き場で、約30発の弾倉に込める実弾を受け取りました。

弾薬係は通常、その日の訓練に使う弾薬を用意して机に並べておきます。候補生はひとりずつ箱に詰めた弾の束を受け取った後、「弾薬受領完了」と言って敬礼し、待機場所で順番待ちをすることになっています。事件を起こした候補生もほかの候補生とともに、次に射撃するグループの一員として射撃位置手前の待機場所に並びました。

0908。ここで候補生が、射座についてから行なうはずの小銃への弾倉の装填を無断で行ないました。
近くにいたのは、射撃前の候補生らの服装や銃の安全点検などを行なう「交代係」を務めていた八代3曹ひとり。
八代3曹が制止しようとするのとほぼ同時に、候補生は「動くな」と叫び、八代3曹の脇腹に1発発砲します。

その後、右後方に向き直り、数メートル離れた弾薬置き場へ接近。弾薬置き場に座っていた菊松1曹の頭部を正面から撃ち、さらに菊松1曹の右隣にいて立ち上がった原3曹の左太ももを撃った後、うつ伏せに倒れている菊松1曹の背中に再度発砲しました。
射撃訓練の責任者だった射撃指揮官の幹部が背後から近づき候補生を羽交い締めにしましたが、それでも発砲をやめず壁に向かって3、4発発射。
その後、ほかの隊員2名も加わって男を取り押さえ、射撃場の外に連れ出しました。弾倉を取り外されても、それを拾って再び撃とうとするなどしたといいます。
男の小銃の弾倉には弾が12発入っていましたが、取り押さえられるまでに7、8発撃っていました。