自衛隊警務隊逮捕術:荒木肇
一人歩きの夜が怖い軍事ファンのあなたへ
自衛隊警務隊で稽古されている最高水準の逮捕術を
この本で身につけ、自分に自信を取り戻しませんか?
こんにちは。エンリケです。
このページでは、
荒木肇さんの新刊
『新刊「自衛隊警務隊逮捕術」のご案内』 を
紹介しています。
初めて明かされる「警務隊逮捕術」
読者の皆様へ
新刊「自衛隊警務隊逮捕術」のご案内
昨年の夏のことでした。東京都小平市にある陸上自衛隊小平学校。その夏祭りに伺った時のことです。小平学校は陸上自衛隊の学校の中でも、語学や情報、会計、法務、警務などの専門教育を行なうところです。
そこで警務科の皆さんに挨拶をしていたところ、「逮捕術の検定を見学しませんか」とのお誘いを受けました。これから警務官になる陸海空自衛官たちの教育の仕上げになるということで、喜んで見学させていただきました。
警務官課程は、司法警察職員たる自衛官を育てるコースです。隊員の中から志願、そして選抜を受けて教育を受け、陸海空曹になって初めて警務官に任命されます。もちろん、幹部のコースもあり、防衛大や一般大学を出た人たちにも、警務官課程は設けられています。
警務隊の「逮捕術」は、相手すなわち被疑者に与える危害を最小にして安全に制圧、逮捕、連行する技です。しかも、一般警察官と違って、被疑者は近接格闘の訓練を受けた自衛官や外国軍人です。したがって、徒手をはじめとして、警棒、警杖を使います。相手のもつ凶器の種類、態度によって対応の仕方が異なります。
その技のすべてを、小平学校警務教育部の教官や助教の方々が見せてくれました。詳しい解説と連続写真、さらには各技に記載されている「QRコード」を使えば動画として観ることができます。
また、自衛隊警務隊長・梅田陸将補は警務隊の現状についてお話ししてくださいました。ほかにも現職の警務官たちによる、職務の説明、経験、やりがい、また警務官にふさわしい資質などについて語ってくれました。
旧陸軍憲兵隊の小史、同じく自衛隊警務隊の歴史などについても資料として載せました。
あまり知られていない、しかし、大切な警務隊、警務官について知りたいという方にぜひ読んでいただきたい一冊です。
(荒木肇)
こんにちは、エンリケです。
こんかいご紹介する『自衛隊警務隊逮捕術』は、知られざる警務科の仕事の内容と、隊員が日々修練している逮捕術を初めて公開した作品です。
本づくりにあたっては、陸海空自衛隊の警務科職種の全教育を担う小平学校、そして陸幕広報が全面協力しています。
荒木先生がいたからできた本なのかもしれません。
警務隊の紹介
警務隊逮捕術の技の紹介
警務隊隊員インタビュー
憲兵隊史
の4つの柱からなる
「自衛隊警務隊がわかる本」
です。
警務隊とは?
自衛隊警務隊の仕事は「捜査」と「保安」に分かれます。
概要はこんな感じです。
●捜査
犯罪捜査、被疑者の検挙
●保安
交通統制や要人警護、規律違反の防止など
警務隊員は、このどちらにも対応しなければいけません。しかも、警察官と違って、相手となる被疑者は近接格闘の訓練を受けた兵士なのです。
警務隊逮捕術では、徒手(手に何も持たないこと)で犯人に立ち向かい、相手が武器や凶器をもっている場合は警棒や警杖をつかいます。
相手に与える危害を必要最小限度にとどめなければならないため、「後の先」を大事にします。ただこれ、言うは易く行うは難しの典型で、迷ったり、ためらっている時間はありません。
この本では、そんな警務隊逮捕術の技のひとつひとつを、連続写真や、スマホを通じQRコードでアクセスできる「動画」で、いつでも見たいときに見ることができます。
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい本です。
特筆すべき「憲兵隊小史」
自衛隊警務隊と聞いて
憲兵
に思いが至りましたか?
至る人は、今のわが国では少ないと思います。
その意味で注目してほしいのが、
この本の最後に
資料
として割り当てられている
「憲兵隊小史」
です。
ちょっと寄り道。
帝国海軍に憲兵はいませんでした。
海軍大臣の指揮を受けて陸軍憲兵が海軍軍人も取り締まっていたのです。
閑話休題
『自衛隊警務隊逮捕術』収録の「憲兵隊小史」は、
明治初めから始まり、
今に至る「わが憲兵の歴史」を
コンパクトにまとめたものです。
以下が目次です。
憲兵のはじまり
ポリス誕生す
邏卒(ポリス)と兵卒の対立
屯田兵は憲兵だった
憲兵隊の発足
陸軍憲兵科の創立
憲兵将校の多くは元警察官
憲兵の職務と権限
軍事警察
行政警察と司法警察
軍令憲兵の活動
憲兵の補充と服役
発足時の憲卒と憲兵下士
発足時の憲兵の服装
東京憲兵隊の定員
各府県へ憲兵が配置
憲兵の兵器使用
日清日露戦争に出征した憲兵
戦時補助憲兵の採用
憲兵の配置の変遷
日露戦争に備えて
補充令に見る憲兵の採用と階段
日露戦争に出征する
日露戦争後の憲兵
憲兵隊と分隊
憲兵の兵科色は黒
憲兵の給与と任用継続
憲兵分隊の日常勤務
憲兵の腕章と徽章
戦争の激化の中で
陸軍憲兵学校
憲兵の大増員
陸上自衛隊警務隊
警察予備隊が発足する
警察予備隊員は警察官だった
保安隊となる
各地に配属された警務隊
防衛庁・自衛隊が発足する
陸上自衛隊警務隊
装備される陸上自衛隊
方面隊・管区隊発足
駐屯地警務隊を廃止する
改編は続く
用語の解説から、知られざる憲兵うらばなしまで。
荒木さんならではの、
「広い視野」
「妥協なき細部の確かさ」
を通じ、
憲兵史の概略が、
ツボを外さず余すところなく
ゴソッとつかみ取れる
感じです。
非常に優れた憲兵史であり、憲兵入門書といっても差し支えない内容です。
著者について
さて著者・荒木さんのことはすでに毎週の連載でご存じでしょうが、あらためてご紹介します。
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を行なう。2001年には陸上幕僚長感謝状を受ける。年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、講話を行なっている。
主な著書に『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして軍隊をつくったのか』(出窓社)、『自衛隊という学校』『続自衛隊という学校』『指揮官は語る』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日本陸軍と自衛隊』『東日本大震災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『あなたの習った日本史はもう古い!』『脚気と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器で戦った』(並木書房)がある。
そして小平学校です。
陸上自衛隊小平学校(こだいらがっこう)
東京都小平市にある小平駐屯地(旧陸軍経理学校跡地)に所在。現在、陸上自衛隊の職種のうち警務科職種と会計科職種の教育を担任するほか、人事、法務、システムの実務全般にわたる幅広い職域の教育を担任している。学生は陸上自衛官のみならず、海・空自衛官、事務官、技官等に及び、実務教育の総本山「実学の府」と呼ばれる。
荒木先生の本業は教師です。余暇をつかって軍事研究を続けてこられた在野の軍事研究者です。とくに「帝国陸海軍の制度史」に強いです。(個人的に私は日本のデルブリュックと思っております)
あなたもご存じのとおり、読みものも面白いこと!
広くて深く、吸収しやすい文章で提供される「使える軍事知識」には圧倒的なものがあります。
「荒木先生が書くものだから信用できます」と自衛官に言わせる人でもあります。
概要とポイントをご案内します
目 次
はじめに 3
警務隊長が語る「進化する警務隊」
警務官は司法警察員/警務隊の組織/警務隊の現状について/警務隊の将来は?
警務隊逮捕術とは 8
江戸時代の捕物道具/陸軍憲兵の逮捕術/憲兵の学んだ柔術逮捕術/戦後の警察と自衛隊警務隊の逮捕術/警務隊逮捕術
警務隊逮捕術 15
1 前さばき(体さばき1)16
2 後ろさばき(体さばき2)18
3 前受け身(受け身1)20
4 後ろ受け身(受け身2)21
5 横受け身(受け身3)22
6 前方回転受け身(受け身4)24
7 片手外回し(離脱1)26
8 片手内回し(離脱2)28
9 前突き(当身1)30
10 手刀/てがたな(当身2)31
11 肘当て(当身3)32
12 前蹴り(当身4)34
13 膝当て(当身5)36
14 背負投げ(投げ1)38
15 大腰/おおごし(投げ2)40
16 小手返し(逆1)42
17 脇固め(逆2)44
18 下段打ち(警棒打ち1)46
19 中段打ち(警棒打ち2)48
20 両手突き(警棒突き)50
21 本手打ち(警杖打ち)52
22 返し突き(警杖突き)54
23 片手取り小手返し(徒手1)58
24 前襟取り脇固め(徒手2)62
25 後ろ襟取り腕固め(徒手3)64
26 警棒取り小手打ち(警棒1)66
27 突掛け小手返し(警棒2)68
28 前襟取り小手投げ(警杖1)72
29 水月/すいげつ(警杖2)76
30 斜面/しゃめん(警杖3)78
31 両手上げ(捜検)80
32 前固めからの施錠 84
33 後ろ小手取り(連行1)86
34 腕取り(連行2)88
指導官の横顔 56
現役自衛官が語る「警務隊」の素顔 90
資料 憲兵隊小史 107
憲兵のはじまり/憲兵隊の発足/憲兵の補充と服役/日清日露戦争に出征した憲兵/日露戦争後の憲兵/戦争の激化の中で/陸上自衛隊警務隊
おわりに 135
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いかがでしょうか?
自衛隊警務隊長は「警務官たる陸将補」と定められてるんですが、高位部隊の指揮官で職種=補職というのは珍しいです。
その理由はなんでしょう?
答えはこの本のなかにあります。
国賓への儀仗で知られる302保安警務中隊は、イケメン揃いで有名ですが、実は自衛隊警務隊の一組織です。あのイケメンもかのイケメンも、この逮捕術を稽古しているはずです
警務官は、自衛官の中から選抜されます。極めて厳しい選抜です。戦闘職種ばかりが軍ではないとあらためて感じます。
サイバー犯罪に立ち向かっているのは行政文民警察と、自衛隊で司法業務を担任する警務隊です。サイバー攻撃はグレーゾーンであり、この段階から有事、戦争になってゆきます。サイバー犯罪との区別はつきにくいのが実際です。
技術・社会・安保状況の変化に伴い、より幅広く、より柔軟な対処ができるよう警務隊自身も進化してゆくことが求められています。
現役警務官たちの声
「現役自衛官が語る「警務隊」の素顔」も面白かったです。
現役警務官たちへのインタビューです。
それぞれの場で活躍している警務官たちが、警務のじっさい、海外派遣時の活動、列国MPとの交流、警務官という仕事の魅力を語っています。
意外なのが、求められる資質として諸官が、
「正義感は強くないほうがいい」
「チームワークが大切」
「雑学王になれ」
「おしゃべりな人が向いている」などなど
一般企業の営業マンに求められるのと同じような資質を求めていることでした。
どちらかといえば石頭、杓子定規のイメージがあった警務官(憲兵)へのイメージは、この章を読んでガラリと変わりました。
重要な指摘
「おわりに」で荒木さんは、自衛隊警務隊について重要な指摘をされています。
「おわりに
「逮捕術の大切なところは『後の先』です」。
村上光由准陸尉がそう説明してくれた。2019年の猛暑の8月のある日、早朝から陸・海・空曹の受験者が集合し、逮捕術検定の始まる直前のことである。
警務官になろうとする者は、ここ陸上自衛隊小平学校の曹警務課程を履修し、その中で必ず「逮捕術」の検定を受けなくてはならない。
「被疑者から攻撃または抵抗を受けた時に、相手への危害を必要最小限度にして、制圧、逮捕するというのが術の基本です」
徒手による格闘が主体になるが、警棒または警杖による施術も行なうことになる。
「正面から頭部、顔面への攻撃は反則になります」
なるほど、頭部への面打ちは相手に致命傷を与えかねない。肩や腹、小手への打撃しかできないようになっている。
仕事のこと、その内容のこと、警務隊のすべてを知ることはできなかったが、彼ら彼女らの真摯な説明に、その使命感や責任感の高さを知ることができた。
部隊のあるところ常に警務官はいる。災害現場への派遣部隊、海外に行く部隊や艦艇にも、航空基地にも、必ず警務官はいる。それに気づく人はどれほどいるだろうか。警務官は独立性を堅持し、警務隊長は指揮官である防衛大臣に直接つながっている。旅団長、師団長、方面総監、総隊司令官の部下ではない。それが一般隊員とはまったく違うところだ。
2020年初春、撮影のために休日をつかって、6人の指導官が道場に集まり、警務隊逮捕術を演武してくださった。指導官らは納得がいくまで、何度も技をくり返してくれた。各ページにはQRコードがある。そこから動画で見ることができ、警務隊最高水準の技を学ぶことができる。
(荒木肇)
この本を読んで、
警務隊の存在と意義と機能と歴史的位置づけができるようになっただけでなく、隊内で取り締まりを行う部署で士気がいかに維持されているかを知りました。
おかげで、日本憲兵史に興味がわきました。
戦闘だけが軍の仕事じゃないことはわかっていたはずですが、警務隊で修練されている逮捕術という技能を具体的に知るなかで、「自衛隊への理解」という大きなパズルにつながる不可欠な1ピースが手に入った感を持ちます。
警務がこれをやっているから、自衛隊全体がこう滑らかに動いてゆく・・・といった構図が、よりピントの合う形で見えるようになりました。、
現場の技能・技術に深く関心を向けることの大切さを教えていただけた気がします。
諸兵科をもっと深く知りたい。もっと各種知識の理解を深めて、もっともっと正確に軍を知りたい、という欲望が「ドカン」と爆発しました。
学問レベルでも、各種軍事技術・技能の理解・把握を深めてゆきたい。そんな思いになっています。
知られざる現代の憲兵「自衛隊警務隊」およびその逮捕術を知りたい方はこちら
↓ ↓ ↓
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇著
自衛隊小平学校協力
並木書房
2020/10/5発行
https://amzn.to/3ibOkGm
エンリケ
追伸
この本で、
連続画像と動画で手に入る自衛隊警務隊の最高レベルの逮捕術
「自衛隊警務隊」の知られざる姿
「自衛隊警務隊」もその系統にある「憲兵隊」の小史
をぜひ手に入れてください