【本の紹介】『インド太平洋をめぐる国際関係: 理論研究から地域・事例研究まで』 永田 伸吾 (編著), 伊藤 隆太 (編著)
「インド太平洋」の複雑な力学を解き明かし、錯綜
する国際政治の中で形成されるそのダイナミズムを、
6人の研究者が多岐にわたるアプローチで研究した、
まさに今、読むべき成果がここにあります。
現在、米中覇権競争がインド太平洋において繰り広
げられ、米国主導の「自由で開かれたインド太平洋
(FOIP)」戦略と中国主導の一帯一路構想を巡り、国
際秩序の戦いが繰り広げられています。
第1部では、国際秩序とパワーの相克から生まれるイ
ンド太平洋戦略の未来を、深く考察します。第2部で
は、中国と日本を焦点に、言語行為、認知、情報戦・
政治戦などに注目し、理論的な観点から「インド
太平洋」を独自の切り口で考察します。第3部では、
NATOの対中戦略や、欧州諸国のインド太平洋への関
与など、具体的な事例を徹底的に分析します。
本著という「6人の研究者による総力戦の成果」は、
インド太平洋の未来を見据え、国際事情の舞台裏を
明らかにする鍵となるでしょう。ますます加速する
国際政治の波にうまく乗り、知の深みを求めるあな
たにとっては手に入れずにいられない一冊です。
『インド太平洋をめぐる国際関係: 理論研究から地
域・事例研究まで』
永田 伸吾 (編著), 伊藤 隆太 (編著)
出版社:芙蓉書房出版
発売日:2024/1/25
判型・ページ数:A5・248ページ
定価:本体2,700円+税
https://amzn.to/47LQnLf
こんにちは、エンリケです。
この本は、広範な専門的な知識を要するインド太平
洋に関する研究書で、地政学や国際政治の専門用語
が多く使われています。理論や戦略に興味を持つ読
者や学問的な探究を求める方に向いていますが、汎
用的で一般的な読者には難解な内容かもしれません。
専門的な興味や知識を持つ読者が主対象であり、一
般の書店でたくさん売れる本ではないと思います。
世界の安全保障や国際関係に対する悩みや不安を感
じてらっしゃる方が近ごろ増えていますが、あなた
もぞうではないでしょうか?
国際的に緊張が高まっていて、将来が全く見通せな
い昨今、夜も眠れないほどの悩みや不安を感じてい
る方は想像以上に多くいるのかもしれませんね。
また、軍事や国際政治に深い興味や情熱を抱いてい
るあなたは、より深い安保・国防に関する理解や洞
察を得たり、ある国際的事象に関するインテリジェ
ンス、そのために必要な「ガチの」思考枠組みを手
にしたいという欲求をお持ちかも知れません。
きょうご紹介するこの本は「インド太平洋の安全保
障」をテーマにした研究書で、以下の特徴がありま
す。
1.多面的アプローチ
本書は地政学、戦略、安全保障、国際関係論など、
多岐にわたる視点から「インド太平洋」を捉え、理
解しようとします。
2.専門家による深い分析
各章はテーマに関する各方面の専門家による緻密な
分析からなる論文で構成されており、様々な側面か
ら「インド太平洋」に焦点を当てています。
この本があなたのお役に立つだろうと思う理由は、
以下のとおりです。
1. 専門家による深い洞察
本書は著名な専門家や新進気鋭の研究者によって執
筆されており、その専門的な知識や洞察を通じて、
あなたが抱える悩みや疑問に迅速かつ効果的にアプ
ローチしてくれます。
2. 分かりやすい内容
本書は論文集ですが、複雑な国際政治や軍事情勢が
想像以上にわかりやすくつかめる内容です。思考プ
ロセスや具体的事例を通じて説明されているからで
しょう。これにより、あなたは短時間で「インド太
平洋の安全保障」をつかむことができます。もしか
したら今お持ちの悩みを解決できるかもしれません。
3.新しい視点とアプローチ:
本書は論文集という特性もあり、他の情報源では得
られない最先端のテーマや新しい視点、アプローチ
を提供しています。読み手がより広い視野で問題を
理解し、解決策を見つける手助けとなります。
それではさっそく内容を見ていきましょう。
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●目次
序 章 現象としての「インド太平洋」をどのように
捉えるか (永田 伸吾(金沢大学人間社会研究域法学
系客員研究員))
はじめに
第1節 本書の企図
第2節 本書の構成と概観
第3節 戦略研究学会編集図書としての本書の系譜
結びにかえて
◆第1部 インド太平洋の政治力学
第1章 インド太平洋戦略の地平―地理を超えて(墓田 桂
(成蹊大学国際文化学科教授))
はじめに
第1節 戦略の系譜
(1)同時代的な展開
(2)ウクライナ戦争後の国際環境の変化
第2節 制作の多層的展開ー「原則に基づく地域主
義」を目指して
(1)規範の定着
(2)経済面での連携
(3)軍事協力
第3節 新たな地平ー「インド太平洋の先に」
(1)ヨーロッパ
(2)「グローバル・サウス」
(3)鍵を握る戦略的空間ー地政学の空白地域へ
おわりに
第2章 構造的リアリズムと米中安全保障競争
(野口 和彦(群馬県立女子大学国際コミュニケーシ
ョン学部教授))
はじめに
第1節 構造的リアリズムー国際システムと国家行
動の因果理論
(1)アナーキー・安全の不足・パワー
(2)安全保障のジレンマと抑止モデル
(3)バランシング行動
第2節 「単極の瞬間」におけるアメリカのリベラ
ル覇権主義
(1)民主主義を広めるための戦争
(2)中国に対する関与政策の失敗
(3)NATO拡大という愚行
第3節 二極システムの到来とインド太平洋におけ
る米中関係
(1)ウクライナ支援と中国の封じ込めのトレ
ードオフ
(2)封じ込めとしての拒否戦略
(3)「全能の幻想」としての二重封じ込め戦略
おわりに
◆第2部 インド太平洋をめぐる理論研究
第3章 古典的リアリズムと中国の台頭(伊藤 隆太
(広島大学大学院人間社会科学研究科助教))
はじめに
第1節 ハイブリッド・バランシングー古典的リア
リズムの国政術としてのバランシング戦略
第2節 国際関係論におけるインド太平洋概念の所在
第3節 ヴィン度太平洋における中国のバランシン
グーハイブリッド・バランシングの視点から
(1)政治的バランシングー正当性の主張、秘
密工作
(2)経済的バランシングー地経学
(3)情報バランシングー認知戦、情報戦、デ
ィスインフォメーション
おわりに
第4章 インド太平洋の「地域的安全保障共同体」と
日本のアイデンティティ( 岡本 至(文京学院大学外
国語学部教授))
はじめに
第1節 問題設定:新しい地域定義は国家をどう変
えるか
(1)地域区分の恣意性
(2)言語行為としての地域定義
(3)地域と国家のアイデンティティ
(4)分析用具としての国際関係論
第2節 地域的安全保障複合体理論とFOIP
(1)地域的安全保障複合体理論について
(2)本性の分析におけるRSC理論の改変
(3)ブザン/ヴェーヴァのRSC分析における東
アジア地域
第3節 戦後日本の安全保障化と東アジアRSC
(1)ブザン/ヴェーヴァが描く日本
(2)自己安全保障化
(3)東アジア地域安全保障複合体と日本の地位
(4)「インド太平洋」における日本の自己認
識の変化
第4節 地域定義とその中身
(1)地域定義の比較
(2)「自由で開かれた」という修飾語
(3)インド太平洋はどのような地域か
(4)「自由で開かれたインド太平洋」の発話
と受容
第5節 日本は地域をどう語って来たのか
(1)自然言語処理について
(2)政府文書における地域定義の出現数
(3)『外交青書』の分析
(4)『防衛白書』の分析
(5)総理大臣国会演説の分析
(6)小括
おわりに
◆第3部 インド太平洋をめぐる地域・事例研究
第5章 NATOの対中戦略と「インド太平洋」のグロー
バル化(小田桐 確(関西外国語大学外国語学部准教
授))
はじめに
第1節 NATOの対中認識
(1)2022年戦略概念
(2)対中認識の変遷と定着
第2節 中国をめぐる同盟内政治
(1)挑戦としての中国
(2)中国をめぐる加盟国間の利害対立
第3節 中国の挑戦に対するNATOの挑戦
(1)欧州大西洋における対応
(2)域外諸国との協調
おわりに
第6章 大戦略としての「インド太平洋」概念を支え
る防衛外交―主体としての日・豪・欧の空軍種の役
割(永田 伸吾)
はじめに
(1)背景
(2)目的
第1節 防衛外交の主体としての空軍種、接受国と
しての日豪
(1)防衛外交とその主体としての空軍種
(2)インド太平洋における空軍種の防衛が行
こうと日豪の位置づけ
第2節 空軍種によるインド太平洋防衛外交の始動
(1)日英安全保障協力と共同訓練「ガーディ
アン・ノース16」
(2)フランス空軍大規模戦力投射ミッション
「ベガーズ2018」
(3)日豪準同盟と共同訓練「武士道ガーディ
アン2019」
第3節 空軍種によるインド太平洋防衛外交の常態化
(1)ドイツ空軍大規模展開ミッション「ラピ
ッド・パシフィック2022」
(2)繰り返されるフランス航空宇宙軍の大規
模戦力投射ミッション
(3)イタリア空軍のアジア展開ミッション
(4)日豪部隊間円滑化協定(RAA)と空軍機に
よる防衛外交
終 章 インド太平洋研究の多層化―地理、イシュー、
理論(伊藤 隆太)
第1節 本書の総括
第2節 本論文集のインプリケーション
第3節 今後の研究課題と展望
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いかがでしょうか?
安全保障の学術研究の現状については
「他の人文・社会科学分野と違い、
安保分野だけは雨後の筍のように才能が生まれ続け
ている。
時間が、分野発展の味方になっており、わが人文・
社会科学では唯一希望を持てる分野」
という話を複数耳にしたことがあります。
まさにその一翼を担っているであろう本書の編著者、
執筆者たち。顔ぶれを見ると納得ですね。
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【編著者略歴】
永田 伸吾(ながた・しんご)
金沢大学人間社会研究域法学系客員研究員。
1971年生まれ。金沢大学大学院社会環境科学研究科
博士後期課程修了、博士(法学)。
金沢大学博士研究員、成蹊大学アジア太平洋研究セ
ンター客員研究員等を経て現職。
戦略研究学会編集委員・書評小委員会委員長。国際
政治学、科学技術社会論などの
研究に従事。
伊藤 隆太(いとう・りゅうた)
広島大学大学院人間社会科学研究科助教、博士(法
学) 2009年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同
大学大学院法学研究科前期および後期博士課程修了。
同大学大学院研究員および助教、日本国際問題研究
所研究員を経て今に至る。戦略研究学会編集委員・
書評小委員会副委員長・大会委員、国際安全保障学
会総務委員、コンシリエンス学会学会長。政治学、
国際関係論、進化学、歴史学、哲学、社会科学方法
論など学際的研究に従事。
主な研究業績には、『進化政治学と国際政治理論―
―人間の心と戦争をめぐる新たな分析アプローチ
(芙蓉書房出版、2020年)、『進化政治学と戦争―
―自然科学と社会科学の統合に向けて(芙蓉書房出
版、2021年)『進化政治学と平和――科学と理性に
基づいた繁栄』(芙蓉書房出版、2022年)がある。
【執筆者略歴】
墓田 桂(成蹊大学国際文化学科教授)
1970年生まれ。フランス国立ナンシー第二大学より
公法学博士の学位取得。外務省勤務を経て現職。現
在、世界経済外交大学(ウズベキスタン)高等国際
研究所(IAIS)アソシエイト・フェロー、ラヴァル大
学(カナダ)インド太平洋研究講座メンバー、早稲
田大学国際平和戦略研究所客員研究員。これまでに
アテネオ・デ・マニラ大学、オックスフォード大学、
ハンガリー外務貿易研究所(IFAT)、國立清華大学
(中華民国/台湾)で客員研究員を務めたほか、法務
省難民審査参与員、成蹊大学学長補佐を歴任。国際
政治学と安全保障研究を専門とする。
著書:『インド太平洋戦略ー大国間競争の地政学』
(ブレンドン・J・キャノンとの編著)(中央公論新
社、2022年);Indo-Pacific Strategies: Navigati
ng Geopolitics at the Dawn of a New Age(co-edi
ted with Brendon J.Cannon)(Routledge,2021);
『難民問題ーイスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の
課題?』(中央公論新社、2016年)、論文:”How I
ndo-Pacific Strategies Are Entering a New Stag
e”(co-written with Brendon J.Cannon),The Natio
nal Interest,March 2023; “Taiwan as an Indo-Pa
cific Partner: Envisioning a Coalition of Shar
ed Values and Interests”, 國防安全研究員編『國
防情勢特刊』第27期(2023年5月)
野口 和彦(群馬県立女子大学国際コミュニケーショ
ン学部教授)
1965年生まれ。早稲田大学大学院アジア太平洋研究
科博士後期課程修了、博士(学術)。ブリティッシ
ュ・コロンビア大学客員准教授、東海大学教授等を
経て現職。戦略研究学会編集委員。国際関係論、安
全保障論、戦略論、戦争原因論などの研究に従事。
著書:『パワー・シフトと戦争』(東海大学出版会、
2010年)(単著)、『国際関係論(第2版)』(勁草
書房、2015年)(編著)、論文:「国際システムを
安定させるものは何か:核革命論と二極安定論の競
合」『国際政治』第203号(2021年3月、単著);
「パワー・トランジッション理論と米中関係」『国
際安全保障』第39巻第4号(2012年3月、単著);”B
ringing Realism Back In:Expanding China’s Stra
tegic Behavior in the Asia-Pacific,” Asia-Paci
fic Review, Vol.18, No.2, December 2011(単著)。
岡本 至(文京学院大学外国語学部教授)
1961年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際
研究大学院大学(SAIS)よりPh.D(International R
elations)取得。東京大学社会科学研究所研究員など
を経て現職。戦略研究学会編集委員長、理事。国際
関係論、国際政治経済などの研究に従事。
著書:『官僚不信が金融危機を生んだ』(弘文堂、
2004年)(単著)、翻訳:マイケル・マン著『論理
なき帝国』(NTT出版、2004年)、「金融ビッグバン
はなぜ失敗したのか:官僚主導改革と政治家の介入」
『社会科学研究』(2005年2月、単著);”The Fail
ure of the Japanese ‘Big Bang’ Bureaucracy-Dri
ven Reforms and Politician Intervention” The J
apanese Economy,vol.33, no. 1, Spring 2005,pp.
69-106.(単著)
小田桐 確(関西外国語大学外国語学部准教授)
1074年生まれ。上智大学大学院外国語学研究科国際
関係論専攻博士後期課程単位取得満期退学。上智大
学特別研究員、慶應義塾大学ほか非常勤講師、明治
大学兼任講師、関西外国語大学講師を経て現職。国
際政治学、安全保障論などの研究に従事。
著書;『安全保障化の国際政治ー理論と現実』(有
信堂高文社、2023年)(単編著);『米中争覇とア
ジア太平洋ー関与と封じ込めの二元論を超えて』
(有信堂高文社、2021年)(分担執筆);『戦争と
平和ブックガイドー21世紀の国際政治を考える』
(ナカニシヤ出版、2021年)(単編著);『ワーク
ブック国際関係論ー身近な視点から世界を学ぶ』
(ナカニシヤ出版、2018年)(共編著);Understa
nding International Relations Second Edition:
The World and Japan(大学教育出版、2018年)(分
担執筆)、論文:「単極体系における同盟の機能ー日
米同盟による地域安定化の論理と中国」『戦略研究』
第21号(2017年11月、単著)
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これまで長く軍事国防安保インテリジェンス分野に
おけるおすすめ本を紹介し続けて喜ばれてきていま
すが、今回も、同じような関心をお持ちのあなたに
この本を紹介できることを嬉しく思っています。
ちなみにこの種の本は、市場に出回る期間が限られ
ており、一旦消えると大変高額なプレミア価格にな
るのが常です。気になった方は、今すぐお求めくだ
さい!
『インド太平洋をめぐる国際関係: 理論研究から地
域・事例研究まで』
永田 伸吾 (編著), 伊藤 隆太 (編著)
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エンリケ
追伸
「インド太平洋の安全保障」に焦点を当てたこの本。
国際的な緊張感や将来の不透明感に直面する中、軍
事や国際政治に興味を抱く方々に、多岐にわたるア
プローチと専門家の深い分析が提供され、理解しや
すく新しい視点が紹介されています。現代の国際情
勢への深い洞察を求める方には不可欠な内容です。
わが安全保障への理解も深め、未来への展望を明る
く照らしてくれる一冊になることでしょう。
『インド太平洋をめぐる国際関係: 理論研究から地
域・事例研究まで』
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