BMD対処の実際

2019年2月6日

ミサイル防衛は時間との戦いです。コンピュータは瞬時に結果を出しますが、人間はそうはいきません。そこで、条件を定めて撃墜の権限を下級指揮官に委ねざるを得ません。BMD では特にその点が重要です。弾着点が我が国領域となれば撃墜しても良いのではないでしょうか。
迎撃ミサイルが個艦に搭載されているなら、その引き金も艦長が握っているわけで、航空総隊司令官も彼に権限を委譲せざるを得ないでしょう。そうなれば、数十秒でも対処可能です。
この権限委譲タイミングも重要です。誤解しないで頂きたいですが、平時から個艦艦長にミサイル撃墜権限があるわけではありません。
事態が切迫した段階で(やむを得ぬ、となってから)許可が出ます。これらの権限委譲ルールが「交戦規定、ROE」です。
これは状況の仮定文と実行権限付与文をコード化したもので、およそ考えられる全ての状況と対策が網羅されています。例えば、この中に
    a1「探知したミサイルの弾着点が」
    b5「本邦領域内なら」
    c8「迎撃を許可する」
とあるとき、然るべき上級権限者から「a1b5c8」という暗号が届いた時点でミサイル発射は艦長の判断に任されます。もちろん切迫した時期が過ぎれば、取り消し暗号で権限を取り上げられます。
海自と空自の連携体制ですが、悲観的評価と楽観的評価では全く異なります。細部は申し上げられませんが、自衛艦隊司令部と航空総隊司令部の間には濃密な情報の往来があります。それらを有効に機能させて防空体制の実を挙げるには訓練しかないでしょう。
幸いにも近い将来、統幕が作戦指令権を持つようになりますので、従来の海空による協定や調整と比べて格段の進歩があるでしょう。
もう一つ重要なことは、米軍です。防空には国家主権が絡むからです。
BMDの難しさは技術だけでなく、否応なく集団的自衛権の問題が絡みます。
(2003/8/25)