ロシア潜水艦事故への海自の対応に正当な評価を

2019年2月6日

今回の潜水艦救難は外国で起こりましたが、海自として初めての実動でした。
側聞するところでは、海自としてもテンヤワンヤの部分があったようですが、潜水艦救難母艦は日頃の訓練どおり第一報から2時間後には出港したそうで安心しました。文字どおり、「訓練は実戦の如く、実戦は訓練の如く」の大切さが実感されます。韓国を始め、我が国の潜水艦救難能力をアテにしている国は多いので、さぞ良い訓練になったことでしょう。(中国だって・・・でも先日の領海侵犯で頼みにくいでしょうけどね)
残念なことは一部の報道などで無駄足であったかの如く論じられていることです。
今回は首尾良く、スコーピオのカッターで絡まったワイヤを切ることで小型潜水艇が自力で浮上できましたが、これは極めてラッキーなケースだと感じます。
一般的な潜水艦の事故では浸水に伴う浮力喪失や動力喪失が大部分です。
日本では「なだしお」事故の印象から「潜水艦は戦車の如く頑丈」なイメージがありますが、実際の潜水艦は貼りボテ鉄板の外穀タンクに包まれた予備浮力の無い脆弱な代物で、水上船舶と衝突すればすぐ沈没してしまいますし、浸水すれば電力線の短絡(ショート)で動力が失われ、有害な塩素ガスの発生にみまわれる宿命です。
その様なとき、スコーピオのような無人の潜水艇や水中工作機械で出来ることは限られており、クルスク事故のときのように結局は人の手が最後の頼みの綱になります。
また、自力脱出できる条件の事故であっても、脱出時に曝される高水圧により潜水病になる危険性が極めて高いので、一刻も早く再圧タンク設備のある艦が現場に急行する必要があります。
この度のロシア太平洋艦隊司令官の我が国に対する謝辞は心からなるものであった、と思われます。(海自とロシア太平洋艦隊は今では極めて友好的な関係です)
なお、事件後の報道では、モスクワは外国への救援依頼を拒否したが同司令官が人命優先の立場から独断専行で日米英に依頼を出した、とのこと。カットされたワイヤが何に使われてる物か、人命を犠牲にしても守りたかった秘密とは何か、たいへん興味のあるところです。