海上自衛隊幹部候補生学校(16)

海上自衛隊幹部候補生学校(16)

今週は幹候の教官、3名の声をご紹介します。

航海船務課 教育部 分隊長 1等海尉
30名ほどいる分隊員の、内務面での監督をしています。いわば担任のような存在です。候補生たちの入校後の成長は著しいですよ。自分のヴィジョンを示して計画的に物事を進められるようになりましたし、それらを適切な言葉で報告もできるようになってきました。
ここでの生活は確かに厳しいけれど、実際に幹部自衛官として仕事に就いたら、そこでまた新たな厳しさに直面します。だから「学生でいられる間が華だぞ」とよく言っています。将来は、少々ストレスやプレッシャーのかかる状況下でも心が折れたり判断に迷ってパニクってしまったりせずに平常心でいられる、骨のある幹部になってもらいたいです。
第1学生隊長付 1等海尉
隊付は分隊長を補佐する役割です。分隊長ほどひとりひとりと接することはなく、学生長や係の人間を通じて教育していく機会が多いです。
指導で心がけているのは、みんな経歴も違えば考え方も違うので、一方的に自分の考えを押し付けずに相手の考えもできるだけ聞くようにすること。個々の人間に応じた指導をしないと、今の若者は納得しないと思いますから。
幹部になると、人から命じられてやるというよりも自分から仕事をしていく機会が多いので、「誰も言わないからやらない」では務まりません。自ら目標を掲げ、それに向かって能動的に動けるような幹部になってほしいです。
本部学生隊 幹事付A 2等海尉
幹事付は、服装容儀であったり室内の整理整頓であったり、生活面全般のしつけ教育を「アメなしムチのみ」で指導する役割です。
彼らが成長したなと思うのは、意外に何気ないときですね。たとえば雨が降ってきたとき、普通は傘がないと濡れるのが嫌で走ったりするでしょう。でも自衛官は本来傘をさしません。候補生たちが雨をまったく気にせず平然と歩いているようなシーンを目にしたとき、「ああ海上自衛官らしくなってきたな」と感じたりします。
幹事付は、相手が候補生ならば自分の父親のような年の人にも罵声も飛ばします。相手が真剣な分だけこっちも真剣、常に全力で向かい合っています。憎まれようがうらまれようが幹事付は「麦踏み」役ですから、強くたくましい麦に育ってくれればそれでいいんです。

次週は「米海軍士官学校アナポリスから見た江田島の教育」をご紹介します。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)4月8日配信)